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「霜降り明星のオールナイトニッポン0」で中学のスポーツテストを思い出した

 6月19日の「霜降り明星のオールナイトニッポン0」は、神回でした。"神回"なんて言葉はあまり使いたくはないけれど、でも神回だったんだから仕方ない。
 毎週必ず聴いてるわけでもないし自粛生活になってからは聴く回数も減っていた(電車や徒歩の移動時間に録音したのを聴くことが多い、つまりリアルタイムで聴いてない)くせに、週刊誌に記事が出た直後だからといって今夜だけ聞くような奴らに気を遣った放送にならないといいな、などと熱心なリスナーぶって心配していた自分を引っ叩きたい気持ちです。霜降り明星をナメるなよ、と。

 マジでエグい。"えぐい"という言葉を良い意味で使うのには抵抗あるけれど、でもエグかったですよあれは。スキャンダルになんて一切触れずに、いつもは番組終盤にやるハイテンションのコーナーを2時間ぶっ通し。とにかく笑った。大笑いしました。
 番組冒頭、そのコーナーの曲(アグネス・チャンの「ポケットいっぱいの秘密」)のイントロがかかったとき、この歌が番組終了までずっと繰り返し流れ続けることになるなんて、想像もしなかった。だって普段は一曲分、3分ちょっとのコーナーなんですよ。3分ちょっとやるだけでもハイカロリー(それゆえ一度は終了したほど)で、だいたいコーナー後には疲労の色を見せてる(聞かせてる)のに、それを2時間。短距離走のペースでマラソンを走り切った二人には、カッコ良さすら感じました。

 ケビノリくん(仮名)はそうじゃなかった。

 中学校の同級生の話です。スポーツテストの最終種目、1500m走。奇数のクラスと偶数のクラスに分けられて、後発の偶数組だった私は今すぐ豪雨でも降って中止になればいいのにと思いながら先発の奇数組がスタートラインに並ぶのを眺めていました。体育教師が笛を吹き、スタート直後、ケビノリくんは猛然とダッシュしてトップに立ったのです。運動音痴ではないけれど決して体育で目立つようなタイプではない、ソフトテニス部のケビノリくんが、です。
 ソフトテニス部というのは、運動部には入っておきたいけれどサッカー野球バスケは小学校からやってた人には敵わないしバレーは痛そうだし卓球は地味だし陸上は孤独だし、みたいな消去法で入部する部活です。異論は認めますが、少なくとも私はそうでした。
 そんなソフトテニス部の中でも決してトップクラスではないケビノリくんが他の運動部のエース級の奴らを大きく引き離し先頭を独走する姿なんて、想像もしなかった。ただし、一周目だけでした。
 その後みるみる失速して本来いるべき真ん中あたりの集団に収まりそのままゴールしたケビノリくんは、ソフトテニス部の仲間から何故ダッシュしたのか聞かれてこう言いました。

「モテたかったから」

 想像の範囲内のたいして面白くもない答えに苦笑するみんなと一緒に私もケビノリくんを笑ったけれど、今思うと少しうらやましいです。
 呆れるくらいのスタートダッシュをかました人にしか、そのペースのまま走り抜けるという偉業達成の可能性を手にすることはできません。かませなかった人にできるのはせいぜいラストスパートくらいで、それすら億劫がってやらずに生きて来たなあ、と思わぬきっかけで自分の人生を反省した私は、次に何かを始めるときはスタートダッシュをかまそうと思いましたとさ。

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