【書評】『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』

2018年10月31日 20:35

なかなかインパクトのあるタイトルですが、まさにそのまま、出会い系サイトで知り合った人に本をすすめまくった実体験に基づいた実録私小説です。

「出会い系サイトで」というのも大いに気になるところですが、私がいちばん気になったのは「その人に合いそうな」というところ。
よく知らない人のための「合いそうな本」ってどうやって考えるんだろう……と、手に取りました。

自分の現状を変えたくて

夫と暮らした家を出て、仕事にも行き詰まりを感じていた菜々子さん。

狭い人生……。
もっと知らない世界を知りたい。
広い世界に出て、新しい自分になって、元気になりたい。

マイナスの生活のなかで心に浮かんだのはそんなこと。
そこで彼女は、ふと目に留まった「知らない人と30分だけ会って話してみる」という出会い系サイト「X」に登録します。

印象に残るようにと考えてプロフィール欄に書いたのは、「今のあなたにぴったりな本を一冊選んでおすすめさせていただきます」というコメント。

こうして菜々子さんの修行の旅が始まったのです。

「どこかへ行く途中」の人の集まり

出会ったのは、エロ目的の男性、手品や自作のポエムを披露する人、突飛な嘘をつく人などさまざま。
それでも、回を重ねていくうちに、素敵な出会いが増えていきます。

Xのなかでのおすすめの人を教えられたり、Xの外での集まりに誘われたり。
交友関係がどんどん広がっていき、心から元気になったと感じられるようになった菜々子さん。

でも、それは非日常の世界でのことでしかなくて。
夫婦関係やこの先の仕事のことなど、抱えている問題から目を背けている事実が心に重くのしかかるのです。

人生が変わるのは、非日常の世界での経験をもとに、普段の生活のなかでこれまでとは違う行動を起こしたときなんだよね。
これは最近、私自身が肝に銘じていること。

心に響いたのはこの2点

ひとつめは、30分という短い時間でいかにコミュニケーションをとるかというところ。
良いコミュニケーションは、どちらか一方の努力で成り立つものではない。
でも、相手が心を開いて話してくれないからといって、匙を投げてしまったら、その時間を無駄に過ごすのは自分自身。
こういう考えに共感だし、相手の時間を無駄にしないコミュニケーションを心掛けたいと改めて思いました。

ふたつめは、自分の好きなもの＆好きなことを極めて、それをツールとして使って人と交流するところ。
私の好きなことは、やっぱり読書。そして、読んだ本について人と話すこと。
というわけで、読書部のみんなともっともっと本の話をしたいと思って、オフ会の幹事に立候補してみました。
1人1冊おすすめの本を紹介する会にする予定です。

現状を変えたいと思いつつ、一歩を踏み出せないでいる人や、一歩踏み出してみたものの、そこで足踏みしている人におすすめの1冊です。