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2024年・私なりの中小企業診断士

※今日のnoteは2024年12月28日のXのスペースをダイジェストで書いたものです。


2024年が終わろうとしています。
人それぞれ、いろいろあったと思います。
私も中小企業診断士を生業として独立開業するなど、いろいろやりました。

「北海道各地から呼ばれるような中小企業診断士になる!」

そう決めて、気づけば月2~3回は札幌圏以外に出張するような日々になっていました。これは、誰にでも与えられる機会ではないと思うので、本当にありがたいことです。

どんな気持ちで向き合ってきたか、2024年締めくくりのnoteに書きます。

地域を知る姿勢で臨む

土地勘のない地域へ行く前に、その町の特色は抑えるべきと思います。
案件がスタートする際、業界のことや業種別審査事典、帝国データバンクを調べるのに加えて、地域の情報も調べ上げる。

なんなら、日ごろ家族で週末出かけるときも、町の雰囲気や特色を観察しています。
相手を知るために町を知ること―それをなくしては、事業者との話についていけません。

実際、2024年は専門家派遣等で全道各地に行きましたが、地域経済の話を良くします。

・近所の建設案件がどうだ とか
・○○という会社の案件が動き出すよね、○○新聞にも出たね とか
・先生、こんな話あるけどどう思う? とか

こういう話についていけるかどうか。
「札幌から来たのでよくわかりません」「関係ありません」では、次から呼んでもらえません。

興味を持って知ろうと思えるか。興味アリの意思を伝えられるか。

分からなくても、知らなくてもいいんです。
話に加わりたいという気持ちで
「え、それってどんな話なんですか?」聞けばいいんです。

聞いても全然恥ずかしくありません。
その地域の経済に詳しい専門家としてお伺いしている訳ではなく、経営に詳しい専門家としてお伺いしているので。

また、当該事業者の支援シナリオを考えた際、事業者の見えている経済圏を抑えておくという目的で、地域に関する話題は水を向けたほうが良いと思っています。

事業者の悩みの多くは売上確保、販路開拓に繋がるものですから、地域の話を引合に改善策の手がかりを探す、ということに繋がります。

また、私は札幌に住んでいます。
北海道内各地に行くと「札幌の方はどうなの?」とか「他の地域はどんなもんかい?」とお会いするたびに聞かれます。

即答できるかどうか、結構大事です。

「いやーよそもあんまり仕事ないですね」
「○○地域はそうでもないって聞きましたねえ」
なんて、自分なりに張ったアンテナから入った情報を、事業者に伝えながら、意見交換しています。

時間がかかるのを厭わないこと

これは、移動時間の話と、信頼関係を築く話と両方の意味があります。

移動時間の話

北海道は都市間が物理的に離れてますから、ある程度は仕方ないです。
よく、本州の地図と北海道の地図を重ねた画像をSNSで見ますが…

例えば、札幌-釧路は東京-名古屋と同程度の距離です。
在来線特急で約4時間、飛行機で1時間弱。新幹線では約1時間半。

私は今年、JRで出張できる地域の案件が多かったので、移動時間中を仕事や読書に充てることができました。

しかし、出張先で複数のアポが入った瞬間、車移動の方が効率よいなんてことは、よくある話です。

出張先の町での移動手段がほとんど無いので、結果的に現地移動のために車移動にならざるを得ないといった具合です。

運転は好きな方ですし、遠い地域こそ学び気づきが多いので、遠隔地のオファーは大歓迎です。
運転が苦手な方は、北海道で独立しないほうがいいです。特に冬道は経験年数関係なく、危ないですからね…

信頼関係を築く話

北海道内と言えど、違う地域から中小企業診断士や専門家として赴く時点で、その地域のことも知らない、うちの会社のことも知らない、という前提で事業者から見られます。

ですから、ヨソモノ扱いです。
同席する公的機関や金融機関の方も「どんな人なのかな」という期待と不安を持っています。

疑っている訳ではないですが、アウェーで始まるくらいに思った方がいいでしょう。

困っていて自分に相談が来たんだ。張り切って助言指導しちゃうぞー!なんて腕まくりしたら、確実に煙たがられます。

ワケあって人の家におじゃまして、お茶まで頂きもてなしてもらったくらいの姿勢でないといけないと思っています。

私は、どんなに厳しい案件であっても、まずその地域のことを学ばせて頂く機会を頂戴しているという感謝の気持ちで臨もう、と決めています。

仮に経営者に落ち度があったとしても、そこに私に声がかかったことに、感謝の気持ちを持っています。
なぜ、仕事を頂いている相手に開口一番「社長、今までなんちゅう経営しているんですか!」と言えるのでしょうか。

余談ですが、地域の事情も踏まえず、事前情報の仮説だけでソリューションを決めつけ、相手の悩みを聞かない専門家は、都市部でも地方でも活躍はできません。

これは専門家の能力以前に、会話・対話ができないという視点で、ビジネスパーソンに必要な技術を学び直した方が良い。

経営相談や専門家派遣だからと言って、専門家が上のようなポジションはありえません。

商談と同じです。対等に話す。
そんなこともできない相手に、事業者が心を開くわけがないと思います。

私は、マイナスの印象から始まるくらいに思っています。
今年、とある生命保険のプランナーさんと出会ったのがきっかけです。
「また保険かよ」と社長から言われることがスタートだと。

「ああコンサルね。知り合いの経営者がひどい目にあったとか聞いたわ」
こういう入口から始まると思った方がいい。
実際、そんな入りで始まって、深くお付き合いしている先もあります。

また、事業者と私との間に信頼関係を築くことが大前提ですが、周辺の関係者との関係構築も大切と考えています。

時に協力する間柄ですし、専門家派遣だと金融機関から案件を持ち込んできている場合もあります。

ですから、金融機関の方針を巻き取ってアドバイスを行うこともあります。万一、私の方針が金融機関の方針とズレていると、出口戦略が全体最適解でない、という可能性が出てきます。

だから、根回しみたいな事前調整も、大切にしています。

金融機関と私とで、出口戦略や進め方を個別にMTGすることも、場合によっては行います。

405事業でもなんでもないし、バンクミーティングが控えている訳でもありません。しかし、どこに向かうか合意形成してからやらないと、迷走します。

経営改善や収益力を上げる局面で、金融機関から提案して経営相談を行っている―

そんな文脈なら、資金融通してくれる金融機関は中小企業者や小規模事業者にとって生命線です。
言葉を選ばずに言うと、首根っこを掴まれているようなものです。
ですから、金融機関と方向性を一致させるのは、やるべきでしょう。

よく、サラリーマンは根回しが面倒と言いますが、サラリーマンのほうが、根回しせずやれるんじゃないでしょうか。

案件を進める時、自分の業務品質や責任に関わると思ったら、関係者とのコンセンサスを得て進めるのは当然だと思います。

サラリーマンは、根回しをすっ飛ばしても、上司が役員からメッチャ怒られるか、上司が自分にメッチャ怒ってきて終わるだけです。

でも、中小企業診断士個人や個人事業主という立場になったらそうではない。
次から仕事が来ないという顛末になります。

全部自分で前捌きして、そして自分で巻き取ること

これは、どんな支援案件でも同じことが言えるかもしれませんが、地方では特に必要なことだと思います。

○○の専門家です、という強みをカンバンにしつつも、他の相談にも乗れる力。

中小企業診断士が地方で活躍するには、そういった「総合診療医」「町医者」みたいなスタンスが大事だと思います。

例えば、地方での相談案件の中では
(※全ての案件がそうではありません!)

  • 先生、売上どうやって伸ばしたらいいでしょうか。町の人口は数十年前の半分で、設備もボロボロでね。お客さんも減ってるし…

  • 金融機関、コロナ融資入れまくったので、ニューマネー無理です。

  • 仕入れ値は昨今の物価上昇でどんど上がっていて、赤字もどんどん膨らんできています。

  • 従業員、60歳以上が一番多い。若い人は来ない。自分ももう少ししたら引退かな。

みたいな、総合的に行き詰ってますが…みたいなケースに出会います。
特に、コロナ融資で財務が傷んで(借入が増大している先)、出口のない地方の企業は、このようなケースが多い印象です。

そんな企業、どこから手を付けて良くしましょうかという話です…

こうなると、お悩みを棚卸して、優先順位つけて一つずつ取り組み結果を出すという流れを作るしかない。
ですから、特定分野だけの専門家だけでは太刀打ちできないのです。

これは地方も都市部も関係ないですが、中小企業はリソースが足りないので、日々の業務で手いっぱいの中、改善や改良に避けられる時間と人と能力は限られている。

だから特定分野の専門家がどんなに素晴らしい提案やアドバイスをしても、実行能力が無くてサンクコストになったり、徒労の商談で破談になったりすることは、あり得ます。

そんな制約条件下で、できることは何かを明確にする。そして、事業者が想像できる、実行できるとイメージできるレベルの目標設定をする。

そして、伴走して結果を出すまで見届ける。

だから、出たとこ勝負で「この事業者のツボはここだ」というのが見えた瞬間、自分がそれを巻き取って改善まで伴走することができるかどうかが、大事だと思います。
自分で出来ないと、人に頼まなきゃいけないので、利益は出ませんからね。

そして、真因、本当の課題、1丁目1番地に着手すべきところは、当初思ったところと、違うところにあったりします。

依頼主が「Aという課題、アドバイス欲しい」と言ってきたけど、

ヒアリングや対話をする中で「じつはBの方が優先度大で取り組んだ方がいい」

ということもあります。

目に見えている課題というのは、事業者の中で顕在化している時点で大した課題ではない場合が多いです。
見えているなら、それに対応すればいいだけなので。

専門家の腕の見せ所は、顕在化していない重要な課題を事業者に気づかせて、どう行動の優先度を上げていくかだと思います。

ですから、特定の専門家よりも、いろんな分野について一次的なアドバイスができる、障りの伴走支援ができる、というスタンスの中小企業診断士が、地方で活躍するポイントだと思います。

そのバックに、頼れる専門家の仲間がたくさんいて、自分の守備範囲より深くやりたいと事業者が求めてきたら、そこでリレーすればいいんです。ここまでくれば、向こうも予算を持ってくれます。

他にも、課題が、中小企業診断士のフィールドを超えることもあります。

弁護士さん、税理士さん、社労士さんはじめ、他の士業さんにお願いしなければならないこと、その方の助言・アドバイスが必要な局面もあります。

地方も大都市圏も一緒ですけど、事業者さんによっては士業なんてみんな一緒と見ている方もいます。
「契約書見て欲しい」「節税したいんですが」よく頼まれます。

そんな時、ネットに出ている情報などを伝えながら、変に取り繕わず「ここは法律上、私でアドバイスしたりお手伝いすると問題になるので、士業さん紹介しますね」とお伝えしています。

2025年に向かって

  • 地域について学ぶ姿勢で入る

  • 地理的にも、心理的にも時間がかかることを厭わない

  • 狭く深い専門性だけでは太刀打ちできないから、薄く広くから入って、深みは頼れる仲間にリレーする

2024年、全道各地を走り回って、そんなことが、地方で活躍する中小企業診断士に求められていると思いました。

私はその技術をもっともっと磨いて全道各地179市町村に貢献したいと思います。

読者の皆さま、2025年はより素敵な1年にしましょう!

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