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◆忍殺TRPG◆【フォー・ニンジャ・イン・フォー・デイ・レジャー】#1◆ソロ・リプレイ◆

初めてのチーム・ミッションを無事に成功させた四人のニンジャ達は与えられたばかりの自分達のアジトに集まり、楽しい余暇の予定を立て始めた…!


シナリオ終了時の獲得万札は【万札:49】でしたが、
そのうち【万札:5】の価値がある「顧客情報素子」を【万札:3】
ヘルカーネージに売却しているためマイナス2されて【万札:47】
そしてスズリ=サンからもらった【万札:5】をプラスして【万札:52】
ここにブラッドカタナトロ粉末×2の売却価格を加えたものが
最終的な総万札獲得額。すなわち今回の余暇の予算となります

そして売却価格は以下の通りになりました!
ブラッドカタナ 売却価格:3d6 = (2+6+6) = 14
トロ粉末×2 売却価格:1d3 = (2) = 2×2 = 4

◆最終獲得万札◆
【万札:70】
◆パワリオワー◆

◇余暇一日目・開始◇

応接間でチャブを囲むグリムファイバー、ラピッドビート、スライサー、ユコバック。卓上には70枚の万札束が鎮座している。「これが今回の報酬諸々全部合わせての額だ」「随分稼ぎましたねぇ」「そんで、事前に決めておいた通りこれを四人で山分けするんだが…」「2万余ることになるな」

ユコバックの指摘通り、70を4で割れば17.5となり、万札で分けるなら2余る。単純な算数の問題だ。「キッチリ17万5千ずつにしてもいいが、ちょっと俺に考えがある。聞いてもらえるかい?」ラピッドビートは問う。三人もそのまま続きを促した。「よし、それじゃコイツを見てくれ」

木人:【万札】1:サイズ小:カラテトレーニングに必要
香炉:【万札】1:サイズ小:ザゼントレーニングに必要
ブッダ像:【万札】5:サイズ小:障害物、特に効果はない
大型ブッダ像:【万札】10:サイズ中:障害物、特に効果はないがアトモスフィアが良くなる
偉大なるショドー:【万札】10:サイズ極小(壁掛け):カラテトレーニングを強化する
見事なカケジク:【万札】10:サイズ極小(壁掛け):ザゼントレーニングを強化する
ボンサイ:【万札】3:サイズ極小:特に効果はない
見事なボンサイ:【万札】10:サイズ極小:特に効果はない
黄金ダルマ:【万札】20:サイズ極小:特に効果はない
鳥居:【万札】3:サイズ小:各種トラップを配置可能
灯篭:【万札】2:サイズ小:障害物、隣にあると『連続側転』判定の難易度が1下がる
UNIXデッキ:【万札】5:サイズ小:ハッカーを追加で配置する場合に必要

ラピッドビートが取り出したのは家具カタログだ。それもタンスやチャブといった一般的なものではなく、木人、香炉、ブッダ像といった特殊な家具ばかりが記載されている。「このアジトにはカラテ・ドージョーはあるが、肝心のトレーニング用木人が無い。だから端数の2万で木人と、あとザゼン用の香炉を買おうかと思うんだ」「なるほど」「それなら全員の利になるな」

この提案に三人共が同意し、最終的な分け前は各17万ずつとなった。
グリムファイバーの所持万札:11→28
ラピッドビートの所持万札:26→43
スライサーの所持万札:0→17
ユコバックの所持万札:0→7(ローン返済があるため-10)

「んじゃあ分け前も決まったことだし、余暇の予定を立てていくとしますかね」「ンー…とりあえず私はまとまったお金も入りましたし、ブラックマーケットでお買い物しようと思います」グリムファイバーは自分のサイフに万札を詰め込みながら、フードの下でほくほくとした笑みを浮かべている。

「おれは…そうだな、何をしたものか…」スライサーは腕を組んで考え込む。日課のカラテ鍛錬を行うのは当然としても、彼は今の自分が成長の壁に直面しているのを肌で感じ取っている。今まで通りにやっていても更なるカラテを身に付けることはできないだろう。「じゃあ私と一緒に買い物でもいきます?」「ム…」グリムファイバーの申し出に一瞬面食らったが、他にすべきこともなし。気分転換にはちょうどよかろう。「では、そうしよう」

「ウンウン、それがいいです!ネオサイタマ・ニュービーのスライサー=サンに私がインストラクションを授けてあげましょう!」「フ…よろしく頼む。センセイ」スライサーは苦笑しながらも偽りの無い感謝を示した。

「私はひとまず鍛錬に勤しむとするよ。もう少し身体を鍛えねばな」ユコバックがチャを啜りつつ言う。「特に…ニンジャ敏捷性やニンジャ器用さか。そこを重点的に鍛えようと思う」「オッ、それじゃ今日にでも木人を買っとかねえとな」「私はこの後出かけるが、ついでに買ってこようか?」「俺も行くよ。医者の予約しとかねえとだしな」「医者?どこか悪いんですか?」

「俺は明日サイバネ手術を受けるつもりだ。ヒキャクだな」「おや、思い切りましたね」「…おれはサイバネの事はよくわからんが、ラピッドビート=サンの脚力は中々の物だと感じる。機械に入れ替えてしまうのか?」スライサーがやや勿体無さそうな顔で問うた。「いや、何も脚をゴッソリ全部置換しちまうってわけじゃないさ。俺だってそれはコワイ。部分的にサイバネを入れてもらって脚力を増強するんだ」「ほう…そういった物もあるのだな」

「それじゃ明日の予定は決まったな。俺はサイバネ手術で」「私とスライサー=サンは買い物に」「私はドージョーで鍛錬だな」ラピッドビートは各人の予定を手製のボードに記載していく。「昔からこういうとこマメですよねぇ」「まとめておけば後々なんかの役に立つかもでしょ…よしっ、と!」

「さて…それでは出かけるとしよう」「おう。先輩とスライサー=サンは留守番頼む」「わかった。ドージョーの清めでもしておこう」「では私は電算室の模様替えを。イッテラッシャイ」「「イッテキマス」」

◆◆◆

「…色々と気を使わせてすまないね、ラピッドビート=サン」ツチノコ・ストリートの路地を歩きながら、ふとユコバックが呟いた。「ン?あぁ、別に大したことねぇよ。気にしなさんな。問題なく返せるんだろ?」「ウム、おかげさまでな」然り。ユコバックの用事とはサイバネ・クロームハートの代金を借りていたふわふわローンへの返済である。チームの中で彼がローンを抱えているのを知っていたのは、暫定リーダーのラピッドビートのみだ。

「だったらいいじゃねえか。綺麗サッパリ身軽になれるってもんだぜ」ラピッドビートは笑いながらそう言うと、少し声を潜めて続けた。「…ここだけの話な、グリムファイバー=サンもこないだまでローン抱えてたんだってよ」「なんと」「結構多いんだぜ、ふわふわユーザーのソウカイ・ニンジャ。何人かいなくなっちまったのもいるけどな」「フフ…私は運良くそうならずにすんだわけだ」「違いねぇ。まぁなんだ、アンタがどんな理由でサイバネ入れたのかは知らんし、問い質そうとも思わないがね、周りに気兼ねすることもないんだぜ」「…ありがとう、ラピッドビート=サン」

ユコバックが深くオジギをすると、ラピッドビートは何とも照れ臭そうにした。二人は語らいながらしばらく歩き、駅で別れて各々の目的地に向かった。そして…物陰でその様子を見つめる人影が一つ。「…奴らが、ブラックマンバを」白尽くめの装束に身を包んだ影はそう呟き、やがて姿を消した。

◆◆◆◆◆◆

ここからは四人の余暇を順番に消化していきます。基本的にはネンコにより
グリムファイバー→ラピッドビート→スライサー→ユコバックの順番で描写していく予定ですが、今回はグリムファイバー=サンとスライサー=サンが一緒に買い物にきているため一緒に描写します。タイム・イズ・マネー!

◇余暇一日目・グリムファイバー&スライサー◇

ネオサイタマ・ブラックマーケット。この闇の市場に集まる者は数多く、多種多様だ。ヤクザや密売人、ジャンキー、ヨタモノ。或いは湾岸警備隊所属の荒くれ者…そして、ニンジャ。「ドーモ、イクイップメントです」「ドーモ、イクイップメント=サン。グリムファイバーです」「スライサーです」

市場の片隅に存在するこの店はソウカイヤの直営であり、組織所属のニンジャ達に割安で武器や薬物を提供する為に作られている。店主のイクイップメントも古株のソウカイ・ニンジャであり、この場での狼藉は許されない。

「久しぶりだなグリムファイバー=サン。やっとこ金欠生活ともオサラバか?」「ちょっと!余計なこと言わないで下さいよ」「カカカ!事実だろうに!それで、そっちのカラテマンは見ない顔だな。新入りか?」「…ウム、つい一週間ほど前にソウカイ・ニンジャになった。ヨロシクオネガイシマス」「おうおう、礼儀正しい奴だ!まぁ好きなだけ見ていくといい」「私はとりあえず新しいニンジャスーツ買いたいので試着してきます」「ああ」

◆消費アイテム◆
【万札:3】:オーガニックスシ:【体力】を3回復(使い捨て)
【万札:3】:トロ粉末:【精神力】を2回復(使い捨て)
【万札:5】:ウイルス入りフロッピー:ハッキング難易度-1(1/2の確率で使い捨て)
【万札:5】:ZBRアドレナリン注射器:次の手番まで【脚力】+2、行動不能状態にある仲間の蘇生(使い捨て)
【万札:5】:違法トミクジ:この買物中でも使用可。D6を振り、出目5-6で【万札】10獲得。(使い捨て)

◆装備やオーパーツ◆
【万札:10】:カタナ:近接戦闘時にスタイルを選択できる
【万札:10】:タクティカルニンジャスーツ:強化ケブラー繊維の最新ニンジャ装束。【体力】+1
【万札:10】:伝統的ニンジャ装束:身軽なジュー・ウェア系にブラックベルト
       そこにカラテ防御用の鋼鉄ブレーサーやレガースを装備した状態。回避ダイス+1個
【万札:10】:パーソナルメンポ:高級オーダーメイドの特徴的メンポ、【精神力】+1
【万札:10】:フルヘルムメンポ:近代的なフルフェイスヘルメットから鎧甲冑の兜まで、
                      頭部全体を覆うあらゆるヘルム。【体力】+1
【万札:10】:LAN直結型ハンドガン:遠隔武器、連射2、時間差、
       マルチターゲット(前提:サイバネアイ)、ダメージ1: 【装備前提:生体LAN端子】
【万札:10】:*キーボード・オブ・ゴールデン・エイジ*
【万札:15】:*マキモノ・オブ・シークレット・ニンジャアーツ*
【万札:20】:**ボンサイ・オブ・ダークネス**
※コアルール環境のショップ・ラインナップに、プラグイン環境の追加アイテムから「伝統的ニンジャ装束」「フルヘルムメンポ」を加えています

強化ガラス・ケース内に収められたカタナや拳銃などの武器類。多種多様なサイズや色、材質を取り揃えたニンジャ装束。骨董品めいて古めかしい象牙色のキーボードや、異様なアトモスフィアを放つマキモノボンサイ。コケシ・マート払い下げ品と思しき旧式の大型冷蔵庫の中にはスシ・パックが詰め込まれている。「大したものだ…これほどの品揃えとは」スライサーは感嘆の声を漏らしつつ、刀剣類が並ぶケースを眺める。

(カタナ、メイス、トンファー、マチェット、ニンジャソード、カマ、タント、サイ、ヌンチャク、サーベル……ニンジャの身体能力と学習能力があれば、この中のどれを手に取ってもやすやすと操ることができるのだろうな)スライサーが思い返しているのはブラッドカタナを振るって戦うラピッドビードの姿だ。彼はあの短いイクサの中で見る見る内にカタナの扱いに習熟し、フェイントを織り交ぜた高度なイアイドーまでも繰り出して見せた。

無論それはラピッドビートの確かなワザマエあったればこそであろうが、恐らくは自分でも同じ事ができるだろう。ニンジャとはそういうものだ。「…だが、おれには不要。鉄身の五体こそ真の武器」「カカッ!言うじゃねェかスライサーとやら!」「!」スライサーの背後から声を掛けたのはイクイップメントだ。彼の動きに気付けなかったスライサーは己の未熟を恥じた。

「気分を害したのならば、謝罪する。この店の武器の質に文句があるわけでは…」「あぁ気にすんな気にすんな。別にワシが手ずから鍛えて作ったカタナでもなし。それよりもなんだ、お前さんは自分のカラテだけを頼りにやってこうってのか?」「…そうだ。おれはニンジャになる前からずっとカラテ一筋で生きてきた。これからもそうする」「フーン……」イクイップメントは値踏みするような眼差しをスライサーに向ける。それは抜け目なき商売人の目であり、数々の修羅場を潜り抜けた古強者の目でもあった。

「…ニュービー・ニンジャってのは大抵武器を持とうとする。それは不足する己のカラテを補うためだったり、ニンジャソウルの影響だったり、単なるカッコつけだったり、理由は色々だ」「……」スライサーは黙って耳を傾ける。「もちろんヴェテランだって武器を持つ。新入りのお前さんも見たことくらいあるだろ、あのおっそろしいダークニンジャ=サンをよ」「…ああ」

ダークニンジャ。ラオモト・カンの懐刀。恐るべきカラテとワザマエに、謎めいたカタナ。その実力はソウカイヤの中でも最上位であり、必要とあればシックスゲイツ級ニンジャの粛清すら任じられると言う。スライサーも含む多くのソウカイ・ニンジャにとってラオモト同様、雲の上のような存在だ。

「カタナにしろヤリにしろ、武器があればイクサの幅は広がるだろう。それをあえて持たないってんなら…お前さん、中々根性あるぜ」「おれはカラテ一筋に生きると決めた。今さら他のドーを修められるとも思わん。不器用なだけだ」「カカカ!お前みたいにストイックな奴ァ珍しい!よし、少し待っとけ」「…?」スライサーは訝しみつつ、積み重ねられた箱をゴソゴソと探るイクイップメントを見守る。「あったあった…ホレ!これならどうだ」

イクイップメントが差し出したのは鋼鉄製のブレーサーとレガースであった。「カラテ一筋でやっていくのはいいが、このくらいの守りは用意しとくが吉だろうぜ。心配すんな、まだ新品同然よ!」「…なるほど」スライサーはイクイップメントからブレーサーを受け取り、片腕に装着してみた。鋼鉄製ゆえズシリとした重みを感じるが、ニンジャのカラテを妨げるほどでもない。問題なくチョップやストレートを繰り出せるだろう。「悪くないな」

スライサーはもう片方のブレーサーとレガースを装着し、感覚を確かめるようにカラテを構えた。重量が不思議と身体に馴染むのを感じる。この防具があれば先のブラックマンバのように毒を用いた攻撃も受け止め、反撃に転じることが出来るだろう。これもまたイクサの幅が広がったと言える。

「ウム、イクイップメント=サン、このブレーサーとレガースを買わせてもらいたいのだが…」「よしきた。10万だ」イクイップメントはニカッと歯を見せて笑いながら、人差し指を立てた。「これで頼む」スライサーは懐からガマグチを取り出し、10枚の万札をイクイップメントに手渡した。「マイドアリ!ああそうだ、そこのドアから裏庭に通じとる。モノを壊さん程度なら身体を動かして構わんぞ」「ありがたい。ではそうさせてもらおう」

「ウーン…」「?」数分後。試しを終えて店内に戻ってきたスライサーが見たのはガラスケースの前で唸っているグリムファイバーの姿であった。「ウームム……」「どうしたのだ、グリムファイバー=サン」「いえ、ちょっと悩んでまして…このLAN直結型ハンドガンを買うか、あっちの強化繊維フード付きメンポを買うか…」「ラン…直結。普通の拳銃とは何か違うのか?」

全然違いますね。LAN直結銃は読んで字の如く使用者の生体LAN端子と直結するのですがそうすることでニューロンの速度で弾丸を発射できます。論理トリガと言いまして指で引き金を引かなくても思考するだけでコンマ1秒以下の反応速度で…」「ウ…ウム…その、おれには詳しいことはよくわからないのだが、強力な銃だということは伝わった。アリガトゴザイマス」

猛烈な勢いで語り始めたグリムファイバーにスライサーは気圧され、話題を切り替えた。「それはつまり、ニンジャのイクサにも耐えうる代物ということか」「そうですね…ニンジャが用いれば十二分に威力を発揮するはずですよ」「ふむ…」「少なくとも、今の私が投げるスリケンよりは強力だと思います」「例の連携攻撃もより強力になる、というわけか」「ええ」

後衛のグリムファイバーとユコバックがスリケンで敵の動きを牽制し、前衛のラピッドビートとスライサーがカラテで畳み掛ける。これが先日のイクサで彼らの確立した基本のチームワーク・プレイである。「…よし、決めました!身を守るための防具も捨てがたいですが、ここはチームに貢献しましょう!先輩として!」グリムファイバーは決断し、LAN直結銃を手に取った。

「イクイップメント=サン!これください!」「ハイよ、10万だ」グリムファイバーは取引を終え、早速LAN接続を試そうとし、イクイップメントに咎められた。「おい!いくらなんでも店の中で試射までさせられんぞ。やるならその辺の路地裏でヨタモノでも撃ってこい」「そんな野蛮なことしませんよ…私は奥ゆかしいソウカイ・ニンジャなんです」「……そうかァ?」

イクイップメントは何かを問うような目でスライサーを見た。グリムファイバーも同じような目でスライサーを見た。スライサーは答えあぐね、腕組みをして考え込み…答えた。「グリムファイバー=サンは…奥ゆかしさと無慈悲さを兼ね備えたソウカイ・ニンジャだ…と思う」「何ですかそれー!」

「カッカカカ!正直な奴じゃないか!」イクイップメントは憤慨するグリムファイバーと困った様子のスライサーを見ながら愉快そうに笑った。

◆余暇スロット処理◆
グリムファイバーは「タクティカルニンジャスーツ」「LAN直結型ハンドガン」を購入。それぞれ価格は万札:10のため、所持万札:28→8

スライサーは「鋼鉄ブレーサーとレガース(伝統的ニンジャ装束)」を購入。価格は万札:10のため、所持万札:17→7

◇余暇一日目・ラピッドビート◇

「ハイ、終わりましたよ」「ン…思ってたより早く終わるもんなんだな…」白衣を着た痩せぎすの男がラピッドビートに声をかける。ここはトコロザワ地区に存在する偽装ビルディングの中。ソウカイヤお抱え闇サイバネ医師の違法クリニックである。「通常のサイバネ手術のように脚を丸ごと換装したわけではありませんから。立ってみてください」「あいよ…っと!」

ひやりと冷たい床にラピッドビートの素足が触れる。同時にカチャリという音が鳴った。踵の部分が金属製のサイバネティクスに換装されているのだ。「どうですか?痛みは?」「痛みはねェな。違和感は…ちッとある」「それはそうでしょう。歯医者で被せ物してもらったって最初は違和感ありますよ」「じき慣れるかね」「そこは心配ありません。施術はカンペキです」

カチャリ。ラピッドビートはしばらく感触を確かめるように屈伸運動を行い、ゆっくりと歩いた。カチャリ。踵だけでなく、踝から脹脛(ふくらはぎ)の裏側を覆うように金属の光沢が輝いている。カチャリ。「裸足で歩くとカチャカチャ鳴ってうるせェな…」「人工皮膚被せますか?追加料金かかりますけど」「いや、問題ないさ」ラピッドビートは歩き方を変える。

すると、確かに足裏が床に触れているはずなのにほとんど音は立たなくなった。「へぇ…やはりニンジャはスゴイ。全く足音がしなくなりましたね」「これも慣れが必要だな…隠密任務のときにカチャカチャ音立ててりゃ話にならん」「頑張ってください。では本日はこれで。オダイジニ」「ああ、アリガトゴザイマシタ」「メンテナンスは月一回です。サービスしますよ」

領収書を受け取って建物を出たラピッドビートは少し思案したのち、路地裏の方に歩みを進めた。猥雑なネオン看板群や、無数の配管が複雑に絡み合っている。重金属酸性雨は珍しく止んでいた。突き当たりでラピッドビートは両側の壁を見た。次に己の脚を、次に四角く切り取られた灰色の空を見た。

「イヤーッ!」路地裏に突如響き渡ったシャウトに驚き、生ゴミを漁っていたバイオ野良猫が逃げていく。ラピッドビートの姿は既にそこにはない。「イヤーッ!」彼は壁を蹴っていた。「イヤーッ!」彼は配管を蹴っていた。「イヤーッ!」彼はネオン看板を蹴っていた。「イヤーッ!」彼は…ビルの屋上に立っていた。地上40メートルはあろうか。「…なるほどな」

「昨日までより明らかに脚力が上がってる。悪くねェ…あとは慣らして…鍛えるだけだ。もっと、もっと!」ラピッドビートは遠くを、一際高く聳え立つ摩天楼を見た。ネオサイタマの帝王が座するトコロザワ・ピラーを。「ヘルカイト=サン、ソニックブーム=サン。俺はいつか…いつか必ずシックスゲイツの高みに上り詰めて見せます!」その瞳は力強い決意に満ちていた。

◆余暇スロット処理◆
ラピッドビートはサイバネ手術を行い、「ヒキャク」を得た。費用は万札:10のため、所持万札:43→33

◇余暇一日目・ユコバック◇

アジト内のドージョー。先日ここで二人のスモトリヤクザを殺したが、今は死体も血痕も綺麗に片付けられ何事もなかったかのような佇まいである。ユコバックはドージョーの中央に立ち、ケモビールの瓶をじっと眺めていた。

彼の脳裏に浮かぶのは昨日のラピッドビートの言葉だ。(ワザマエを鍛えたい?それならボトルネックカットチョップがいいと思うぜ)「ふむ…まずは一本、試しにやってみるとしよう」ユコバックは用意した台の上にビール瓶を固定し、深く腰を落としてチョップを構え……「イヤーッ!」

【カラテ+ワザマエ】判定:4d6>=3 = (4,1,1,5 :成功数:2) = 2 成功!

カタン。振り抜かれたユコバックのチョップはビール瓶の首を見事に切断した。ワザマエ!「よし…!次は二本だ」ユコバックは用意した台の上にビール瓶を二本固定し、深く腰を落としてチョップを構え……「イヤーッ!」

【カラテ+ワザマエ】判定:2d6>=3+2d6>=3 = (1,4 :成功数:1) + (1,6 :成功数:1) = 2 成功!

カタカタン。振り抜かれたユコバックのチョップは二本のビール瓶の首を見事に切断した。メイジン!「…三本、やってみるとしよう」ユコバックは用意した台の上にビール瓶を三本固定し、深く腰を落としてチョップを構え……「イヤーッ!」

【カラテ+ワザマエ】判定:2d6>=3+1d6>=3+1d6>=3 = (4,6 :成功数:2) + (6 :成功数:1) + (3 :成功数:1) = 4 成功!

カタカタカタン!振り抜かれたユコバックのチョップは三本のビール瓶の首を見事に切断した!タツジン!「コツが掴めてきたような…よし、四本試してみるか!」ユコバックは用意した台の上にビール瓶を四本固定し、深く腰を落としてチョップを構え……「イヤーッ!」

【カラテ+ワザマエ】判定:1d6>=3+1d6>=3+1d6>=3+1d6>=3 = (3 :成功数:1) + (5 :成功数:1) + (4 :成功数:1) + (5 :成功数:1) = 4 成功!

キキキキンッ!振り抜かれたユコバックのチョップは四本のビール瓶の首を見事に切断した!ゴウランガ!「お…おお…!何事も試してみるものだ…良い鍛錬法を教えてもらった。ラピッドビート=サンが帰ってきたらお礼を言わねばなるまい」ユコバックは満足気に頷き、首を切断され無惨な姿となったケモビールの瓶を片付けはじめた。そのワザマエは高まりを見せている…!

◆余暇スロット処理◆
【ワザマエ鍛錬】判定:1d6 = (5) = 5 成功!
ユコバックはトレーニングに成功し【ワザマエ】値が2→3となった。
費用は万札:のため、所持万札:7→4

◇余暇一日目・終了◇

今日の予定を一通り終えた四人はアジトに戻り、揃って夕食をとっていた。いずれは客を迎えることになるであろう応接間で食べるわけにもいかないので、かつてオヤブンが鎮座していた事務所にチャブを移動させている。ここならキッチンも近く、便利だからだ。今日の食事当番はユコバックだった。

「清掃の連中も食材には手をつけずに帰っていったんだな」「お金にならないでしょうしね」「何にせよありがたい。おかげで食費が少し浮いた」「所帯染みてるな…まぁ確かにデカい冷蔵庫があるってのは嬉しいが」「ウマイ」チャブの上には野菜炒めやヒヤヤッコ、炒りタマゴなどが並んでいる。

コメ、粉末成型魚肉カンヅメ、タマゴ、肉類、野菜類、激安四連トーフカルテットetc…ヤクザのキッチンには実際、四人の腹を満たすに充分な量の食材が貯蔵されていた。少なくともこの四日間は買い足す必要もないだろう。

「4本切りに成功したァ!?マジかよ!」「マジだとも。私自身驚いているがね」「ボトルネックカットチョップですか…私もやってみようかな」「おれもモータル時代に何度か挑戦したことがあるな。あの時は1本がやっとだった」「ははは、今度みなで競ってみるのもよいかもしれんな」

四人は談笑しながら食事を続け、やがてひと心地ついたところでラピッドビートが話題を切り替えた。「さて…それじゃ明日の予定も決めていくとするかね」「私はカラテを鍛えます!」グリムファイバーは拳を握り、胸を張って宣言した。皆の先輩として不甲斐ないカラテは見せられぬという気概だ。

「俺はこの脚を慣らすために…そうだな、一日掛けてネオサイタマ中をジョギングでもしてくるか。脚力を鍛える鍛錬にもなるだろうぜ」ラピッドビートは機械に換装された己の脹脛をさすりながら言った。ニンジャ脚力とニンジャ持久力を加味しても、明日は相当にハードな鍛錬となるだろう。

「おれはザゼンを組んでみようと思う。ブラックマンバ=サンとのイクサでは危うく昏倒するところだったからな…セイシンテキも鍛えねばなるまい」スライサーは急いて鍛錬を行うよりもまず己の弱点を見つめ直し、それを克服することに決めた。優れたニンジャ第六感はイクサの助けにもなろう。

「では、私もグリムファイバー=サンと同じくカラテ鍛錬を行うとしよう。体力もつけねばならんからな」ユコバックはユノミを置いて答えた。ワザマエに、カラテ。どちらも疎かにせず鍛え上げていくことがニンジャには肝要だ。身体能力に劣る老体の彼にとっては尚更の事である。

「じゃあ明日の予定はこうか。場所や内容は違えど全員トレーニングだな」「ソニックブーム=サンの期待を裏切らぬためにも、しっかりと鍛えねばなるまい」「私達がこの先を生き残っていくためにも、ですよ」「その通り」

ニンジャソウル憑依現象は死に瀕した時などに発生しやすいと言われている。実際彼ら四人のうち、ラピッドビート、スライサー、ユコバックは瀕死の重傷を負った際にニンジャとなって蘇った。「折角生き返って第二の人生を歩もうと言うのだ。ウカツをやって死んでしまっては、勿体無かろう?」

チャを飲みながらそう語るユコバック。彼がどういった経緯で一度死に、ニンジャとなり、ソウカイヤに籍を置くことになったのかはラピッドビートも知らぬ。だが齢七十七の老ニンジャの言葉の重みは全員が感じ取っていた。

「ま、ユコバック=サンの言う通りだぜ。何はともあれ生き残らにゃ始まらねェ…その上で、だ」ラピッドビートがチャを飲み干し、力強く言い放った。「俺達は生き残る。そして強くなる。強くなって、出世する!両方こなしてやろうぜ!俺達のために!そして…」「ええ!」「応!」「うむ!」

「「「「ラオモト=サンのために!」」」」

【フォー・ニンジャ・イン・フォー・デイ・レジャー】#1 終わり。
【フォー・ニンジャ・イン・フォー・デイ・レジャー】#2 に続く。

◆#1終了時点での各ステータス◆

◆グリムファイバー (種別:ニンジャ)        PL:どくどくウール
カラテ       3    体力      4
ニューロン     5    精神力     4
ワザマエ      4    脚力      2
ジツ        0    万札      8
DKK       0    名声      0
回避        5

◇装備や特記事項
◆ジツ:なし
◆タクティカルニンジャスーツ:強化ケブラー繊維の最新ニンジャ装束、【体力】+1
◆LAN直結型ハンドガン:遠隔武器、連射2、時間差、ダメージ1
◆オーガニックスシ:【体力】を3回復(使い捨て)
◆生体LAN端子:【ニューロン】判定時にダイス+1個、ハッキング時にさらに+2個

生体LAN端子をインプラントしたハッカーニンジャ。群青色のボディスーツタイプニンジャ装束を
身にまとい、フード付きメンポで頭部をすっぽりと覆い隠している。カラテのワザマエは並だが
生体LANのおかげもあってハッキングはそこそこ得意。女性。そのバストは平均的である。
◆ラピッドビート (種別:ニンジャ)        PL:どくどくウール
カラテ       4    体力      4
ニューロン     4    精神力     4
ワザマエ      6    脚力      4
ジツ        0      万札      33
DKK       0    名声      3
回避        7

◇装備や特記事項
◆ジツ:なし
◆オーガニックスシ:【体力】を3回復(使い捨て)
◆ヒキャク:【脚力】+1、回避ダイス+1個

黄褐色の作業着めいたニンジャ装束と、飾り気のない自作金属メンポを身につけた長身痩躯のニンジャ。
危ない橋は渡ろうとせず常に慎重に堅実に仕事をこなす、ややハングリー精神に欠ける男であったが
とある単独緊急ミッションの際にシックスゲイツのカラテと誇りの凄まじさを知り、精神的に成長した。
◆スライサー (種別:ニンジャ)        PL:どくどくウール
カラテ       6    体力      6
ニューロン     3    精神力     3
ワザマエ      5    脚力      3
ジツ        0      万札      7
DKK       0    名声      0
回避        7

◇装備や特記事項
◆「ノーカラテ・ノーニンジャ!」適用
◆伝統的ニンジャ装束:回避ダイス+1個。

中国地方の山奥でひたすら鍛錬を重ねていた男にニンジャソウルが憑依。ニンジャカラテ求道者となる。
噂を聞きつけてやってきたソニックブームとのカラテの末に敗北し、彼を越えるためソウカイヤ入りした。
クロスカタナ紋が刺繍された純白の新品ジュー・ウェアに年季の入ったボロボロのブラックベルト。
そしてブラックマーケットで購入した強靭な鋼鉄ブレーサーとレガースが彼のニンジャ装束である。

(4部に登場するヤナマンチ社所属同名ニンジャとは無関係です)
◆ユコバック (種別:ニンジャ)        PL:どくどくウール
カラテ       2    体力      3
ニューロン     5    精神力     6
ワザマエ      3    脚力      2
ジツ        1      万札      4
DKK       0    名声      0

◇装備や特記事項
◆ジツ:カトン・ジツ
◆家族の写真:彼がこのアイテムを「使用」することはない
◆クロームハート:【体力】+1、【精神力】+1

萌黄色ニンジャ装束と朽葉色メンポを身につけた老ニンジャ。元はカネモチ・ディストリクトに住まう
ネオサイタマでも名の知られた資産家であったが、遺産狙いの娘夫婦によって暗殺されかけた際に
ニンジャソウルが憑依。無意識のうちにカトン・ジツで娘夫婦を焼き殺して返り討ちにした。

(2部・3部に名前だけ登場するソウカイヤ及びアマクダリ所属同名ニンジャとは無関係です)
◆アジト共有物
木人:サイズ小:カラテトレーニングに必要
香炉:サイズ小:ザゼントレーニングに必要
偉大なるショドー:サイズ極小(壁掛け):カラテトレーニングを強化する
                               美しい字で「風林火山」とショドーされている

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