ミャンマー好きの桐島です。2021年2月1日のミャンマーでのクーデターの翌日の2月2日に国連安保理緊急会合(「安保理」と略す)が開催されました。
※安保理の常任理事国=中国、フランス、ロシア、英国、米国
今後の対応を話し合うためミャンマー問題の国連特使を招いた緊急オンライン会合ですが、ミャンマー軍との関係が深い中国などが公開に反対したため非公開となりました。
議長国イギリスによると、会合は終了しましたが、各国は議論の結果を声明として発表できるか調整を続けていて、安保理が結束した対応を示せるかが焦点のようです!
私、桐島は声明は発表できないと予想します。又は、発表できたとしても「ミャンマーの混乱にあたって政治と社会の安定を求めることに合意した」という形の、玉虫色の表現で終わります。
安保理が一致できない理由
その理由は、簡単です。
ミャンマーの過去の軍政時代(1988年9月~2011年3月まで23年間続いた軍事政権の時代)の、各国の対応と同じ対応が今回も繰り返される、と予想出来るためです。歴史は繰り返します♪ 中露vs米英仏の構図になります。
以下の図のように、ミャンマーに対しては、1.「中国、インド、ロシア」が親軍政グループ、2.「アメリカ、カナダ、EU」が反軍政グループ、3.「日本ASEAN、オーストラリア」が関与グループの3つに分かれていました。
今回も全く同じ対応が起きます!!!
各グループのスタンスの違い
1の中国は、クーデターに対して、
「憲法に基づいて意見の違いを適切に処理し、政治と社会の安定を守るように希望する」とクーデターを非難していません。
ロシアは、ノーコメントです。
2のアメリカは、
「民主主義と法の支配への移行プロセスに対する直接的な攻撃だ。軍が直ちに権力を手放し、拘束した人々を釈放するよう国際社会は一致して圧力をかけるべきだ」とクーデターを厳しく非難し、制裁復活も辞さない態度です。
EUも、同様に強く非難しています。
3の日本は、
「日本政府はミャンマーの民主化プロセスを強く支持してきており、これに逆行する動きに反対する。民主的な政治体制が早期に回復されることを改めて国軍に対し強く求める」と懸念を表明しましたが、具体的な行動は起こしません。
オーストラリアも、行動を起こしていません。
国際関係は、面白いですね。既に、各国のポジションは決まっています。
両極端(extreme)の1.2のグループは、スタンスが明確なのですぐに声明を出せるのですが、一方、3のグループの日本、ASEAN、オーストラリアは何らアクションを取れないのです。
初動が遅いという批判もありますが、それは、歴史やスタンスを踏まえていない、お門違いの批判です。3のグループは、1、2の行動を見極めないと、ポジションが取りづらいのです。
ミャンマーを取り巻く、1.2.3のグループのスタンスの詳細を知りたくなった方のために、上智大学のミャンマー専門家の根本先生の「物語 ビルマの歴史」から関連部分を引用します。
根本先生の記載通り「安保理や総会レベルになると明確な姿勢を示すことはできないのが常だった」のです。
今回も、全く同じ結果になることは、安易に予想できます。
軍事政権からすれば、国際的に孤立するということは絶対にありません。
中国・インド・ロシアが味方のためです。
軍事政権が23年続いた理由
実際、軍事政権が、1988年9月~2011年3月まで23年間続いた理由は、①中国・インド・ロシアの支持を得られたこと、②1997年にミャンマーが加入したASEANの協力を得られたためです。
これにより、米国、EUによる経済制裁を乗り越えることが出来ました。
日本の今後の対応は???
さて、それでは、最後に、気になる日本の今後の対応は?ということです。
これを考えるに当たっては、日本の今までのミャンマーに対する対応の把握が必要ですね♪
前回紹介した、京都大学中西先生の本から再度引用させていただきます。
この、中西先生の記述から、今回の日本の対応は予測できます。
「アメリカによる制裁強化の余波は避けられず~(略)~日本政府としては、やむなくミャンマーと距離を置いた」という箇所が示唆的です。
今回、アメリカのバイデン政権が、日本に対して、何をどのぐらい求めてくるか次第、というのが、キーポイントです。
日本の対ミャンマー政策にしても、日アメリカ関係がどれだけ重要か、わかると思います。
これは、もちろん日本だけでなく、ASEANやオーストラリアも3のグループとして一緒の立場です。
今後は、日本政府としては、アメリカの出方を注視していき、対ミャンマー政策を決定していく、という大まかな見方を理解いただけたらと思います。
See you soon.