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【マクロ-05:不動産鑑定士試験のための経済学】 IS-LM分析 をわかりやすく(IS-LM分析)


1. IS曲線

1.1. IS曲線とは

IS曲線は、「財市場の均衡」を示すものとして経済学において使われます。具体的には、この曲線は、ある特定の利子率での総需要と総供給が等しい場合を示しています。総需要とは、家計や企業が行う消費や投資の合計を意味し、利子率は投資のコストとして機能します。
IS曲線は、利子率と国民所得の関係をグラフに表したもので、縦軸に利子率、横軸に国民所得をとります。均衡の時、曲線上の各点が財市場の均衡を示しているのです。

1.2. IS曲線が右下がりの理由

IS曲線が右下がりの形状をしている理由は、利子率が上昇すると投資が減少し、それが国民所得を減少させるためです。利子率が高いと、企業の資本コストが上昇し、新しい投資プロジェクトの収益性が低下します。
逆に、利子率が低ければ、企業は新しい投資を行いやすくなり、それが経済活動の活性化をもたらすため、国民所得が増加します。このような関係性が、IS曲線を右下がりの形にしています。

1.3. IS曲線のシフトする要因

IS曲線は外部ショックや政府の政策変更など、商品市場の均衡に影響を与える要因によってシフトします。外部ショックとは、天災や国際的な経済危機など、国内の経済政策や市場の動きに起因しない要因による経済への影響を指します。
例えば、政府が大規模な公共投資を行った場合、総需要が増加します。その結果、任意の利子率での均衡国民所得が増加するため、IS曲線は右にシフトします。

2. LM曲線

2.1. LM曲線とは

LM曲線は、「貨幣市場の均衡」を示すものです。この曲線は、ある特定の利子率での貨幣供給と貨幣需要が等しい場合を示しています。金融市場の均衡とは、人々が所持する現金と銀行の預金の合計が一定である状態を指します。
この曲線も、縦軸に利子率、横軸に国民所得を取るグラフとして描かれます。均衡の際、曲線上の各点は、貨幣市場の均衡状態を示しています。

2.2. LM曲線が右上がりの理由

LM曲線が右上がりの形状になるのは、国民所得が増加すると貨幣需要も増加するためです。国民所得が増えると、取引のための貨幣需要や、資産としての貨幣の保有額も増えます。
しかし、貨幣供給は一定であるため、貨幣需要の増加に対応して利子率が上昇します。このため、国民所得の増加に伴い、均衡利子率も上昇することから、LM曲線は右上がりの形をとります。

2.3. LM曲線のシフトする要因

LM曲線は、中央銀行の金融政策や公定歩合の変動によってシフトします。公定歩合とは、中央銀行が金融機関に対して行う短期資金の貸し出しの際の利子率を指し、これが変動することで市場の利子率や貨幣供給に影響を与えます。
例えば、公定歩合が上昇した場合、市場の資金供給が減少し、利子率を上昇させるため、LM曲線は左にシフトします。

3. ISLM分析と45度線分析との違い

ISLM分析は、財市場の均衡(IS曲線)と貨幣市場の均衡(LM曲線)を同時に考慮し、国民所得と利子率の均衡を示すものです。これに対し、45度線分析は、実際の国民所得と計画された支出が等しい点を示す分析方法で、利子率の変化は考慮されません。
ISLM分析において、IS曲線とLM曲線が交差する点は、国民所得と利子率の同時均衡を示しています。この点では、財市場と貨幣市場の双方で均衡が達成されているため、経済全体の均衡点として捉えられます。

4. 財政政策とIS-LM分析

4.1. 財政政策とは

財政政策とは、政府が公共支出や税率を調整することで、経済全体の需要を操作し、経済の安定や成長を促進するための政策のことを指します。
景気の低迷時に公共支出を増やすことや税減税を行うことで、経済の需要を刺激します。一方で、景気が過熱しインフレが懸念される場合、公共支出を削減したり、増税を行うことで経済を冷却しようとします。

4.2. 財政政策の手段

財政政策には、拡張的な財政政策と緊縮的な財政政策の2つの主要なアプローチが存在します。拡張的な財政政策は、経済が不景気の時に実施されることが多く、公共支出の増加や税の減税などを行い、経済の需要を増加させることを目指します。
一方、緊縮的な財政政策は、経済が過熱しインフレが懸念される場合に取られるアプローチであり、公共支出の削減や税の増税を行うことで、経済の需要を抑制し、インフレをコントロールすることを目的としています。

4.3. IS曲線のシフトと国民所得・利子率への影響

財政政策の実施によって、IS曲線はシフトします。例えば、増税や公共支出の削減が行われると、総需要が減少し、IS曲線は左にシフトします。逆に、減税や公共支出の増加が行われると、IS曲線は右にシフトします。
IS曲線が右にシフトすると、均衡国民所得は増加し、均衡利子率は上昇します。IS曲線が左にシフトすると、均衡国民所得は減少し、均衡利子率は下落します。

4.4. クラウディング・アウト

クラウディング・アウトとは、政府の増加する支出や借入によって、民間の投資が減少する現象を指します。これは、政府の大量の借入によって利子率が上昇し、それが民間の投資を減少させるからです。この現象は、財政政策が経済に与える刺激効果を弱める要因となるため、政策の効果を評価する際に考慮すべき重要な点となります。

5. 金融政策とIS-LM分析

5.1. 金融政策とは

金融政策は、中央銀行が経済の安定や成長を目指して行う、通貨供給量や利子率を調整する政策のことを指します。具体的には、公定歩合の調整や市場操作を通じて、経済の物価安定や適切な雇用の確保を目指します。
金融政策は、景気の動向やインフレのリスクなどを踏まえて、短期的な経済の調整を行うための主要な手段となります。

5.2. 金融政策の手段

財政政策には、拡張的な財政政策と緊縮的な財政政策の2つの主要なアプローチが存在します。拡張的な金融政策は、経済の緩やかな成長やデフレリスクに対応するための政策で、公定歩合の引き下げや市場操作(買いオペレーション)での資金供給増加などが行われます。買いオペレーションは、中央銀行が金融機関から国債を購入し、市場に資金を供給することで、金融を緩和します。これにより、企業や個人の借入コストが低下し、投資や消費が奨励されます。
一方、緊縮的な金融政策は、経済が過熱しているときやインフレリスクが高まっているときに実施される政策で、公定歩合の引き上げや市場操作(売りオペレーション)での資金供給減少が行われます。売りオペレーションは、中央銀行が金融機関に対して国債などの資産を売却することで、市場から資金を吸収し、金融を引き締めます。これにより、過度な経済の成長を抑制し、物価の安定を図ることが目的となります。

5.3. LM曲線のシフトと国民所得・利子率への影響

金融政策の影響を受けて、LM曲線はシフトすることがあります。例えば、中央銀行が金融緩和を行い、通貨供給を増加させると、LM曲線は右にシフトします。逆に、金融引き締めを行い通貨供給を減少させると、LM曲線は左にシフトします。
LM曲線が右にシフトすると、均衡国民所得は増加し、均衡利子率は低下します。LM曲線が左にシフトすると、均衡国民所得は減少し、均衡利子率は上昇します。

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