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㊸ミャンマー情勢(やっぱり2024年でオワタ( ;∀;))

前々回の記事で、「ミャンマーは2024年に経済の限界を迎える」という趣旨の記事を書きました。現状、2024年8月1日時点で、一向に経済の好転材料が見つからない状態です。

売れば売るだけ赤字

前回紹介した通り、現在、国軍が生活用品の価格のコントロールに乗り出しています。

実際に、スーパー4社の価格決定権がある担当者4人各人が、(国軍が勝手にでっちあげた)罪に問われ、拘束されています。

結果として、例えば、大手のMarket Placeというスーパーに行ってみると、価格設定がおかしくなっています。

7月31日時点で、1ドル=5,300チャット=150円ですので、1000チャット=約30円です。

カールスバーグのビールは、2,250チャット=68円ぐらいになっています。

以前は、100円を少し下回るぐらいでした。ビールに限らず、スーパーのなかの大半の商品が安いです。例えばかっぱえびせんは2,000チャット=60円です。
タイからの輸入品なので、もっと高い価格設定が必要だと思います。

チャット安が進み過ぎているため、値上げをしたいのですが、国軍の統制のために自由に値決めができず、結果、赤字垂れ流しです。

利益を得られない価格で売り続けなければいけないのです、、、

以下は1ドルあたりのチャットレートの推移です。7月31日には1ドル=5,300チャットです。

日経新聞の記事引用

7月31日の日経新聞を引用します。
ミャンマーを支配する国軍は、戦闘能力もなければ、経済運営能力もなく、統治能力もなく、一切の能力がない様子が伝わってきます。

ミャンマー衝突激化、都市に迫る 国軍徴兵で死者も

ミャンマーで国軍と抵抗勢力の衝突が新たな局面に入った。国軍の重要都市の占拠や市民の徴兵など前例がない事態が相次ぎ、31日には2021年2月1日のクーデター時から続く非常事態宣言の半年延長が決まった。反国軍派も武力に傾倒する。避難民の急増や物価高で国の安定は一層遠のく。

「占拠した」「いや事実でない」――。25日以降、少数民族武装勢力のミャンマー民族民主同盟軍(MNDAA)と国軍が北東部シャン州ラショーの国軍管区司令部を巡る情報戦で火花を散らした。

MNDAAは中国と接する同州を本拠とし、2023年10月の反国軍蜂起を呼びかけた3勢力の中核だ。ラショーは国軍の管区司令部がある国内14都市の一つという要衝で、MNDAAはその司令部を占拠したと主張している。国軍を排除した範囲は不明だが、ラショーには別の勢力も進駐した。司令部の町で国軍が実質的に敗走するのは初めてとされる。

3勢力の一角、タアン民族解放軍(TNLA)の進攻は中部マンダレー市街に迫る。24日にルビーの産地で知られるモゴクを制圧したと発表した。戦闘は観光客に人気の王宮から車で1時間ほどのマダヤでも激しい。

ミャンマーでは3年半前の21年2月1日、国軍がクーデターで全権を掌握した。国軍系政党が大敗した前年の総選挙で大規模な不正があったと主張して、新議会の招集日だった同日に国軍が非常事態を宣言した。

軍政は憲法の解釈に基づき同宣言の延長を重ね、今回が6回目だ。31日に首都ネピドーで国防治安評議会を開き、6カ月の延長を決めた。

政変後の治安情勢を巡る最近の異変が23年10月の反国軍蜂起だった。シャン州から他の地域・勢力に連鎖し、国軍は劣勢になり各地で支配地域を縮小させた。

史上類を見ない国軍の窮地」(当局に近い識者)を目の当たりにした軍政は民間人の徴兵に乗り出す。10年に制定し休眠状態だった根拠法を発効させ、2024年3月末に第1陣を招集した。7月までに一部を前戦に送り、死者が出た。猶予していた女性の招集も検討しているとされる。

蜂起した反国軍の勢力も、民主化や和平に向け国軍と対話しようという姿勢をみせていない。抵抗勢力は地方を中心に国軍を追い詰めた実績を誇示するが、同時に国内避難民も急増した。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると320万人を超え、蜂起を境に約1.7倍に膨らんだ。

今後の焦点は軍政が25年の実施をめざすやり直し総選挙だ。憲法では非常事態宣言の解除後、半年以内に行うよう定める。国防治安評議会を取り仕切ってきたミンスエ大統領代行の健康問題により、7月22日、軍政トップのミンアウンフライン国軍総司令官が兼務することが決まった。同氏は軍政の最高意思決定機関の議長や首相も務める。

権力の集中に拍車がかかり、市場の不安は高まる。民心を買おうと軍政が公務員の特別手当を発表すると、地元通貨チャットの信用不安から米ドルや金の購入が急増する始末だ。為替相場は実勢で1ドル=約5400チャットと政変前の4分の1の最安値圏に沈み、輸入物価の上昇圧力が強まる

(中略)

今後、力ずくで総選挙を行えば、混乱がさらに広がりそうだ。

ミンアウンフライン国軍総司令官の現状

目立ちたがり屋で、自分は天才リーダーと疑わない、バカ殿司令官は、ついに、24年7月22日にミンスエ大統領代行から大統領の地位も引き継いだことで、4権を掌握しました。

いままで以上に自信を示しているため、権力乱用に歯止めがかからなくなります。

4権掌握までの道のり

2024年7月31日の緊急事態宣言延長の演説

さて、7月31日のバカ殿の演説に、非常に気持ち悪い部分があります。

全文が気になる方は、以下の8月1日のファイルを確認ください。
E-Paper - Global New Light Of Myanmar (gnlm.com.mm)

右がバカ殿です

Economic sector

In striving for a booming State economy, only when the State carries out the development of manufacturing will the State GDP improve. So, efforts are underway to develop the agriculture, industrial, and service sectors. It is impossible to increase GDP without basic manufacturing. Since its assumption, the government has experienced a severe outbreak of COVID-19 as well as downtrends in the economy. The GDP growth in 2020- 2021 plunged into -5.9 per cent. Due to making utmost efforts for the development of agriculture and livestock breeding sectors, the country could secure +2.4 per cent of GDP in the six months of 2021-22 FY, with an 8.3 per cent increase. In the 2022-23 financial year, the country won 3.4 per cent of GDP and in the 2023-24 FY, 3.5 per cent of GDP. At present, the government is pouring out its efforts to secure 3.8 per cent of GDP growth in the current 2024-25 FY. If the state economy declines, it will have other negative impacts.
→GDPの数字が全部間違っています。バカ殿の部下が誤った情報を上げていて、それを信じているので、数字がぐちゃぐちゃになっています。ほとんどのGDP成長率はマイナスで、プラスではありません!!!

So, it can be seen that some countries impose economic sanctions against Myanmar, applying more sanctions against banks not running banking services, blocking border trade in various ways and means, and encouraging ethnic armed organizations from border regions in various ways in order to seek profits and manipulate these areas. Hence, encouragements are being made for all to increase production in agriculture and livestock farms. It is necessary to support MSME businesses. Hence, the Senior General thanked all farmers from agriculture and livestock farms for their endeavors.
→外国の制裁により銀行サービスや国境貿易に被害が出ていると被害者面としています。それに対して、農業と畜産の生産量を上げることが良いという謎の結論になっています。最近、バカ殿は綿花や油やせっけんがお好きなようで、ミャンマーの農作物は競争力があると思い込んでいます。

In April, unscrupulous businesspersons threw monetary value into disorder. So, prices of gold and currency changed unprecedentedly without the ordinary process. They also blocked economic processes, caused bankruptcy, and caused monetary affairs to go into disorder. As such, verification was conducted over them under necessary disciplines and law. As it is essential to ensure firmness of currency rather than inflation, a plan is underway to ensure firmness of currency.
→非常に恐ろしい記載がこの箇所です。4月に強欲資本主義のせいで、金価格やミャンマーチャットが通常のプロセスではない変化をしたといって、ビジネスパーソンを悪者にしています。
そして、「インフレーションよりも貨幣価値の安定を確保することが必要不可欠なため、a plan(計画)が進行中である」、と言っています。以前の記事でも、インフレ退治のために、両替業者、金(きん)販売業者、コメ販売業者を捕まえまくっていると紹介しましたが、このa plan(計画)が、いままで同様の取り締まりでないとすれば、それは大ごとになります。

Many incidents happened in which unscrupulous businesspersons spread rumors about cooking oil and fuel to raise panic among the people in the country during the period when the government served its duties. Hence, the government adopted correct measures and precise policies to ease the tension of the people. With regard to rice, as a possible situation that might occur with the prices of rice being in disorder, the necessary investigation was conducted to ensure the stability of rice prices. In order to ensure convenience for people in the food supply sector, the volume of rice each family will need is being sold nationwide. Accepting the concept that politics is economy, the government sets visions to improve the living standards of the people by meeting the basic needs such as food, clothing, and shelter and to develop the whole nation.
→現在、インフレのためコメや調理油の価格が上がるので、政府が主導して配給制度を敷いています。中国の毛沢東や、ソ連のレーニンを彷彿させます。そして、政治は経済だ(politics is economy)という標語の下、政府は衣食住を準備し、生活水準を向上させるビジョンを設定する、と言っています。もう、完全に、共産主義を目指しています、、、( ゚Д゚)

ミャンマーが目指している社会のイメージ図

引用が長くなりましたが、以下のセリフには、戦々恐々とします。

インフレーションよりも貨幣価値の安定を確保することが必要不可欠なため、a plan(計画)が進行中である

●政治は経済だ(politics is economy)という標語の下、政府は衣食住を準備し、生活水準を向上させるビジョンを設定する

ミャンマーの今後の予想

クーデター以後のミャンマー政府が導入した政策は、過去にミャンマーが採用していた政策の復活です。

例えば、二重相場制の再開、ミャンマー人海外労働者からの徴税です。

しかし、まだ、ミャンマー政府が復活させていない、政策がいくつかあります。

ミャンマー政府が、外貨の確保、為替の安定、経済の安定のために、復活させそうな政策を予想してみます。

1.ミャンマー兌換券の復活

昔、ミャンマーには、FEC(Foreign Exchange Certificate)と呼ばれる兌換券がありました。ミャンマー国内でのみ使用可能な外貨で、以前の軍政が外貨不足を補うために1993年に導入し、廃止されたのは2013年7月でした。

外国人旅行者に対して、300ドルの強制両替があったこともあり、基本的にFECの両替レートは、米ドルよりも悪かったようです(ちなみに、当時は公定レートが、1ドル=5.5チャット、政府公認レートが450チャット、市場レートが800チャット)。

銀行からの外貨の引き出しも原則FECでした。

「ミャンマー経済の基礎知識」 水谷俊博より引用

現在、外国企業がミャンマーの銀行に預金しているドルは、基本的にドル現金として引き出せず、海外送金もできないため、凍結状態です。

しかし、FECが導入されたら、預金しているドルがすべてFECに転換されて、1ドル=2,100または2,900チャットで強制両替されて、価値が暴落する可能性があります。

最悪の事態ですが、バカ殿はこの時代にも慣れているため、急に復活しない可能性は無いとは言えません。

2.企業の国有化

「国有化?!」、バカらしい!、という気持ちはわかります。

しかし、最近のバカ殿の発言を聞いていると、あながち遠からずという気持ちになってしまいます。

バカ殿は、協同組合システム(cooperative system)が市場経済 (market economy)と比較して、ミャンマーの経済発展のために「最も適している」と発言しています。

これは、ソ連のソホーズ、コルホーズを見習って、国内の農作物を買い上げ、配給する政策です。

先ほどのバカ殿の発言の「政府は衣食住を準備し、生活水準を向上させるビジョンを設定する」に近い、共産主義の発想です。

一見すると、衣食住の縫製産業、農業、住宅産業を国有化するのではないかと思えます。

ミャンマーの過去の国有化の歴史を振り返ってみると、以下の通りビルマ式社会主義を目指していた時期が、国有化を開始して国有企業に依存していた時期です。

「ミャンマー経済の新しい光」尾高、三重野 P164

国有化のイメージを掴んでいただくために、以下に概要を引用します!

社会民主主義的体制(1948~1962 年):外国資産国有化、民間資本容認

英国による「搾取」への反動からアウン・サン、ウー・ヌーなどの独立指導者は「社会主義ビルマ」のイメージを持ち、「究極的に全ての土地の国有化と農業を含む重要産業全ての段階的国有化を目指す」とした。独立直後から、英国資本の下にあったインフラ、基幹産業が国有化され、1950 年代には英国資本の電力会社や映画会社、市場までもが次々と国有化されていった。

ビルマ式社会主義前期(1962~1974 年):国有化及び鎖国
ウ・ヌー政権による外国資本許容方針は、軍内部から建国時の目標であった「社会主義 建設の精神に反する」との反発を受けた。1962 年にクーデターで政権を奪取したネ・ウィン政権は「社会主義へのビルマの道(Burmese way to socialism)」を発表し、合弁会社、 銀行、商社などの外資系企業のみならず、国内の製造業、卸売業や小売業までも国有化した。さらに、外国との接触を制限する「鎖国政策」を採用し、共産主義大国であるソ連や 中国とも距離を置いた。 民間企業の国有化に伴う利潤動機の欠落と、経営に疎い軍人が国有化された企業の幹部として送り込まれたことで経済活動は低迷した。「鎖国体制」の中で輸入代替を進めるため、日本からの戦後賠償を含む必要最小限の対外援助資金を用いて国有工場が設立されたが、これらの工場は閉鎖経済の中で高コストな少量生産を行っており、また「地方の工業化」 を目的に僻地に設立されたものが多かった。設立当初こそ外国人技術者の指導で高品質の製品を生産したものの、その後の更新投資不足に伴う製品の陳腐化や外国人技術者帰国に伴う生産技術の低下で国民の評価を低下させることとなる。 但し、この時期の「国有化」が広い範囲に亘って実施されたことは事実ながら、軍人経営で行き詰まった経済活動を再び民間事業者に委ねる動きがすぐに始まったとの話が、現地調査で聞かれた。ある華僑系ビジネスマンは、「父親が経営していた工場が 1963 年に国有化されたが、軍人に経営ノウハウが無かったためほどなく閉鎖に追い込まれた。彼の父親に工場そのものが返還されることは無かったが、新規事業を立ち上げる為の政府融資が提供され、家業は再建された」と語っていた。

Microsoft Word - FR案(和文)最終稿v2-1.doc (jica.go.jp)

歴史は、繰り返す(history repeats itself)と言われますが、2021年2月以降のバカ殿の政策は、すべて、過去のミャンマーで行われた政策のrevival(復活)なので、この先、何が出てきても、おかしくないと言えます。

振り返れば

振り返れば、2022年4月3日の強制兌換制度も2024年2月10日の徴兵制の発表も内容が詰まっていない状態で、発表して社会に混乱を来たしました。

しかし、何より、軍政は思いついてから、発表するまで間髪入れないわけです。そして、なんだかんだ言っても実行します。

インフレーションよりも貨幣価値の安定を確保することが必要不可欠なため、a plan(計画)が進行中

というa plan(計画)が、大したことがない今まで通りのもので、杞憂に終わると良いですが、過去にその期待は、裏切られたことしかないため、何とも言えませんが、、、


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