㉞ミャンマー情勢(ミャンマー人の国外流出!)
前回、ミャンマーの経済状況を記載しました。
今回はミャンマー人特集になります。
桐島が、大学やセミナー等でお伝えしてきた内容の総まとめです。
ミャンマーの教育制度
まずは、ミャンマー人の教育制度の紹介です。
非常にアクセス数が多いコンテンツになり、感謝致します(*‘ω‘ *)
ミャンマー人の日本語ブーム
1年に2回(7月、12月)開催されるJLPT(日本語能力試験)という試験があります。
2022年12月のJLPTの受験者数は、以下の通りでした。全世界で約43万人が受験するなかで、1位のミャンマーは、全体の19%を占めています。
【2024年8月6日:JLPT2023年7月、12月のデータを追記しました】
2023年7月は、全世界での受験者数が約60万人で、受験者数1位は中国、2位がミャンマーでした。
2023年12月は、全世界で約66万人で、同じく1位は中国、2位はミャンマーでした。663,295
現在、ミャンマーでは空前絶後の日本語ブームが起きています。
以下の記事がこの状況をわかりやすく解説しています。
日本で働くミャンマー人のデータ
さて、日本で働いているミャンマー人はどのぐらいいるでしょうか?
厚生労働省の「外国人雇用状況」を見ると、2022年10月末時点で、日本にいる外国人労働者数は、約182万人です。
そのなかで、ミャンマー人は4.7万人になっています。内訳は、技能実習生(1.7万人)、専門分野(1.2万人)、留学生(0.7万人)となっています。
※留学生は、基本的に1週間に28時間までの労働が許されています
この人数は、23年10月時点で、確実に増加しています。
日本のミャンマー人の増加の見込み
JICAの報告書によれば、2040年にかけて外国人労働者数の占めるミャンマー人、カンボジア人の割合が増加する予定です。
ミャンマー人の労働者は、2030年に9.1万人(全体の17%)、2040年に16.5万人(17%)に達すると予想されています。
なぜ、ミャンマー人は、日本を目指すか?
ここで「なぜ、ミャンマー人は、日本を目指すのか?」という疑問が湧きます。
日本とミャンマーの歴史的繋がり、ミャンマー人女性は韓国に行くとレイプされるという噂を信じているため殆ど韓国に行かないから、欧米に行くのはハードルが高いから等、さまざまな理由があります。
そのなかで、一番大きな理由は、(2021年2月のクーデター以降の政情不安・経済低迷の影響で)ミャンマー国内に仕事がなく、大学にも行けず、チャンスがないためです。
ミャンマー国内で仕事にありつけたとしても、レストランや縫製やサービス業は最低賃金のことが大半です。
さて、ミャンマーの最低賃金はいくらでしょうか?
ミャンマーの最低賃金
ミャンマーの法定最低賃金は、2018年5月に日給4,800チャットです。
時給600チャット×8時間の想定です。2018年以降、変わっていません。
しかし、当時のレート1ドル1,300チャットでしたが、現在約3,300~3,600チャットであるため、ドルベースでは2018年時点の日給約3.7ドルから、いまで1.5ドル以下と大幅に減少して、世界銀行が定める貧困ラインの1.9ドルを下回っています。
他国と比較して、賃金の低廉さが際立ってきているため、日本を含む海外への渡航するプッシュ要因(push factor)となっています。
日本に行くためには?
日本で働く・学ぶために、在留資格が必要です。
日本には、以下のような在留資格があります。
先ほど、ミャンマー人は4.7万人。内訳は、技能実習生(1.7万人)、専門分野(1.2万人)、留学生(0.7万人)と記載しましたが、専門分野のミャンマー人は、技術・人文知識・国際業務(長いので「ぎじんこく」と呼ぶ)の在留資格で日本に来ています。
それでは、一例として、日本に学びにくるミャンマー人の道のり(プロセス)を紹介します。
以下の図の右側が出発点です。大卒の人、大学在学中の人、高卒の人は、まずはミャンマーの日本語学校で日本語を学びます。
その後、日本の日本語学校で、1~2年日本語を勉強します。
その後、大学(専門学校)に入学し、大学生(専門学校生)になって、就職します。
当然、ミャンマーの日本語学校から直接、日本の大学に行く人は多くないです。1番大きな理由は、日本の大学の奨学金は、応募時に日本に滞在してことを要件としている奨学金が多いためです。
もちろん、日本の生活に慣れるため、日本で働きながら(週28時間まで)大学の資金を準備するため、という理由もあります。
JLPT(日本語能力試験)
日本語学校での目標は、JLPT(日本語能力試験)の合格です。
日本に行くまでミャンマー国内で、N5(英検で言えば4級)→N4(3級)→N3(2級)→N2(準1級)と順番に受けていき、N3またはN2のレベルが必要です。
2021年2月のクーデター以降のミャンマーでは、日本語学習熱が過熱し過ぎて、加速学習により、1年でN3を取得する猛者も現れています。
技能実習生であれば、通常N5レベルで日本企業が採用してくれると言いますが、ミャンマーでは、過熱によるN4でも採用されるのが難しくなっていると言われます。
日本企業からすれば、ありがたい話で、他の国でN5の人材を採用するなら、ミャンマーでは簡単にN4の人材を採用できます。
日本人の英語を想像すればわかりますが、商社パーソンや外資系コンサルに勤務している方でさえ、長年、英語を勉強して英検準1級(N2)があるかないかの人が多いと思います。
いまのミャンマー人であれば、2年あればN2を取れるレベルになります。
そのぐらい、日本で働きたい、学びたいと一生懸命になっています。
日本で学ぶミャンマー人の推移
日本で学ぶミャンマー人の推移は、JASSO外国人留学生在籍状況調査結果から作成すると、以下のとおりです。
2010年以降、2018年は6,000人近くでピークでしたが、2023年には最多の記録を更新することが確定しています。
日本で高等教育を受けるミャンマー人が多くなり、その後、高度人材として日本で働いていただくことは、大変ありがたいです。
実際、日本政府も、2033年までに外国人留学生の受け入れ数を40万人とする目標を掲げているところです。
巨大な入管の壁
日本政府(岸田首相以下)は、ミャンマー人の留学生をウェルカムですが、(それと矛盾するかの如く)日本には高い壁が存在します。
トランプ前大統領が、メキシコとアメリカの国境に建造した壁は、目に見える壁ですが、日本には目に見えない壁があります。
その名は「入管の壁」です。
日本に行くためには、在資格認定証明書(COE:Certificate of Eligibilityと呼ばれます)が必要です。上記で説明した留学の在留資格です。
しかし、入管の審査は、かなり厳しく「外国人は犯罪者集団!」と言わんばかりの審査のようです。
私も、当然、犯罪者は日本に入れるべきでないという立場です。
しかし、審査の仕方としては、ささいな書類の不備で1発アウトにするというのは、どうかと思います。1度アウトになると、2度目の再申請が難しいと言われています。
日本人が、日本の区役所に申請する書類のささいな記載のミスで、住民票が取得できなかったり、結婚の籍を入れられなかったら怒り心頭です。
しかし、外国人は渡航前ですので、入管に対して文句が言えないのです。
以下の記事を引用します。
日本国内では、将来の高度人材が、入管Wallにより、事前にバッサバッサ切られていて、日本の将来的な国益を害している(政府の40万人計画の達成を困難にしている)ことは知られていません。
それは、トランプの国境の壁のように、目に見えない壁だからです。
国境の壁であれば、メキシコ側で物理的に待機している人が目に見えます。
しかし、入管にも、入管の事情があるのではないか?という大人の見方をする人もいるでしょう。
さて、入管の事情とは何なのでしょうか?
入管の事情
まず、入管は法務省の組織で、大きく1.全体を取りまとめる横串部局、2.出入国管理部、3.在留管理支援部の3つから成り立っています。
このうち、3.在留管理支援部の在留管理課が、「外国人の在留の許可に関すること、在留資格認定証明書(COE)の交付に関すること、登録支援機関の登録に関すること」の担当になります。
しかし、これはあくまでも、東京の霞が関にある入管庁の本庁の組織ですので、実際のCOE交付の事務は、地方入管で実施されています。
地方入管は、以下の通り、北の札幌から、南は福岡まであります。
例えば、東京・埼玉・千葉の日本語学校に留学したいミャンマー人の場合は、東京入管に在留資格認定証明書(COE)を申請することになります。
COEの許可については、地方入管の権限ですので、入管によって、審査の基準や厳しさがバラバラになり、交付率にかなりのばらつきが見られます。
同じ入管といえども、地方入管によって合格率が異なるのは、不思議です。
日本人に例えれば、東京で運転免許証を取得するのは難しいが、大阪なら簡単ということになります。
合格率が異なるのは、多忙で人数が少ない地方入管だと、1件あたりの審査に時間がかけられないが、東京入管は専門の人が多いため、審査が厳しくなるという内情があるようです。
もともと、法務省の入国管理局でしたが、入国管理庁になったのが2019年(令和元年)です。ここ8年間の職員の増加率は、霞が関の省庁のなかでも間違いなくNo1で、2017年の4,614人が、2023年には6,314人と37%も増加しています。
そのぐらい、入管はDrasticな変化を遂げつつあります。
このあたりの入管事情に関しては、以下の書籍に詳しいようですので、次回解説したいと思います。
日本が行うべきミャンマー人支援
最後に、日本が行うべきミャンマー人支援に関して、非常に説得力ある記述がありますので、抜粋します。
労働者、実習生、留学生が足りず、悲鳴を上げる日本と、日本で働きたい非常に多くのミャンマー人。
ニーズとシーズが一致する今が、チャンスだと思います。
次回の記事は以下です♪