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【FF10】シンはなぜザナルカンドに来たのか?隠された「ジェクトとティーダの物語」~エンディングの向こう側【ストーリー解説考察】

本日はFF10におけるジェクトとティーダの物語に焦点をあてて、本編で語られる部分と語られない部分をつなぎ合わせていたら、ひとすじの希望の物語にたどりつきました。(FF10のネタバレを含みます。)
まずはスピラの成り立ちから、後半のジェクトとシンの動きの理由に密接に関わってきます。

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スピラと呼ばれる世界、幻光虫と呼ばれる「生命の源」と、それが水に溶けて固まった「スフィア」によって、映像の記録や魔法と技の習得ができる世界

FF10ユウナ

そこでは、「機械文明ベベル」対「召喚士文明ザナルカンド」で戦争が行われていました。
ザナルカンドの統治者エボンは召喚士としての腕も一流、そして、重力魔法の扱いに長ける人物、ザナルカンドが劣勢に立たされて、いよいよ戦争に負けようとするとき、エボンは滅亡していくザナルカンドを憂い、滅びゆくザナルカンドの生き残った国民をすべて永久に生きて、ずっとザナルカンドの夢を見るだけ、の祈り子=魂だけの存在に変えます。
そしてその夢を、幻光虫を大量に集めて召喚術で具現化させ「夢のザナルカンド」を作り上げました。
そして「ジュ=パゴダ」と言う石碑に魔法の印を刻み、エボン自身が石碑に吸い込まれ封印されました。

エボンが石碑に刻んだ魔法
それは幻光虫を大量に集めて鎧である「シン」を作り維持すること
シンは対戦国であるベベルを破壊しつくしました。

FF10シン2

そんな中、召喚士エボンの娘ユウナレスカはシンを倒すための教えをベベルに広め始めました。
それは、究極召喚によってシンは一時的に倒されて究極召喚に乗り移りすぐ復活すること、なんの解決にもならないが民衆の気休めの希望にはなること、人間たちはこの気休めの希望システムの維持に努めて、エボン教を作りました。
ユウナレスカはこのシステムを広めた後に、夫ゼイオンを祈り子に変えて究極召喚して2人で消滅、ユウナレスカは魂だけ現世に残ります。
そして究極召喚を召喚士に与え続ける存在となります。

ジェクトの旅のプロローグ

エボンが召喚した「夢のザナルカンド」、そこは祈り子の夢の中とはいえ、人々の生命活動が営まれていました。
生まれは想像、夢だったかもしれないですが、ちゃんと個としての人格を持って自立して動く人そのものでした。

FF10ブリッツボールスタジアム

そこで生まれたジェクトは、ブリッツボールの名選手として名をはせて妻と一人息子に恵まれました。
その息子の名は「ティーダ」、ジェクトは息子の誕生を喜び、そして愛しました。
しかし、ジェクトは豪快な性格で、単純で正義感にあふれ、社交性も持ち合わせていましたが、唯一、息子に向ける愛情表現を誤り続けていました。
いっぱしの子を育てようとする、その強い言動や反発による成長をねらう言動はことごとく裏目に出て、幼いティーダには、しつけではなくただただ嫌な思い出として焼き付いていました。
それでいて妻には愛され、息子ティーダは母すら取られた気になり、辛さから泣き虫となり父ジェクトのことを嫌いになっていました。

ただ愛する息子をいっぱしの人間にしたいだけだったジェクト。

大酒飲みで試合があろうとも豪快に酒を飲む一面を持ち合わせていました。が、いつでもやめてやるとうそぶき、さらに息子の反感をかいます。
ジェクトはブリッツボールの名選手でありながら、練習をしているところを見られたくない、カッコつけの一面がありました。
スランプでうまくいかず練習不足だと言われても、どんなに大衆に影で悪く言われても、おもてでは練習していないふりをして酒を飲み、明日の好プレーを目指し裏では地道に練習を続けているのでした。
海に遠泳して沖で練習しているときに「シン」は現れました。
遭遇したシンの力で、ジェクトはスピラへ渡ることとなります。

ジェクトとブラスカ、アーロンの旅路

後にシンを倒してナギ説をつくるユウナの父ブラスカ、彼は僧官でした。が、差別されるアルベド族の女性と結婚したことで信用を落としていました。
しかし、愛を取って結婚を押し切り、ユウナと言う子宝に恵まれ、幸せに過ごしていました。
でもシンに襲われ妻を失い、シンを倒さんと召喚士となった彼は、同じく教団からはじかれていたはぐれものアーロンを連れて旅立ちます。
そんな中、ブラスカはある謎の噂を耳にします。
約1000年前に滅んだザナルカンドから来たと言い張る謎の男の噂を、スピラに飛ばされたジェクトは、スピラのことを知らないありのままの状態で発言を行ったために投獄されていました。

FF10ジェクトブラスカアーロン

ブラスカははぐれものながら腕が立ちそうなジェクトをも仲間に引き入れ旅に出ます。
最初はいがみ合っていたジェクトとアーロンも旅のうちに仲が深まっていきます。
長く同じ時間を過ごした者しかわからない絆が3人の中で生まれていました。
そして、ジェクトはスピラの世界を知り、シンを知り、究極召喚をすると召喚士は命を落とすことを知ります。
そして召喚士ブラスカの命を賭けた覚悟を知ります。
酒を飲んで酔って移動用の動物シパーフに切りかかり、旅の仲間に迷惑をかけて名誉を落とすようなことをしました。

ジェクトは反省から大好きな酒を断ちます。

スピラに来てからのジェクトは常に家族、息子のことを考えていました。
酒を断った理由は異国で恥ずべき名声を得て息子を悲しませないようにするためでした。
旅の記録をいちいち録画しておくのも息子が元気な自分の姿を見てくれることを願い

FF10ジェクト4

そして、ジェクトは息子との再会を心から願っていました。

ジェクトとブラスカの信じたもの

ザナルカンド遺跡までたどり着いたジェクト、ブラスカ、アーロンの3人。
ユウナレスカから聞かされるのは

召喚士とガード1人ずつが犠牲となること
そのガードが究極召喚獣となって召喚士から呼び出されること
その究極召喚獣がシンを倒すということ

シンが復活することはジェクトもブラスカもアーロンもわかっていました。アーロンはここまできて無駄に犠牲になってほしくない、帰りましょうと叫びます。
ジェクトとブラスカは帰らずに前に進みます。
ジェクトは覚悟を決めていました。
もう帰れないならスピラでブラスカの手伝いで命を賭ける覚悟

FF10ジェクト6

ジェクトとブラスカは知りませんでした。

究極召喚はユウナレスカが作り出したかりそめの希望であるということを
究極召喚獣となったジェクトにシンの核エボン=ジュが乗り移って新たなシンになることを
そして2人はエボンが教える人の罪がゆるされる奇跡が起こることに賭けるのでした。
そして2人は犠牲になりました。
アーロン、そしてシンになったジェクトは気付きました。
これはかりそめの希望であってなんの解決にもならないことに、アーロンは無駄死にした2人のかたきを討つためにユウナレスカに挑み、そのまま命を落とします。
エボンの教えと究極召喚による2段がまえは、正義感のある賢い召喚士やガードでも見破れませんでした。
もうスピラに生きる者、異界の者、全員がこのシンの作り出す気休めの希望の螺旋にのまれることに、意識的にも無意識的にも諦めていました。

そう、ただ一人を除いては…

FF10ジェクト7

シンとなったジェクトの戦い

シンとなったジェクトは自分ができる範囲を確認していました。
シンの本能、発展した文明を壊す、体から剥がれたシンのコケラを回収する以外の時間は、行き先だけは自由に選べました。
ジェクトは、未練が強すぎて魂が具現化したアーロンを見つけ、夢のザナルカンドまで運びます。
それはジェクトの家族の面倒を見るというジェクトと、アーロンの約束のためでした。
アーロンはシンにジェクトの意思があることを確信しました。
アーロンはこの時、息子ティーダと母親を一生見守ると決めていました。
しかし、ジェクトはこの時考えていました。
10年後育った息子にシンとなった自分を倒しにきて欲しいと、そして自分の中に乗り移った「何か」まで一緒に倒してほしい、そうしたら、全てが終わる、ジェクトはアーロンと息子を信じていました。
10年経ったら迎えに行くと、大好きだったブリッツボールの勝利の歌、スピラでは祈りの歌を癒しにして、本能で破壊を繰り返すシンに耐えながら。

~10年後~

ジェクトは夢のザナルカンドに行きました。
文明を壊すというシンの本能によって、ジェクトの意思に関係なくシンはザナルカンドを壊します。

アーロンは全てを悟りました。
迎えにきたのだと。

アーロンは人生をよく物語に例えます。

FF10アーロン4

会いたかった息子に会えず、
希望と信じたものに裏切られて、
仲間の命は全員消えて、
シンとなって破壊を繰り返すだけになり、
やがてその意識も消える、
何もしなければ、それがジェクトの物語。

だからアーロンは育ったジェクトの息子
ティーダを連れてスピラに行く時に言うのです。

ジェクトの物語とは違うと、
悲しすぎる物語とは違う、
ほかの誰でもない、
これはお前の物語だ、と。

エンディングの向こうに

ティーダの歩む旅路は父ジェクトの歩んだ道をなぞるようでした。
ティーダはスピラの世界を知り、シンを知り、究極召喚をすると召喚士は命を落とすことを知ります。
そして召喚士ユウナの命を賭けた覚悟を知ります。
ティーダは、アーロンからシンは父ジェクトだと聞きます。
戸惑いの中、なぜ嫌いになったのか、なぜ自分と父の思い出は嫌なものばかりなのか、夢に出てくるときでさえ嫌味に見える理由を考えていました。
異国での父の活躍を聞かされたティーダは自分の気持ちを見つめなおしていました。

FF10ティーダ4

母親が父ジェクトを優先していたように見えたから嫌いになっていったこと
急にいなくなって母が精神的に衰弱して命を落とし、嫌いな主観が増幅されていたこと
家族を置いていなくなったのではなく運悪く偶然スピラに導かれたこと
父もまたスピラで過酷な旅をしていたこと
本当はティーダのことを気にかけて大切に思っていたこと

ティーダとユウナたちはジェクトと意思を継いだアーロンの導きで、ユウナレスカと対峙して、気休めの希望で成り立つスピラの仕組みをあばき出します。
ティーダとユウナたちは多くの人との出会いやティーダの素朴な疑問、アーロンの言葉を通して全てを見破りました。
だから、ユウナレスカの究極召喚を拒み、向かってきたユウナレスカも迎え撃ちます。
ここまで自分の正義を信じて旅をしてきた召喚士たちとジェクト、ブラスカの思いを継ぐために…。

最後の戦い ジェクトとティーダ

ユウナレスカを倒したティーダとユウナたちは、シンの中でジェクトと再会します。

FF10ジェクト5

シンとなった時願った通り、息子は過酷な旅を経て、父のもとへ、父を倒しにやってきました。
ジェクトとブラスカとの約束を果たしたアーロン、ジェクトはまだ、完全にシンとなってしまう前、戦いは始まります。
ティーダはすべてわかっていました。

本当は父が自分のことを愛していたこと
倒したくないけれど
もう倒すしかなくなってしまった親父のこと
父がシンの中で10年間苦しみ続けてきたこと
スピラに来たティーダに何回か会いに来ていたこと

ジェクトが願った通り、息子ティーダによって倒されるジェクト。
消えゆく意識の中、心の底から沸き上がる、あたたかなうれしさを隠すようにジェクトは言いました。

FF10ジェクト8

ジェクトは過酷な旅や、シンの中に閉じ込められた中でも腐ることなく、強靭な精神で性格が変わることがありませんでした。
でも、ティーダは違いました。
ジェクトの意思を継いだアーロンの助けにより、もうあの時の泣き虫ではない、それは、尊敬する父に向けた涙でした。
ジェクトはそれがわかりました。

アーロンの導きで変わった息子
自分と同じ過酷な旅をしてきて変わった息子
スピラで自分以上にもがいてシンを倒すところまで来た息子
生まれた時に願った強い男に育ったこと

全部わかっていました。
だから、人生ではじめて、自分の息子をほめるように言います。

FF10ジェクト9

ティーダは最後に全て伝わったことを感じました。
そうしてジェクトは、その人生を終えます。


ジェクトの中から飛び出したなにか、それこそがエボンの魂エボン=ジュ、ティーダの父ジェクトと、ユウナの父ブラスカが信じた気休めの希望を作り出した元凶、もう意識もなく、破壊と夢のザナルカンドを召喚し続ける螺旋の中心、これを倒せば夢は終わり自分は消える、ティーダはわかっていました。
エボン=ジュとの戦いが始まり、ユウナは召喚獣を召喚し続けます。
そしてやがてエボン=ジュを倒し、終わりの時がきました。
ティーダは旅立つ時にアーロンが願った通り、自分の物語を作り上げました。
それは父ジェクトだけではなく、アーロン、ユウナ、スピラの全員の物語を変えるお話なのでした。

FF10スピラの民

これ以上ない納得を得て未練は消え、命の終わりを受け入れてアーロンは消えていきます。
この結末まで10年待たせたジェクトとブラスカに会うために、消えながらアーロンは言います。

「もう お前たちの時代だ」

シンのいない新しい世代の新しい世界

ジェクトとティーダ

これは、長年螺旋にとらわれたループ世界を変えた

夢の世界の親子のお話。

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FF10ジェクトbase

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