【書評】ランチのアッコちゃん
直木賞候補に何度も名前が入ったことのある柚木麻子さんの小説。
派遣OLが、ふとした事からいかつい(ように見える)女性上司と一週間ランチを交換することになるお話。
主人公は毎日お弁当持参で、上司は外へ食べに行くスタイル。
なので主人公は毎朝上司にお弁当を渡し、上司からは今日はここに行けというメモとお金を渡される。
月曜日から金曜日までのお昼休みが順番に語られていく中で、運気下降気味だった主人公の気持ちがだんだん上向いていく。
とっても良いお話であるとともに、私にとってはとても懐かしい部分がたくさんあった。
私は1979年生まれなのだが、作者は1981年生まれでほぼ同世代。
派遣という働き方が新鮮だった世代だ。
私も数年だけ、会計士事務所で派遣社員として働いたことがある。
残業なし、余計な人間関係なし、手取りは良いし、ボーナスなんて正社員でも貰えるか判らなくなりつつある時代だったので、あまり迷いもなく派遣生活に飛び込んだ。
でもやはり3ヶ月もいると、正社員と派遣社員との扱いの差も感じたりして、一長一短ではあった。
この本は短編集で、『夜食のアッコちゃん』『夜の大捜査先生』『ゆとりのビアガーデン』の3話が続く。
『夜食のアッコちゃん』では、『ランチのアッコちゃん』のその後が描かれており、同じように月曜日から金曜日までを過ごしながら、主人公は正社員VS派遣社員の問題解決に向かっていく。
『夜の大捜査先生』は、ギャル時代を経て今は契約社員として働く主人公が、かつて高校でお世話になった先生と偶然に再会し、一緒に不良ギャルを追いかけて夜の渋谷を走り回る。
これも世代ならではの思い出が甦る。
ギャルの聖地だった渋谷。
ハルタのローファー。
渋谷も子供の街になっちまったな、と感じるのは、私が歳を取ったからなのか。
今も渋谷は、若者にとっては輝きを放つ街なのだろうか。
そんな事を考えながら読んだ。
最後の『ゆとりのビアガーデン』だけ主人公が男性であるが、年齢は私と同じくらいで、新卒の社員との付き合い方が判らず、苛ついたりする。
半ば蔑みのニュアンスを込めて、下の世代をゆとりと呼んだ時期があったものだ。
全話が気持ちよく終わるので、気軽にトライしてほしい。
もしあなたが同世代であるなら、過ぎ去った時代を愛しく振り返れること請け合いだ。
どんな過去でも振り返るときに穏やかな気持ちになれる時は来るのだと思う。
それには、この主人公たちのように今を誠実に見つめる事がキーになるのではないだろうか。
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