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【ミクロ-12:不動産鑑定士試験のための経済学】 寡占市場 をわかりやすく(余剰分析)


1. 寡占市場とは

寡占市場とは、少数の大企業が市場を支配する経済状況を指します。独占市場が1つの企業によって支配されるのに対し、寡占市場では2社以上の企業が存在しますが、それでも市場に参入する企業は限られています。このため、各企業は相互に影響を与え合いながら価格や生産量を決定します。
寡占市場の特徴は、企業間での戦略的な相互作用が必要とされる点です。つまり、一社が価格を下げれば他社も追随する可能性があり、または新たな商品を開発すれば他社もマーケットに同じような商品を投入するかもしれません。

2. クールノー・モデル

クールノー・モデルは、寡占市場を理解するための基本的なフレームワークの一つです。このモデルは、各企業がどのように価格や生産量を決定するかを数学的に表現し、企業間の相互作用を解析します。
クールノー・モデルは、特に数量競争をモデリングする点で知られています。つまり、企業は各自が生産する数量を決定し、その後で市場価格が決まります。このモデルはシンプルながらも、戦略的な意思決定の基本を理解する上で非常に有用です。

2.1. クールノー・モデルの仮定

クールノー・モデルにはいくつか基本的な仮定があります。第一に、市場にはn社の企業が存在し、それぞれが同じ商品を生産するとします。第二に、各企業は自社の利益を最大化するように行動します。
これらの仮定のもとで、各企業は他社の生産量に反応して自社の生産量を決定します。このようにして、各企業は反応関数に基づいて最適な生産量を見つけ出します。

2.2. 反応関数の導出

反応関数を具体的に導出するために、企業①と企業②の利益関数を考えます。仮に、企業①の利益関数をπ1、企業②の利益関数をπ2とすると、これらは両企業の生産量q1、q2と市場価格Pに依存します。利益関数を最大化するためには、それぞれの利益関数を生産量で微分し、0と等しいとすることで反応関数を導出します。
具体的には、π1をq1で微分し、π2をq2で微分します。これにより、企業①の生産量q1が他の企業の生産量q2にどのように依存するか、そして、企業②の生産量q2が企業①の生産量q1にどのように依存するかを表す反応関数を得ることができます。
図的には、反応関数は右下がりの曲線として表されます。これは、ある企業が生産量を増やすと、他の企業の最適な生産量は減少することを示しています。これは、市場の需要の一部が取り込まれるため、他の企業の利益最大化の生産量が減少するためです。

2.3. クールノー・ナッシュ均衡

クールノー・ナッシュ均衡は、企業①と企業②の反応関数が交差する点であり、この点で各企業が最適な生産量を生産することとなります。具体的には、2つの反応関数が図上で交差する点がクールノー・ナッシュ均衡です。
この均衡点では、企業①は企業②の生産量を考慮して自らの最適な生産量を、企業②は企業①の生産量を考慮して自らの最適な生産量を決定します。そして、この2つの生産量が市場全体の生産量となり、それに基づいて市場価格が決定されます。

3. ベラルトン・モデル

ベラルトン・モデルは、価格競争に焦点を当てた寡占市場のモデルです。クールノー・モデルが数量競争を中心に考えるのに対し、ベラルトン・モデルでは各企業が設定する価格によって競争が行われます。
このモデルも、企業がどのように価格を決定するか、どのように相互作用するかを明らかにするための有用なフレームワークとなります。特に、異なる価格戦略が市場結果に与える影響を詳しく考察することができます。

3.1. ベラルトン・モデルの仮定

ベラルトン・モデルでも基本的な仮定がいくつか存在します。第一に、市場にはn社の企業が存在し、それぞれが異なる価格で同じ商品を提供可能であるとします。第二に、消費者は価格と品質が同じ場合は低価格の商品を選ぶと仮定します。
これらの仮定のもとで、ベラルトン・モデルは企業が最適な価格をどのように設定するかを研究します。

3.2. 反応関数の導出

ベラルトン・モデルでの反応関数の導出も、利益関数の最大化を基にします。この場合、企業①の価格をp1、企業②の価格をp2とすると、これらの価格に対する反応関数を導出するためには、利益関数を価格で微分します。
具体的には、π1をp1で微分し、π2をp2で微分します。この微分を通じて、企業①の価格p1が企業②の価格p2にどのように影響されるか、および、企業②の価格p2が企業①の価格p1にどのように影響されるかを示す反応関数を得ることができます。
図的に表すと、この反応関数は右上がりの曲線として表されます。これは、ある企業が価格を引き下げると、他の企業も価格を引き下げることが最適と判断することを示しています。

3.3. ベラルトン・ナッシュ均衡

ベラルトン・ナッシュ均衡は、企業①と企業②の反応関数が交差する点であり、この点で各企業が最適な価格を設定します。具体的には、2つの反応関数が図上で交差する点がベラルトン・ナッシュ均衡となります。
この均衡点では、企業①は企業②の価格設定を考慮して自らの最適な価格を、企業②は企業①の価格設定を考慮して自らの最適な価格を決定します。そして、この2つの価格が市場全体の価格構造となります。


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