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【読書連想文】早穂とゆかり(『噛みあわない会話と、ある過去について』)

この作品は前述の「パッとしない子」と似たような、昔は自分のほうがイケていて相手はパッとしていなかったのに、今は相手が立派になって立場が逆転する設定です

自分は相手がパッとしていなかったころの、相手はきっと世間には知られたくないと思っているような過去の話を握っているという優越感を持って相手に近づくのに、お互いが大人になって再開したときに完全な敗北を喫するという結末が待っています

これは私も他所でけっこう言ってきたことですが、子ども時代の「かっこいい」の基準は大人になるとくだらないことだったとわかります(私はわかりました)

しかしそのときの当事者にとってはそんな基準こそが絶対であり、底辺に置かれた側にしたら生きるか死ぬかの問題にもなりかねません

私には小学校のときにずっと好きだった男子がいました

その男子は運動神経が抜群によくて、勉強はそこそこできる程度だったのだろうけれど私には頭よく見えたし、学年の人気者で先生からも好かれていました

まさにこの作品の早穂みたいなタイプです

でも大人になって思い出すと、この男子は小学校2年のときに転校してきた内向的な性格の男子を、その小学校の残りの5年間、ずっとバカにして笑い者にしていたことに気づいて、そして自分もバカにする側にいたことに気づいて、なんと自分は浅はかでバカだったんだろうと思います

ゆかりはあまりにも苦しくて虚言をしてまでも人の気を引こうとしていました

それはゆかりにとっては生きていくために必死でやっていたことなのに、早穂は私はあなたの人生の汚点を知っているんだけど、バラされたくないでしょ?みたいな心理的マウントを取っているんですね(ゆかりには見透かされているのにはまったく気づかず)

最後は「パッとしない子」のときと同様に、昔はパッとしていなかったゆかりが今は一人の大人として、プロの社会人として、早穂の格段上にいることが明らかになります

自分が人気者であることで調子に乗っていた早穂は「パッとしない子」の先生と同じなのですが、ここであえて早穂の弁護人になってみます

大人の観点から言うと、早穂の子ども時代の素行は褒められたものではありません。やっていたことはイジメですから。しかし、早穂もゆかりも人生経験の乏しい子どもであったことは同じです。たまたま運動神経がよくて明るい性格であれば、人気者になって生徒からも先生からも好かれるのは普通のこと。自分にこういう資質があるのはたまたまラッキーだっただけにすぎないのだから、あたかも自分が人よりエライ存在であるかのように自惚れてはいけないと自制できる子どもなどいるのでしょうか?

周りからチヤホヤされたら調子に乗るのは子どもの宿命

本当はここまで状況を理解できる先生とか親とかがいて、調子に乗ってきた子どもの軌道を悪くない方に導くというのが正解なのだろうけれど、そういう先生や親っていないのが普通っぽいです

… などと思って早穂の弁護人を名乗り出ようかと思ったのですが、最後になって「ゆかりをいじめていたのは自分だけじゃないのに」で終わったので、あーこいつはやっぱダメなんだと諦めました😂

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