長田弘『記憶のつくり方』

晶文社。長田さんの文章は、ひとつひとつが短いのに、いつも不思議な温もりを持っている。多くは語るまい。「日々に流されるもののかなたでなく、日々にとどまるもののうえに、自分の時間としての人生というものの秘密はさりげなく顕われると思う。…(中略)…書くとは言葉の器をつくるということだ。その言葉の器にわたしがとどめたいとねがうのは、他の人々が自分の時間のうえにのこしてくれた、青い<無名>、青い<沈黙>だ。」という一文が何よりも雄弁に物語っているように思われる。

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