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【ショートショート】かもしれない弁天

 もう何時間も田舎道を車で走っている。日も暮れてきた。目的地はまだまだ先だ。流石に疲れてきた。どこかで休みたい。
 そんなことを思っていると、錆びた看板が見えた。
 『Welcome to the Hotel KAMOSHIRENAI』と書いてある。
「ホテル カモシレナイ……?」
 変な名前だ。しかし俺は疲れ切っていた。ホテルかもしれないし、仮にそうじゃないとしても宿泊施設なのは間違いないだろう。
 まもなくボロボロの建物が見えてきた。『Hotel KAMOSHIRENAI』と書いてある。灯りが付いている。
 車を停めて中に入ると、弁天様ようなの格好をした女性がいた。
「ホテルかもしれないへようこそ」
 部屋に案内される。鍵を渡され、部屋に入る。窓がないが意外と悪くない部屋だ。
 不意に車に忘れ物を思い出した。
 出ようとするとドアが開かない。
 その時、ドアの向こうから先程の弁天の声が聞こえてきた。

「二度と出れないかもしれない……」

                  (426字)

今週も、たらはかに(田原にか)様の企画【毎週ショートショートnote】に参加させていただきました!

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