視覚障害者情報提供施設がお送りする読書会『よむ・きく・はなす Vol.4』開催レポート
『よむ・きく・はなす』は、本を通して視覚障害者と晴眼者が出会う機会を創ることを目的にはじめた読書会です。本のこと、視覚障害のこと、なんでもいいので、会っておしゃべりして、お互いが幾分か身近になって貰えたら嬉しいです。
(Vol.1開催レポートに開催に至った背景を詳しく載せています。
URLは https://note.com/lurie1969/n/nd2e0d300ca59
拙い文章ですが、ご興味ある方はご覧ください)
さて。
視覚障害者情報提供施設がお送りする読書会『よむ・きく・はなす vol.4』。
2022年3月26日(土)10:00~12:00、名古屋ライトハウス情報文化センター2階会議室にて開催いたしました。
課題作は「もう革命しかないもんね」森元斎著 晶文社刊。
参加条件は、全12章中1章以上を読み終えていること。
ご参加いただいた視覚障害者4名、晴眼者7名のみなさまに、わたしたちスタッフ3名が加わり、二つのテーブルに分かれました。
「『よむ・きく・はなす』って、バラバラな世代が集まって話せる稀有な読書会なんですよね」とおっしゃっていただいた方のいらっしゃったテーブルでは、開始早々第一声が「作者、ふざけんな!」。
波乱(?)の幕開け『よむ・きく・はなす vol.4』(笑)。
その第一声の方曰く、「ワタシらが若い頃は、畑仕事だってなんだって、み~んなやっていたこと。いまは学者さんがこうやって書いて本になるんだねぇ・・。それにしてもふざけすぎだね、この作者は!(笑)」から「昔はねぇ・・」とその方が生きてこられた時間、時代へ話は広がり、話を聴いて比べて、訊いて話して、また聴いてといった具合に対話は進んでいました。
※ ちなみにご参加いただいている方々の年齢層は、30代から80代までと幅広く、男女比は半々くらいです。
もちろん、内容に寄せての対話も進みます。
「料理の章で構造主義の話が出てくるが、この本のつくり自体も構造主義ですね」といった編集面への感想が出たり、全体を通して語られる森さんの生き方への憧れから、現代の生きにくさの話、資本主義の悪影響やこれからの未来への不安などへと広がりをみせました。
また、「コミューン」というワードから、今様の組織の話へ繋がっていく場面も。
「コミューンも組織の一形態と考えると、どうしてもルールは生まれてしまうし、それを良しとしない人(ハグレル人)も出てくる。ハグレタ人たちが、それを壊す。途端、次の組織→新たなルール→ハグレル人現る→壊す…という具合にループしてしまうのではないか。革命とはそれを続けることにあるのか? だとしたら、革命が目的? それをアナキストとするなら、ついていける人は限られてしまうのでは。」
「新しい人が集団に入ると、人間関係やムードなどを含む従来のルールは崩れる。例えば、健常者の中に障害者が入ると、最初のうちは正体がわからず入って来られた側には抵抗感があり、入っていった側は違和感を持つ。でも時間を経ることによって、お互い気遣うことはないなとわかる。自身もその場に居心地の良さを感じるようになる。つまり、形ができてしまえば、それを守るためにルール(=居心地の良さも含む)ができる。ルールはあるべきだが、新しいものが取り入れにくくなってしまう。本書でも体制への抵抗、というか理不尽への抵抗を書かれているが、森さんが革命を起こしていくのは、形骸化したルールや体制側、というか理不尽な事象すべてに対してなのだろうか。」
流れの中で、当事者の方のこんな思いも。「思うところあって、地元の視覚障害者団体との関りはあえて避けている。僕は僕の意見を言っているのであって、視覚障害者の意見というわけではない。まして、視覚障害者だからといって視覚障害者のことを理解しているわけでもないのではないでしょうか。」
また、本書には、ある世代、ある文化に親しんできた方には伝わる、わかる表現がちりばめられていますが、そこにニヤリとしたという方、まったく分からないことだらけで辞典やインターネットで調べながら読み進めたという方、いちいちそこで引っかかってしまったといった方など、それひとつ取っても、本当にさまざまな感想が述べられます。一方、注釈を付けずに書かれているところは遊び心だし、大事なところはきちんと説明、解説されているところに、コミューン的なものを感じるといった意見も。
今回ご参加のみなさんは、それぞれ少しづつ「森元斎さんとは、どんな方なのか???」と若干の困惑とともにあったと思うのですが、そこにつどつど立ち返るようにして進んでいくように感じられる会でした。
もちろん、「アナキスト」って?や「コミューン」って?なども話には上がるのですが、この本から醸し出される「森元斎」というパーソナリティに惹かれていたというか・・。例えば、旅する際に、旅行代を工面する話から、森さんの人望の厚さが窺えるといった意見や、周囲の人たちに助けられるからこそ自由にできる、森さんの「パートナー」もお姉さん的な視点で寄り添うのではないかとの意見など、いろいろと話されていました。
たった一冊の本ではありますが、一人の人のことですら、読んだ側もそれぞれに違ったいろいろな感じ方をされていたというところに、この日、この場所の森さんは立ち現れていたのかもしれません。結局、私たちは煙に巻かれていくという、そんな時間だったように思います。
ご参加いただいたみなさまにも、なにかしら面白いと思っていただけたところがあったら主催者として幸甚です。
「一人で本を読んでいても楽しいし、ネットでの書き込みなどを楽しく読んだりもしているが、読書会のいいところは対面でいろんな意見を吸収することが出来たり、思わぬ方向に進んだりの醍醐味だと思う。今日はそれを充分味わえた。また次回の参加を楽しみしたい。」
・・・そんなコメントを残していただけたので、あまり心配はしないように致します。
ご参加いただいたみなさま、開催への案内等ご協力いただいたみなさま、今回も誠にありがとうございました。
次回は2022年9月11日(日)、名古屋ライトハウス情報文化センター集会室にて開催いたします。
課題作は「ボッティチェリ」バリー・ユアグロー著、柴田元幸訳、ignition gallery刊 です。
またお会い致しましょう!
SPECIAL THANKS to
on reading(東山公園)、喫茶アミーゴ(大須)、港まちづくり協議会ポットラックビル(築地口)、読書喫茶リチル(今池)、金山ブラジルコーヒー(金山)、TOUTEN BOOKSTORE(金山)、名古屋市公共図書館全館、愛知県図書館、名古屋市 (順不同)
(Y.N)
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