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2016夏・豊﨑由美さんが文庫を買う! 週刊読書人文庫企画//本紙に載らない本棚トーーーク♪ ②

 週刊読書人7月29日号掲載の「文庫を買う」企画から、本紙には掲載しない豊﨑由美さんの裏トーク(本棚前トーク)をお届け。豊﨑さん選25冊の読者プレゼント、詳細は本紙で!(編集部) (先にその①を読む方はこちら

 「講談社文芸文庫は、選び抜かれた本ばかりだから、迷うよね。宇野浩二の「蔵の中」がある! 宇野浩二は、私は『屋根裏の法学者』が一番好きです。蓮實重彦『凡庸な芸術家の肖像』は読んでないのですが、面白そうですね。私が文芸文庫で好きなのは『日本文壇史』。文芸ゴシップだから本当に面白いです。『「現代の文学」月報集』も『『少年倶楽部』短篇選』も気になりますね。
 でも、関東大震災の後、人気作家たちが東京のあちこちをルポした、この本が素晴らしいので、お薦めしたいと思います」

 「講談社は、エンターテインメント作品も充実しているからもう一冊。パトリシア・コーンウェル、一冊目の『検屍官』は面白かったですね。高田大介さんの『図書館の魔女』は、世界の作り方に驚かされました。NHKの『精霊の守り人』の枠で、この作品もドラマ化したらいいと思う。
 しかしここでは、サリンジャーをリスペクトしたと思われるあの小説、中高生に読んで欲しいあの本を選ぶことにします」

 「サブカルオタクだった私にとっては、種村季弘さんと澁澤さんが智の導師(グル)で、この本も紹介されていて、読みたい読みたいと思い続けてきたんです。初めは白水社から1978年に出ているのですが、買いたいと思った頃には絶版で、河出文庫のこの復刊は本当に嬉しかった」

 「河出文庫はいい作品をたくさん出してくれていますよね。最近もハイスミスの『キャロル』を訳してくれたし、「奇想コレクション」シリーズも文庫にしてくれている。マンシェット『眠りなき狙撃者』は、いつ復刊したの!! 大森さんの「NOVA」シリーズ10巻も、素晴しい仕事。金井美恵子先生の『柔らかい土をふんで、』がありますね。現代に生きる日本の作家の中で、尊敬しているお一人です。一方で、北野勇作『かめくん』も応援したい。とってもかわいいんだよねぇ。柴崎友香さんの『寝ても覚めても』も傑作ですよね。結末は、皆が驚くヒロインの気持ち悪さ(笑)。
 ラファティもいい……。ソローキンも文庫にしてくれているし、河出の海外ものは本当にありがたいです。
 あぁ、でもミルハウザーのこの復刊は、これまで買い逃してきた人は、絶対に買わなければいけない本なのです」

 「平凡社ライブラリーの品ぞろえもいいんですよね。意外性があるのは、『ゲイ短編小説集』『レズビアン短編小説集』。買ったけどまだ読んでないのが、ホッケの『文学におけるマニエリスム』。買い損ねていて、読みたいけど古本は高いなと思っていたら、復刊してくれた。急ぎ購入したのですが、まだ読んでない(笑)。これは文芸の批評をやっている人は読まなければいけない、と言われている本なんですよ。
 あっこの本も買ってまだ読んでいない。この作者は本物の天才です。これを選ぼうと思います」

 「集英社文庫は夢があるんですよ。社内規定で決まった部数を超えると、そこからの増刷に関して、文庫解説にも印税をくれるんです。宮部みゆきさんの『RPG』は誰が解説するのだろう、と注目していましたが、清水義則さんでした。東野圭吾『白夜行』は68刷りですが、解説は、馳星周さん。こういう作品の解説枠は、ぜひ貧乏な書評家にください(笑)。
 集英社はエンターテイメント的な海外小説を、直接文庫化してくれています。ギュンター・グラス『ブリキの太鼓』、スティーブン・キング『呪われた街』も、クンデラも生かされている。それから「ポケット・マスター・ピース」シリーズ。世界文学を作家ごとに、新訳・名訳とりまぜて、一冊にまとめてくれている。ポー、カフカ、スティーヴンソン……ポケットに入らないくらい厚い!
 悩みますが……名作短篇「子犬たち」をぜひ読んで欲しいので、このアンソロジーにします」その③へ

 本編、「豊﨑由美さんが文庫を買う」は、週刊読書人7月29日号です!
豊﨑由美セレクトの文庫25冊(2万5千円相当)の詳細も本紙で!



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