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人生を表現する、表現する人生 「ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」森美術館 dokug(ur)a論的美術論

「ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」に行ってきました

六本木ヒルズにある巨大な蜘蛛。何度か見たことはあったけれども誰が作ったか私は知りませんでした。
今回の森美術館の 「ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」では、その蜘蛛の製作者であるルイーズ・ブルジョワの様々な年代の作品を展示しており、ルイーズ・ブルジョワの人生を共に歩いた気持ちになりました。

「ママン」
六本木ヒルズ森タワーの下で何者かを待ち構えている

自らの肉体や性、トラウマ、母との別れ、父への憎しみ、家族への思い、フェミニストへの連携など、繊細でパーソナルな部分が赤裸々に作品として表現されており、もはや他人ではいられないような気持ちになります。表現者の力か。

ルイーズ・ブルジョワ展の一角。造形物を彼女の書いた文章が取り巻く。
「カップル」
作品の中に抱き合う二人のモチーフが何度も現れる。
説明しようのない、生まれてきたことの寂しさを表しているのかもしれない。
「無口な子」
3人目の息子を主題とした作品。
芸術家の子どもであることは大変なことのようにも思われる。


「胸と刃」
一見、5つの乳房のようなものがついたソファに見えるけれども、物事はそう単純ではない。
可能なら現地で見てほしい。
「蜘蛛」
カゴの中身が蜘蛛が象徴するものを示唆している。


「ファム・メゾン(女・家)」
家と融合した女性の身体は、家に守られる一方で閉じ込められる女性の現実を象徴する。

展示の中で、個人的に気に入った細部は「無題(ホウキ女)」の"足元"です。こだわりを感じる。

「無題(ホウキ女)」
雑に作られているように見えて細部にこだわりが見える。


他にも多彩な作品があるのでお近くの方は是非足を運んでみてくださいね。色んな観点で鑑賞できるように感じます。

ただ、展示には、暴力を想起させるような作品や、巨大な男根そのもののように見える作品もあるので、刺激的なものに弱い方にはおすすめし難いところがありますのでご注意ください。

ちなみに、その男根そのものの作品は「少女(可憐版)」という名前なのですが、ブランクーシの抽象化された男根のような作品が「王妃X」という名前で、そのものが表現するものと正反対の名前をつけるというのが美術的転回の一つの手法なのだろうなぁと感じました。
また、ルイーズもマルセル・デュシャンと繋がりがあると、この展示で知りました。
マルセル・デュシャン、顔が広いな。

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