飯吉光夫 編・訳『パウル・ツェラン詩文集』
白水社。パウル・ツェランは両親をアウシュビッツで失い、自身も強制労働を経験した詩人。その詩は抽象的だが、闇から光を放つような力に溢れている。収容所の生活の中にあっても詩を書き続けパウル・ツェランが、シベリア抑留にあっても絵を描き続けた画家である香月泰男と重なって見える。翻訳は「全詩集」以外なかなか手に入りづらかったが、このセレクションによってツェランの詩への距離が随分と近くなったのではないだろうか。ゲオルグ・ビューヒーナー賞受賞講演「子午線」をはじめ、ツェランによる詩論も収録されており、とても充実した一冊だ。
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