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去年の話。失語のある患者さん。

"運動性失語"ってみなさん分かりますか?

運動性失語はブローカ失語とも言われるんですけど、まあ簡単に言うと、人の言葉や文字は理解できるけど、言いたいことが言葉にならないということです。この運動性失語を持つ患者さんは、失書という書く能力が障害される方もいて、僕が去年の実習で受け持った患者さんも失書がみられました。

上で述べた運動性失語。言葉を思うように伝えられないって、まるで僕の吃音みたいですね。

患者さんとお話してる時、なにか話そうとしても、モゴモゴってなっていて(医療ではジャーゴン様発語とも言われたりします。)上手く聞き取ってあげることができなかったんです。でも、患者さんの辛さは痛いほどわかって、ついつい自分も吃音があってスムーズ話すことが苦手だってことを伝えたんです。そしたらね!すーーーっごく大きな相槌も何回もしてくれたんです笑 もう絶対忘れない!笑 

最初の方は患者さんも話すことを諦めている感じで発語しようとする様子も見られなかったんだけどね、吃音があることを伝えてからは患者さんも、口を大きく開けて頑張って頑張って自分の気持ちを伝えようとしてくれた。嬉しかったなあ。

あ、書き忘れてたけど脳梗塞を発症して後遺症として運動性失語が残ってしまった患者さんなんです。あまり詳しいことは書けないけどね!プライバシープライバシー!

日々の関わりとしては、温かいタオルで口角のマッサージをすることを毎日の日課にしてました。患者さん歩くことはスムーズだけど腕だけが軽い麻痺が残っていたので、髭剃りとか歯磨きとかもお手伝いしてました。食事は時間をかけてゆっくり自分で食べれてましたね。途中から患者さんが疲れて食事介助を必要としたりもしていましたが。軽い麻痺というのは、医療用語で言うと、両上肢MMT4 ですね!難しくてごめんなさいね!

ここからが自分としては本題なんですけどね、失書がある患者さんだったので、書字の練習を看護計画に入れたんです!1人の患者さんと長く関わることのできる学生だからできること!忙しい看護師さんはなかなかできませんからね。

なんでやったかというと、単純に字を書く練習にもなるし、「ペンを持って手を動かす」ただこれだけでも腕のリハビリになるんです!腕をスムーズに動かせるようになると、食事も髭剃りも歯磨きも全部自分一人でできるようになるかもね!良いことづくし!!笑

毎日紙とボールペンを持って行って練習したんですけどね、最初は読み取ることができない字ばかりだったなあ。でも毎日毎日練習していくうちに、少しずつ読み取れる字が書けるようになってきて患者さんも嬉しそうに笑ってた。


そんなこんなで迎えた実習最終日。なんとなんと!患者さんの方から、字を書きたい!ってジェスチャーで伝えてくれたんです!もう涙が出るほど嬉しかった!!

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これがその時の紙です。もう家宝です。捨てられずにずっと大切にしています。

農家をしていた方だったから好きな野菜とか、趣味とか色々書いてました。そしてね、一緒に字の練習をしていたらね、患者さん泣いてたんです。色々聞いていたら、今日で実習終わってしまうのが悲しかったみたいで。でもその患者さんその日転院の日だったからどっちみち最後の日だったんだけどね。

でもね、患者さんからしたら、何日か前にいきなり学生です。って病室に入ってきたどこの誰かも知らない男。って感じだっただろうに、たった10日間でここまで思ってもらえるくらいに関わることができてたんだなって、少し自分の関わりに自信が持てたよね。

時間だけが経って患者さんの転院の時間になった。患者さんは家族、施設の人、看護師、自分とたくさんの人に付き添われながら車椅子でエレベーターの前まで向かった。そこでね、患者さん泣きながら、僕の方に手を伸ばしてくれたんです。口を開けながらね。言葉は出なかったから何を伝えようとしてくれていたのかは、分からないままなんだけどすごくすごく嬉しかった。

「10日間ありがとうございました。リハビリ頑張ってくださいね!僕も頑張ります。応援していますね。」患者さんの手を握ってその場でしゃがみながら伝えた。泣くのを我慢しながら。

とっても学ぶことがたくさんあった実習だった。2つ前のnoteにも書いた「自分なりの看護」ってこういうことなのかなって思えた。

今まで吃音をマイナスに捉えてきて、正直今もマイナスに捉えているけど、その実習だけは、吃音でよかったと感じた。吃音を持っていなかったらここまで患者さんの苦痛を分かってあげられなかったと思う。

その日の受け持ち看護師とのまとめで「○○くんだからこそできた関わりだったと思うし。最後の患者さんの涙がその関わりの全てを物語っていたと思うよ。良い関わりできていたと思います。」って言ってくれた。嬉しかった。やっぱり看護師になりたい!って思った笑

では最後に、その患者さんとの関わりの考察で書いた文を少しだけ紹介しますね。

「失語と付き合っていく長い過程の中で、目先の改善を目指すだけではなく、一定の期間が経ったその先で、A氏が失語があることによって消極的にならず、自分らしくコミュニケーションを図れているよう、A氏に残された能力を最大限に生かし、積極的に日々を過ごしていけるよう関わっていくことが看護として大切であると学んだ。」


患者さん元気にしてるかな? ではまた!!


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