前回に引き続き、神鷲商人です。
この本には、まえがきがないため、まずはあとがきに目を通します。
※私は筆者が本を執筆するにあたっての想いが一番気になるため、最初に、まえがき・あとがきを見る習性があります。
この本を書いた動機が、コンパクトにまとまっています。それは、小説になり得るドラマチックな展開が、戦後のインドネシア・日本の間に横たわっていたためです。
そして、上巻のプロローグから物語は始まります。
東京駅の八重洲口、1957年11月のある昼前に、インドネシア・スカルノ大統領の特使として、鄒梓模/チョウシンモ(作中では、趙志潭/チョウシタン)が、木下商店(作中では、岩下商店)社長の、木下茂(作中では岩下悟)を訪れました。船舶を日本から調達したいという、大統領からのお願いです。
インドネシアが船舶を必要とする切実な理由は、以下のような背景です。
この鄒梓模からの要望を受けて、木下茂社長の反応は、当然OKです。
理由の台詞が、戦後日本政府と商社の関係を表しています。
木下茂社長は、当時首相の岸信介とは、岸が満州国にいた時(満州国政府実業部次長)からの知り合いだったため、そのコネクションを利用して、船舶を賠償に繰り込ませ、1958年の夏に発表された第一次インドネシア賠償の入札結果として、10隻の賠償船舶のうち9隻を木下商店が受注したのです。
※1965年に木下商店は三井物産に吸収された
そして、プロローグの最後に、この小説の核となる問いかけがあります。
ワクワクしませんか?
我々の貴重な税金の一部が、戦後に賠償に使われたわけですが、
それは、戦争で被害を被った方々のために使われたのでしょうか?
賠償は、相手国のために役立ったのでしょうか?
はたまた、単なる日本経済のためにのみ使われたのでしょうか?
このドラマを通じて、明らかになります。
参考:本の見開きにあるインドネシアの地図
今回はイントロになりましたが、次回も、この小説の魅力をお伝えします。
See you soon.