「鍵」
以下、作文の練習として「鍵」というテーマで800字60分以内の制限で書いたものです。(2019/8/12)
キャッシュレス化に反対する人の主張として「現金という実体を伴わないと、使っている感覚がなくて使いすぎる可能性がある」というものがある。私はカード等の利用履歴の確認で把握できるためその意見には納得しないが、「鍵」については当てはまるかもしれない。昔、鍵付きの箱をもらい、ワクワクしながら何を入れるか考えたり、家の鍵を持って登校した時に、重大な任務を任されたようで身が引き締まったりした経験がある。
最近は、鍵をかける対象が増え、人々は便利さを求め、鍵の形態が変化し続けている。物理的な鍵は不必要でカードやスマートフォンが代わりとなるものが増え、電子機器もパスワードから生体認証へと変わりつつある。もはや鍵を持ち運ぶ必要がないどころか、パスワードを覚えて入力する手間も省け、身一つであらゆる鍵を管理できる時代になる。次々と進化する便利さに慣れ、少しでも手間が増えると今まで以上に面倒に感じてしまう。
多くの場合、利便性と安全性はトレードオフだ。セブンペイの不正利用問題は、利用者の登録時の利便性を優先しパスワード管理が甘くなった一例だ。個人でも、複数のサービスでパスワードを使い回したり入力を省略する設定にしたり、楽を選ぶ人は多い。物理的な鍵では目視できた、鍵をかける対象への意識が、目に見えないせいで低下している。
その影響か、成功の『鍵』の重要性も軽視されている。本来、試行錯誤の末に体得できた様々な秘訣が、検索一つで手に入ることが当たり前になっているからだ。その鍵に隠された苦労や努力をおろそかにしては、本来の力を発揮できるかわからない。
人々の暮らしを便利に、豊かにするIT化は、利便性と安全性を同時に向上させることもできるはずだ。その最適な活用に向けて鍵を握るのは、利用する側と制度を設計する側双方の意識と理解だ。自分が扱う「鍵」に託されているものを意識し、大切にしたい。
今回は、物理的な「鍵」(パスワードとか)に焦点を当ててビジネスライクな文章を書きましたが、同じ「鍵」というテーマでも、今回少しだけ触れた”成功の鍵”という秘訣・キーファクターみたいな面でも書けそうで、面白いですよね。できたら挑戦してみたいと思います。