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2016夏・豊﨑由美さんが文庫を買う! 週刊読書人文庫企画//本紙に載らない本棚トーーーク♪ ④

 週刊読書人7月29日号掲載の「文庫を買う」企画から、本紙には掲載しない豊﨑由美さんの裏トーク(本棚前トーク)をお届け。豊﨑さん選25冊の読者プレゼント、詳細は本紙で!(編集部)
  (先にその①を読む方はこちら)(その②はこちらその③はこちら

 「『軍師の生きざま』――隆慶一郎先生には生前、かわいがっていただきました。貧乏な編プロに勤めていたとき、ときどきご飯をごちそうになって。あ、枡野浩一さんの本がある。映画がテーマですね。実業之日本社文庫は、織田作と枡野さんが並んでいるとは、何だか不思議な気持になるなぁ」

 「文春文庫といえばキングですね、『シャイニング』。ルメートル『その女アレックス』も話題になりました。トマス・H・クックはすごい作品を書きます、『緋色の記憶』を皆さん読んでいるでしょうか。向田邦子も、このまま生かしていてほしいですね。ティム・オブライエン『本当の戦争の話をしよう』は、ベトナム戦争を描いた名作。『心臓を貫かれて』は、連続殺人犯の兄弟の弟の方が書いている。これも傑作です。文春もいい文庫が揃っていますね。町山智浩さんと柳下毅一郎さんの『映画欠席裁判』、このユニットは面白い。私が渾身の解説を書いている、松尾スズキさんの本もありました。これは松尾さんの小説の中で一番です。直木賞とった桜庭一樹さんの『私の男』も大傑作。桐野夏生『白蛇教異端審問』は恐ろしいエッセイですよ。このエッセイで書評家が一人消えた、その顚末です。川上弘美さんの『真鶴』もいい。朝倉かすみさんの『夏目家順路』もいい小説。
 でもやはり松尾さんを応援しようかな」

「日本ホラー小説大賞は、貴志祐介の『黒い家』に本当に驚かされた。ツヴァイクが残っているのがすごいですね。小説書いて、戯曲書いて、伝記書いての知性の人。角川はエンタメを選びましょうか。曽根圭介『鼻』は、ホラー文庫ですが、すばらしい文学です。平山夢明さんもいい。飴村行の「粘膜」シリーズも、本当に気持ち悪くていい。
 という中で、迷いますが、ホラー文庫角川の名物の一つだから、ホラー小説大賞史上もっともかわいいホラーを選ぼうと思います」

 「小学館文庫、藤谷治さんの『船に乗れ!』はいいですよ。合奏をテーマにした、青春音楽小説。若い人におすすめ。藤谷さんもチェリスト目指していた人です。穂村弘さんの『世界音痴』、枡野浩一『ドラえもん短歌』もある。クレイジーケンバンドの横山さんの本とか、漫画家の山上たつひこさんとか、多種多様ですね。あ、縁のある本をみつけました。ツイッターの応援ツイートから、復刊に至った名作です」

 「酉島伝法さんが創元推理文庫になっているから、応援したいなぁ。ダイアナ・ウィン・ジョーンズ『九年目の魔法』はとてもいい小説。マーヴィン・ピーク「ゴーメンガースト」シリーズもすごい、訳者の浅羽莢子さんはとてもいい翻訳家でしたが、まだお若いのに亡くなられて残念です。
 現代を舞台にしたダークファンタジーといえば、どうしてもこの人を伝えねばなりません。『月の骨』や、もう読めなくなっているかもしれないけれど、『犬博物館の外で』などの、あの作家です」

 「ハルキ文庫には、群ようこさんのエッセイがそろってますね。私が三下のライターの頃、群さんは売れっ子で、憧れていました。北方『三国志』、『紙の月』も映画で話題になりました。ハルキ文庫には時代小説が結構揃っていますね。山本周五郎とか。あとは詩集のシリーズ。『まど・みちお詩集』『長田弘詩集」、長田さんは本に纏わることもたくさん書いて、その文章が好きでした。
 それから、小松左京さんの作品が結構ある。実は、小松左京をあまり読んでないんです。読まずに来てしまった贖罪の気持ちも込めて、小松左京さんの作品を選びます」

 
「本当に本屋は、いられるなら一日中いたいくらい楽しい場所ですよね」

(本棚前トークおわり・本編は、週刊読書人7月29日号へ)


 豊﨑さんが選んだ25冊は、本紙7月29日号をご覧ください。本紙予約も受付中。25冊をお1人にプレゼントする企画も、本紙をご覧の上、どしどしご応募ください。(編集部)

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