車好きとして/狼魔

車好きとして
狼魔

〈はじめに〉

 これは自身を車好きと認知している人間が個人的な体験をもとに車好きライフについて好き勝手考えたことを記したものである。よってなんらかの社会問題の分析や解決、または学びがいのある専門的な知識などは期待しないでいただけると幸いである。とはいえ、この随筆が車に関係する新たな遊びや楽しみを見出すための小さなきっかけになってほしいという希望もある。運転歴は約一年で運転の頻度は平均して週一日程度である。


〈意外と気軽に車に乗れる環境〉
 
 車の運転は高校を卒業してから一番やりたいことだった。しかし、教習所に通って普通自動車の運転免許を取ったのは大学一年の授業がすべて終わった休暇中だ。今考えれば、せめて受験終わりの高校生がいない夏休みにでも取ればよかった。免許を取らない理由ばかりが頭をよぎり、入学直後は免許を取るのをためらっていたのである。都会は電車が発達しているから車は使わない。車を買ったら駐車場代や保険代がバカにならない。すぐに運転するわけじゃないのに免許を取っても後で運転の仕方を忘れてしまう、などなど。

 実は右のようなことはただの思い込みにすぎない。そもそも車に乗ることが車を買うことを意味するのではなく、カーシェアやレンタカーを利用すると車を所有しているのと同じくらい日常的に運転ができる。そのことに気づいたときに大学一年が終わろうとしていたのは視野が狭かったせいである。

 カーシェアとは、会員登録しておけば付近の駐車場などに配置されている指定の車をネット予約して使うことができるサービスである。レンタカーと違って店員と顔を合わせることはない。料金の支払いは車を返却してからクレジットカードで引き落とされる。カーシェアの車は意外とたくさん配備されていて、例えば獨協大学前駅から徒歩5分圏内だけで五台以上あったりする。昼夜問わずその場の気分ですぐ予約して乗れることが魅力である。

 所有と違ってカーシェアやレンタカーが良いのは、車を使った分しかお金がとられないことである。車を所有するとなると、乗らずに置いておくだけでも毎月駐車場代と任意保険料がかかる。我々学生のように若い人、特に二十歳以下の人にとって特に負担になるのが任意保険である。車の種類や保険の充実度によっても変わるが、おそらく毎月一万円から二万円ほどは取られる。それに加えて毎月八千円ほどの駐車場代がかかるとすればそれだけで車は持ちたくなくなってしまう。カーシェアやレンタカーの場合は駐車場代はないし、保険料も料金に含まれている。多くの場合、レンタル代に追加料金を払うことで保険をより充実させることができるが、それについても一度の利用につき数百円や千円、二千円で済む場合が多い。その値段は初心者マークのド素人が運転する場合でも変わらない。カーシェアやレンタカーにかかるお金は車を所有するのと比べれば破格に安いのだ。

 以上、無理して車を買ったりしなくても運転できるという道筋が見えたとたん、できるだけ早く運転免許を取ろうという衝動にかられた。


〈教習所〉

 土地に馴染みがあるという理由で北陸の実家に帰って教習所に通った。二月だった当時は受験終わりのせいだろう、教習生はほとんど高校生で、しかもその数が半端でなかった。

 初めての運転には緊張がつきものだが、教習が始まったときはすでに楽しみの方がまさっていた。事前に実家近くの駐車場を借りて車の動かし方のいろはを予習しておいたのだ。そのせいで教官から、君は前に車を運転していたのかと聞かれることがあった。昔は無免許のまま農道を車で走って遊ぶような人も少なからずいたのだろうと思う。

 二〇一八年二月は北陸が記録的な豪雪に襲われた時期で、大動脈幹線道路である国道八号で大規模な立ち往生も発生した。そんな中でも筆者はのんきに路上教習をしていた。通った教習所は立ち往生が起こった地域よりも南に位置し、大雪が最も深刻な地域ではなかった。だから、遠くには立ち往生で動けない人もいるんだなあと想像しながら国道八号を走っていた。しかし、立ち往生こそはなかったもの教習で走った道の中には雪で覆われて走りにくい道はたくさんあった。深いわだちのせいでハンドルから手を放しても車が勝手に道路に沿って曲がっていくような場所もあった。暗い中吹雪で視界が悪いこともあった。ここまで過酷な状況で運転することはこの先ないだろう。そういう意味では有意義な経験になったのかもしれない。


〈せっかく運転するなら断然マニュアル車〉
 
 運転免許を取る際に誰もがぶつかる選択がある。マニュアルかオートマか、だ。いや、正しくは普通に免許を取るかオートマ限定で取るかという問題であり、文面だけ見ればマニュアル車に乗る方がむしろ基本なのである。しかし、現状はそうではない。聞くところによるとオートマ限定で取る人が六割ほどに拡大しているらしい。それは免許を取った後にマニュアル車に乗る機会が限りなく少ないことが関係している。新車販売台数の九十九パーセントはオートマと聞くし、実際カーシェアではマニュアル車は一台も見つからない。 

 かく言う筆者はどちらの免許を選んだのか。実は限定なし、すなわちマニュアル車も運転できる免許を取った。この先、自ら選びさえしなければオートマ車しか乗る機会がない中でなぜマニュアルを選んだのか。それはマニュアル車の運転そのものが楽しいからである。

 マニュアル車では自分で行わないといけない操作をオートマ車は自動でやってくれる。後者の方が進歩していると思われるかもしれないが、楽しみについて言えばオートマ車はそれを半減させる。決して楽しくないと言いたいのではない。車を操作するというだけで楽しい(ただし渋滞を除く‼)ことには間違いない。しかしオートマ車はその楽しむべき操作がマニュアル車よりも少ないのである。また、オートマ車はマニュアル車と違ってアクセルの開きやトルクの大きさなどを読み取るがためにアクセルを踏んでから車が反応するまでのラグがマニュアル車よりも大きくなる。よりダイレクトな操作感というのもマニュアル車の楽しみの一つだ。


〈ドライブする場所〉

 ドライブしがいのある場所を探すのにまず調べるのがインターネットである。しかし、ただ「関東 ドライブ」などと検索すると思い通りの情報が出てこない場合が多い。なぜならドライブということばの意味が広いからである。観光地まで車で行って帰ってくることも、買い物に車を使うこともドライブである。また、ドライブデートなどというときにはカップルが車に乗ってさえいればどこを走ろうがどこへ向かおうがドライブになってしまう。ドライブに行きたいと感じるときは自分が何を求めているのかをはっきりさせたほうがよい。

 筆者がドライブに求めるのは多くの場合、走りを楽しむことである。必ずしも観光名所には行かなくてもよいが、気持ちよく運転できる景色があるとなおよい。だから信号だらけで渋滞しがちな道なんかは走って最悪な場所なのだ。また、快適に走れる道でもカーブが続く方が運転は楽しい。楽しく走れるカーブが続く道はワインディングと呼ばれる。大学周辺からアクセスが良いところだと、茨城県の筑波山周辺が良い例だ。
 

〈一緒にドライブに行く人〉

 先ほど述べたドライブの趣向のせいで、一人で行くことが多い。自分が運転を楽しむことのために同乗者をつきあわせるのは気が引ける。下手に人を誘っても思い通りの道を走れずにいい気持ちになれないこともないとは言えない。また、自分が運転する車に人を乗せるというだけでも気を使うものである。普通に走るだけでも揺れを減らすために加減速やハンドル操作に慎重になってしまう。事故って同乗者を死傷させたら責任は取れないという怖さもある。


〈おわりに〉

 自動車通学禁止で、自動車に関係する部活・サークルがない獨協大学では車に接する機会は少ないかもしれない。しかし、車は一生の趣味にもなり得る。ぜひ同じ楽しみを理解できる人が増えて欲しいものである。

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