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できるだけ生きてるうちに褒めましょう 「田中一村展 奄美の光 魂の絵画」東京都美術館 dokug(ur)a論的美術論

「田中一村展 奄美の光 魂の絵画」を見てきました。

https://isson2024

https://www.tobikan.jp/exhibition/2024_issontanaka.html

田中一村の作品を年代順で3つの区分『東京時代』『千葉時代』『奄美へ』に分けて展示しており、
田中一村の人生と作品の変遷を知ることができるといった内容でした

『東京時代』の展示は、一村が6〜7才の頃の作品から展示が始まるのですが、その頃からとにかく驚くほどに絵の描写が冴え渡っており、子どもが描いた絵とは信じられないほどです
生き物や植物をよく観察しており、どう描けばよく見えるかが分かっているのが伝わってくる
凡庸な言葉で言えば、"天才"はいるんだというのをまざまざと見せつけられました
「芍薬図」(22歳頃の作品)は芍薬の重量感が見事に描かれており見応えがありました
素人目ではありますが、全体の構図と細部のバランスもよく取れているように感じました


『千葉時代』は彼の試行錯誤と旅の時代なのですが、その影響のためか風景の絵に目を見張るものがありました
個人的には特に夕暮れの描写が良く、「夕日」「黄昏野梅」「水辺夕景」「黄昏」などのいい作品がありました
映画のワンシーンのように劇的だったり、奥行きを感じさせるものだったりと、同じ夕暮れでも表現が異なっているのも思い返せば面白いですね
また、このエリアは鳥の絵が多いので鳥好きの人も楽しめそうです
軍鶏、きつつき、すずめ、かけす、尾長など種類も豊富。

『奄美へ』はまさに集大成といった内容
奄美に移住して、その自然と向き合いながらとにかく絵を描いた男の最期の輝きが眩しい
どの作品も何かをこちらに問いかけてくるような迫力があるのですが、特に「不喰芋と蘇鐵」には何らかの魔性が宿っているように蠱惑的でした
また、残されたスケッチブックや写生図も展示されていたのですが、そこに記された練習と試行錯誤は"天才"でもしっかりと鍛錬と下準備をしているのだなぁと当たり前のことを教えてくれました

ところで、私が展を見に行ったのが平日の金曜日の昼頃だったのですが、三連休の前の金曜日であるためか想定以上に混雑していました
行列に並びながら人の隙間をぬって一村の作品を見ていたのです
さながらディズニーのアトラクションのよう

しかしながら、一村の存命時は多くの展示会に落選し、ほとんど無名で個展も開いたことがなかったそうで、
存命中にこうあってくれたらもっとうれしかったんじゃないかなと感じました
昔は今ほど情報流通の機会が無かったわけなので仕方ないのですが……

これだけ絵がうまくても世に出ないこともあるとなると、人気になるとかならないとかは時の運なのだなぁ


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