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【ショートショート】長距離恋愛販売中
山奥に俺と彼女は住んでいた。俺と彼女以外は誰もいない。
そんな場所に自販機ができたらしい。何故だろう。ともあれ珍しい。
「自販機ができたらしいぞ」
「知ってるわよ。私買ってみたわ」
「知ってたのか。何を買ったんだ?」
「『チョウキョリレンアイ』ドリンクよ」
「は?」
「『チョウキョリレンアイ販売中』のポップに惹かれたの。普通の飲み物じゃつまらないでしょ?」
「一体何だい? 『チョウキョリレンアイ』って」
「さあ。一緒に飲んでみましょうよ」
二人で半分ずつ飲んだ。
「何故かしら。何だか私たち離れた方が良い気がしてきたの」
「俺もだ。離れたくないのに」
「私も離れたくないわ。でも『離れたからこそ見える景色』も見てみたいの」
それを見ていた神様は嘆いた。
「遅かったか。あれは飲んだらいかんのだ」
それから人々は長距離恋愛の苦しみを知ることとなる。『アダムとイブ』がそのドリンクを飲んでから……。
(407字)
今週も、たらはかに(田原にか)様の企画【毎週ショートショートnote】に参加させていただきました!