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【エッセイ】説明の少ない美容師さん
月に一回くらいは行けるようにしたいなと、終わった後は思うのに、半年近く行かないことがあるのが美容室だ。本当はもっと行きたいけれど何しろお金がかかるし、担当の美容師さんは人気のようで予約が取りにくく、行ける!と思った日は完全に埋まっていて、その先の予定を空けてまでと思ってしまい、足が遠のく。
少し前から白髪が目立つようになってきた。いつもいろいろ染めていたので気づかなかったが、明らかに増えてきている。そこに対して落胆はなぜかあまりない。別に好ましいわけではないけれど、こんな感じで白髪って気づいた時には増えてるんだぁ、なんて思ったりする。
私の母は美容師だった。結婚した時には辞めていたので仕事をしているところを見たことはないが、中学生高学年になるまでは家で切ってもらっていた。ただずっと癖のある髪が嫌いで、卒業を前に矯正をかけ真っ直ぐにした。それからは上京した兼ね合いもあり、美容室に行くようになった。
何個かの美容室を今まで渡り歩いたが、ここ数年はいつも同じところで切っている。
美容室での問題はコミニケーションの取り方により、大きく左右されると思っている。私はどちらかというと慣れるまであまり会話をしたくない方だ。雑誌も読むが美容師さんの手元を見るのが好きなのだ。
美容師さんに髪を切ってもらっている時は、まるで自分が貴族にでもなったような気になる。私は座っているだけなのに、みるみるうちに整っていく。カラーの時は数人に囲まれて、何人もの手を借りて色をのせていく。カラー剤が馴染むまで待つ時間には、飲み物を持ってきてくれる。普段は自分でするシャンプーも、人にやってもらうのは全く違う。こちらの様子を伺って力加減を調整してくれたり、果ては肩周りのマッサージまでしてくれる。それなりの対価は払っているとはいえ、こちらは座っているだけで、大袈裟だがどこか違う世界にいるような気になる。
その美容師さんは明るいのに施術の時は職人の眼差しをしている。骨格に合わせてこちらの少ない要望だけでいつも思った通りに仕上げてくれる。
もちろん会話を楽しみたい人には、そのお客さんに合わせた対応をされていて、見ているこちらも幸せな気分になる。
大絶賛している割には最近全く行けていないが、来月の給料日を過ぎたら行けるように、今回こそは先の予定を組んでしまおうか、と思っている。