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ゼロ年代物書き盛衰記〜ゼロ年代に小説家商業デビューした私だが〜その2「ライター業の仕事先とのあれこれ」

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ゼロ年代物書き盛衰記〜ゼロ年代に小説家商業デビューした私だが〜その2「ライター業の仕事先とのあれこれ」


※「12年前のライター業」
あるきっかけで、自分が昔やっていたライター業が、現在はすっかり待遇が変わってしまっていることを知った。今もし自分がライターであったら、とても生計が成り立たないレベルの報酬と仕事内容であるようだ。
そこで、時代の1つの証言として、12年前のライター業の実例を書きとめておこう。


(2)2009年〜2010年 ライター業の仕事先とのあれこれ

筆者は、2008年からライター業を始め、2011年ごろには講師業と作家の方にほぼ移行した。だから、ライター業をやった期間は3年弱だ。
それでも、あの当時のライター業の実態と、現在、耳にするライターの仕事とがずいぶんかけ離れてしまったように見える。
今現在、ライター業でやっている人々に、何らかの参考になれば、と思い、記録しておく。

さて、前回、ライター業を手がけてすぐの頃のエピソードを紹介したが、その後、ライター歴1年の筆者は、案件を次々とこなせるまでに成長していた。
2009年には特に案件を複数抱えて、同時にある大学の非常勤講師として、「ライター入門」と題した講義を半年、担当した。
大学生相手に、現役ライターとして実務面のコツをレクチャーするようになったのだから、名実ともにライターと認められたのだと言っていいだろう。

その中で、トラブルはもちろん多くあったが、トラブルをうまく解決した事例も、そのまま生きた教材として、ほぼリアルタイムで大学生に伝授できたので、かなり実戦的なためになる講義だったはずだ。
あのときの学生さんたちの中から、1人でもライター業についた人がいたら嬉しいのだが、その後の消息はわからないので、もしこの記事を見て、2009年度、2010年度に尼崎市のS学園女子大学で「ライター入門」という講義を受講した人がいたら、ぜひ連絡してほしい。

さて、そのほか、今回ご紹介するのは、ゴーストライティングの実際と、取材記事ライティングの例など、さらにはライター業から派生した講師案件や、ビジネスツールの営業に関係した際の体験など、多岐にわたるライター体験を紹介しよう。


⒈ トラブルをうまく解決した事例

(1)メールやりとりのトラブル例1
【ゴーストライターの納品トラブルのケース】
1)
メール1(K→D)
Dさま
いつも大変お世話になっております。
Z社のKでございます。
11月新規に関しまして、小メニューの文章が途中で切れてしまっている部分が多数ございました。
こちら早急に修正していただきたく存じます。
また全体的に、女性的な表現が非常に多い部分や、小メニューの内容とテキストが一致していない部分が多数見受けられました。
大変恐れ入りますが、修正をお願いしたく存じます。
必ずトーンマナーに従って記述をお願いいたします。
ライトな口調では無く、サイトの語り手をイメージして下さい。
期限
10月3日まで(こちら厳守となっております)
宜しくお願いいたします。

※この件について、DはKに電話連絡した。Kは状況を調べて後ほど返事するとのこと。

2)
メール2(K→D)
Dさま
いつも大変お世話になっております。
Z社のKでございます。
先程ご連絡いたしました、11月新規テキストに関しましてですが、小メニューの文章が切れてしまっていた事につきましては原因が分かりましたので、こちらは問題ございません。
表現やテキストの修正だけお願いいただければと存じます。
大変恐れ入りますが、宜しくお願いいたします。

3)この件についてのDの対応
メール2のあと、念のため、Z社の別の担当者に確認したところ、「Z社の方でデータ処理する際のトラブル、あるいはミスが原因だった」と判明。しかも、Dが過去に納入した原稿は、同じ原因で、ずっと途中で切れていた。それなのに、過去の案件の際、Dが電話やメールで、納入原稿について、問題ないかどうか確認した際には、「特に問題はない」との返答だった。

4)このケースの問題点と解決法
イ)ライターが納入した原稿について、問題があったのに何も伝えないことで、ライター側が仕事の結果を確認しようとする意志を事実上無視したこと。

ロ)社内のミスだったにもかかわらず、確認もせずにライター側に修正を求めたこと。

ハ)修正を求める言い方(メールの文面や、電話での応対も含めて)が、威丈高に感じられること。

【解決法】→
a)メールでのやりとりでは、らちがあかなかったので、電話で問い合わせたのが正解だった。

b)あるいは、直接出向いて相談する方がベター。

c)こういうトラブルを未然に防止するには、担当者一人だけではなく、上司、あるいは別の担当者とCCでメールのやりとりをして、連絡ミスを防ぐ方法がある。


(2)メールやりとりのトラブル例2
【ゴーストライターの受注トラブルのケース】
1)
メール1(S→D)
Dさま
お世話になっております。
今回は、大学情報というコーナーの執筆について、ご相談です。
「大学情報」にて、大学入試の小論文対策を企画しています。
それにあたり、Dさまにお願いしてみようかと検討しております。
高校の国語教諭の経歴をお持ちでしたので、お願いしてみようかと思っているのですが、以下の内容を確認いただき、資料等に不安があったりする場合は、
お願いできないこともございます。
確実にきちんとしたものをお出しいただける場合にのみ、お願いしたいのです。
厳しいことを申し上げるようですが、最近、ネット上でも十分データが集まる時代ですよね。その中で、ネットではなく、塾タイムスを活用してもらえるようにしていかなければいけないのです。そのためには、専門の方の力をお借りする必要があるのです。
それから、前回、小学生の原稿をお願いいたしましたが、見本誌をご確認いただければわかるように、一部、ごっそり内容が変わっているところがございます。
これでもまだ、先方から納得はいただけていないのですが、
「文章の羅列だけで、何をどうすればいいのか、というのがわからない。これでは小学生にはもちろん、中学生にも伝わらないよ」とのことでした。
最初に文章をお返ししたときにも説明をさせていただいたと思いますが、文字数の関係とはいえ、簡潔すぎて内容が見えないもの、「で、これはどう学習すればいいの?」と感じるところが多々ございました。
削るところは削っていただいてかまいませんが、初めて目にする人(特に生徒)がパッと見て、理解できるようにしていただきたいのです。
その点、ご留意いただけますでしょうか。
……前置きが長くなりましたが、以下、大学情報の内容です。ご確認ください。
(中略)
ご不明な点がございましたら、ご連絡ください。
もし、執筆いただけそうであれば、9月25日(金)原稿締切となります。
ご返答お待ち申し上げております。可能な限り、週明けまでにご連絡いただけると助かります。
どうぞよろしくお願いいたします。

※DはSにメールで受注承諾の返事を出した。

2)
メール2(S→D)
Dさま
お世話になっております。
こちらこそ、早々のご返事ありがとうございました。
それでは、お願いしたいと思います。
締切なのですが、上司がチェックしたいとのことで、
少し早めていただきたいとのことです。
来週いっぱい、もしくは14日頃でお願いできますでしょうか。
ご返事いただけましたら幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。

3)
メール3(D→S)
拝復
D社
S様
ご連絡恐縮です。
締め切りを14日までに変更とのことですが、当初の25日より10日
以上早められては、スケジュールが厳しいです。
質問ですが
1)これは、完成原稿を14日までに、という意味でしょうか?
そうでしたら、今回は、申し訳ありませんが、時間的に無理ですので、
お引き受けできません。
2)あるいは、下書き的な段階でもよいのでしょうか?
それなら可能かと思います。
質問1か2のどちらかによりますので、決めていただけましたら従います。
よろしくお願い申し上げます。
手短かで失礼いたします

4)
メール4(S→D)
Dさま
お世話になっております。
ご質問の件ですが、
連休が入っているため、こちらとしても悩むところなのです。
申し訳ないです。
ご質問いただいているのに、失礼ながら質問させていただきますね。
25日より前でしたら、いつごろであれば完成原稿をいただけそうでしょうか。
また、下書き的な段階、というのは、どの程度の段階でしょうか。
・書く内容の案
・こういうことを書く、という確定した内容
・だいたいの分量や内容が固まった状態
・推敲前
…と、段階によって、変わってくると思いますので、
お忙しいところすみませんが、
ご回答いただけますでしょうか。

※メール4について、DはSに電話で確認した。

5)
メール5(S→D)
お世話になっております。
こちらこそ、不躾なお願いをいたしまして、申し訳ございませんでした。
以下で、進めていただきたく存じます。
一応、18日以前において推敲段階での確認、も付け加えさせてください。
どうぞよろしくお願いいたします。

6)このケースの問題点と解決法
【問題点】Sの最初のメールの時点で、あまりに失礼な書き方のため、Dは受注する気になれなかったが、しぶしぶ承諾した。するとSは期日を10日以上早めるという条件の改悪を一方的に伝達した。Dは断ったが、Sはさらに受注を求めてきた。
【解決法】メールのやりとりが、最初から感情的な書き方で、双方の意見が食い違っていた。電話で相談して、双方の考えをやりとりして、条件に折り合いをつけたことが解決につながった。


⒉ ゴーストライティングの実際

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土居豊:作家・文芸ソムリエ。近刊 『司馬遼太郎『翔ぶが如く』読解 西郷隆盛という虚像』(関西学院大学出版会) https://www.amazon.co.jp/dp/4862832679/