マイリトルゴートを見て -山羊は狼、人間は愚か-
マイリトルゴートをみた。
話題のPUI PUI モルカーを見てみたらシロモちゃん可愛い! になって、毎週更新を楽しみにしている。同じ監督の話だというので見てみた。
凄く面白いな、と思ったし、山羊可愛いけれど、いくつか疑問もあった。
疑問を個人的に最小まで減らすために色々考えたので、備忘のためにノートにかく。
結論からいうと、私は、
「最初に出てくる狼は猟師。ナツキとナツキの父親も人間、山羊たちは狼(野生動物)」
だと思っている。母山羊は人間の毒親ではなく、子育て中の野生動物(母)である。
というのも、いくつか疑問があったからである。列挙する。
・最後に浮かんでくる靴は誰のもの?
(デザインがナツキ父の靴と異なるので、ナツキ父ではない)
・ナツキ目線になったとき、なぜ子山羊たちはメェメェなくのか?
・なんで狼がきた実績があるのに、山羊の家の防犯ガバガバなのか?
(鍵が閂?! スマホある時代に?!)
・どうしてナツキ父は直ぐにナツキをレイプしようとしたのか?
・どうして最後に聞こえるのがヘリコプターの音なのか?
(行方不明のナツキ親子を探すなら、パトカーとかではいけなかったのか?)
・山羊たちの家に落ちている本、(2:43秒あたり)表紙が女性の下着姿に見える。なんでそんな本が床に落ちてる?
・(山羊が人間だとしたとき)一匹目の狼は、子供たちになにをしたのか?
何故そんなことをしたのか?
(姉山羊が鏡を見て傷に気づくということは、外傷が存在している。
ボコボコに殴られて髪の毛刈られた? なんで?)
・(山羊が人間だとしたとき)どうして年齢が結構近いように見える
子山羊が6人もいるのか?
・山羊のお母さん、なんでさいごに虎ばさみ持ってるのか?
っていうことである。ちょっと考える。
先ず、「最後に浮かんでくる靴は誰のものか?」ということについてである。
ナツキ父の靴とは種類が異なるため、候補は3つ。
候補1.「最初の狼の靴」
候補2.「トルク(本物)の靴」
候補3.無関係な人の靴
候補1については映像として見える1匹目の狼の足は素足だが、
トルク(偽物)父も靴あり→素足に変身していたので候補にあげた。
候補2はサイズ感が違うので却下。ラストシーンで靴履いてるし。
候補3は、最後に母山羊が虎ばさみを持っていたことと
関連して、母山羊は「トルク(偽物)」を取り返そうとする人
(警察。最後のヘリ)を狩っており、その人の靴と考えることも可能。
どれを採用するかだけれども、候補3の場合、
「母山羊の虎ばさみは警察を捕獲するためのもので、
既に一度以上は成功しており、
遺体の始末はトルク(偽物)父の遺体の始末と同じく、
石を括りつけるなどして川に沈めること。」
というのがちょっと妄想過多かな~と思うので、候補1を採用。
つまり、「最初の狼も本当は人間だったよ」という示唆と考える。
次に、「ナツキ目線になったとき、なぜ子山羊たちはメェメェなくのか?」である。
というか、「ナツキは人間、ナツキ父も人間として、山羊は本当に人間なのか?」である。
つまり、ナツキ父は人間、最初に出てくる狼も、最後に出てくる靴を関連付けて人間として、「狼は人間」というのに異論はない。でも、だからといって、「山羊も人間」なのか? ということである。
候補1.「狼は人間」ついては「全ての山羊も人間」
候補2.「狼は人間」だが、「山羊は人間ではない」 ※メルヘン
候補1の方がなるほどなあ、と思うこともあるんだけれども、
(ツイッターで見ても、そういう解釈の人が多かった)
候補2を補強する描写もある。
それは、「山羊の子供たちが途中でメェメェ言い出す」である。
途中で明らかにナツキの視点に切り替わるところで、
それまで人間の言葉を話していた山羊の子供たちがメェメェ言い出す。
これは、「ナツキからすると、山羊の子供たちの言葉は理解できない」という表現かな? 受け止められる。
ナツキも、最後まで最初の方は山羊の子供たちの言っていることを
理解しているような(対話が成立しているような)描写はなく、
基本的にはその容貌の恐ろしさから「わけわかんないところにつれてこられて、怖い子供たちに囲まれている!逃げなきゃ!」という風にもみえる。ナツキ父を撃退したあとの、山羊母や子山羊たちとのコミュニケーションも基本的に「抱きしめる」「目を合わせる」というノンバーバルなものであり、「言葉が通じない」という意味で、人間であるナツキと山羊たちは別の存在なのではないか? と考える事は出来ないだろうか。出来るので考える。
勿論、この指摘(言葉が通じない)だけであれば、候補1であってもこの矛盾点を解決できる方法もある。
「トルク(偽物)+トルク(偽物)の父親」と、「山羊たち」の母国語が違う、と考えることである。
のであらためて候補をかくと、
候補1-1.「狼は人間」ついては「全ての山羊も人間」
+山羊の母国語と、トルク偽物親子の母国語は違う
(トルク偽物親子は、山羊の言葉を理解できない)
候補1-2.「狼は人間」ついては「全ての山羊も人間」
+山羊の母国語と、トルク偽物親子の母国語は同じ
(あんま深読みせず、メェメェいってたほうが可愛いので)
候補2. 「狼は人間」だが、「山羊は人間ではない」
候補2も捨てがたいのでは? という話をしたい。
というのは、矛盾が少なくなるからである。
候補1-1でも候補1-2でも、どちらで納得したところで、
「どうしてナツキ父は直ぐにナツキをレイプしようとしたのか?」
(彼のスマホに表示される時間は18:57であり、現在進行形で
人が住んでいる家に忍び込んだ(少なくとも鍵がかかっているのを
こじあけた)なら、とっとと確保して連れてかえって改めて
自宅でレイプ、の方が、彼にとって安心&安全では?
そもそもそんなことすんな!!!!!だが)
「山羊たちの家になんでエロ本が落ちている(2:43秒あたり)?」
「一匹目の狼は、子供たちになにをしたのか?
何故そんなことをしたのか?」
「どうして年齢が結構近いように見える子山羊が6人もいるのか?」
という謎がどんどん浮かんでくる。
もちろん、
「どうしてナツキ父は直ぐにナツキをレイプしようとしたのか?」
→「実の息子を犯そうという頭のおかしい男なので獣欲を制御できなかった」
「山羊たちの家になんでエロ本が落ちている(2:43秒あたり)?」
→「山羊のお母さんはその辺に無頓着であった」
「一匹目の狼は、子供たちになにをしたのか?
何故そんなことをしたのか?」
→「ボコボコに殴って、髪の毛を刈ったりして、いっそレイプとかした。獣欲を満たすためである。」
「どうして年齢が結構近いように見える子山羊が6人もいるのか?」
→「お母さんの女が誘拐してきたから」
等、個別に理解することはできる。
でもこれを繋ぎ合わせると、
「お母さんの女は子供を誘拐するマニア。七人集めたところで、
獣欲に満ちた男が七人の子供のうち五人をボコボコに。一人は死んでしまう。無傷の子一人と五人を連れて帰って来た誘拐犯の女は、エロ本とかが散らかりまくった部屋に、無関係の新しい子どもを誘拐してきて補充する。
午後19時頃、子どもの父親が子どもを助けに来るが、実は自分の息子を性的にみており、その場でレイプしようとするが、子供たちは力をあわせてこれを阻止しようとする。
その時、お母さんがかえってきて男を殺害し、川に沈める。
お母さんはこれ以上自分たちを脅かす人が現れないように、罠をはることにする。
行方不明の親子を探すために、警察はヘリを飛ばしていた。」
こんな感じかなあ、と思う。
でもやっぱりちょっと不協和音が聞こえる。
特に、
「あんなに子供たちを外気に晒さないように丁寧に育てている毒親が、エロ本放置するか?」と、
「いくら獣欲に満ちた男だからって、いつだれが帰ってくるかわからない場所で、息子をその場でレイプしようとするか?」
というところが納得できない。
山羊たちを人間とした場合、あそこは、一応、閂とはいえ鍵がかけられる、現在進行形で7人の人間が住んでいる「家」である。
めちゃくちゃ貧乏で鍵も買えないようなあばら家で、「とても人が住んでいるとは思えなかった」と思った、と考えることは可能だが……。山羊のお母さんはそれなりに身ぎれいだし……。
ので、別の可能性も考えてみたい。
候補2. 「狼は人間」だが、「山羊は人間ではない」 である。
簡単にいうと、「山羊は狼(森に住む野生動物ならなんでもいい。熊とか)」であり、トルク(偽物)は、最終的には、いわゆる「狼に育てられた人間」とか「ターザン」とか、そういう存在になった、みたいな感じで理解したい。
この場合、「第一の狼+ナツキ親子」は人間、山羊たちは動物である。
つまり、山羊たちの住んでいる小屋(やたら汚いように見える)は、
実際には動物の住処=洞穴である。
洞穴に、それまでのキャンパーたちが残していったゴミ(エロ本とか)が放置されている。
この解釈なら、
「どうしてナツキ父は直ぐにナツキをレイプしようとしたのか?」
→ナツキ父の目には、狼の住処は小屋ではなく、洞窟に見えている。
なので、「誰かが住んでいる」とは思わなかった。
ついでにいうと、山羊の子供たちが家具に変身するのは、「洞窟の岸壁に張り付いて、闇に紛れた」という表現。
「山羊たちの家になんでエロ本が落ちている(2:43秒あたり)?」
→あれらは、キャンパーたちが残していったゴミであり、
母山羊(本当は野生動物)は、それがエロ本であることを理解していない。動物なので。
「一匹目の狼は、子供たちになにをしたのか? 何故そんなことをしたのか?」
→一匹目の狼は、人間(プロの猟師)である。
彼は、生業だから、動物(子山羊たち)を狩ったのである。
トルク(本物)は、その場で捌いて新鮮なうちに食べた。
「どうして年齢が結構近いように見える子山羊が6人もいるのか?」
→人間なら、確かに、基本的には一度に一人だけれども、母山羊は本当は野生動物なので、一度に沢山の子供を産んでもおかしくない。
こう考えると、ストーリーはこうなる。
・林に、野生動物が住んでいる。母と子からなる群れである。
・母(獣)が目を離した先に、人間の猟師が現れ、子供たちを狩る。
一匹はその場で食べて、野営をした。
・母(獣)は野営中の人間の猟師を見つけ、寝込みを襲って猟師を殺害。
獣の子たちを連れて帰る。なお、人間の猟師の遺体は、川に捨てる。
・母(獣)は、林に遊びにきていたナツキ親子を発見。
ナツキがたまたまもこもこのパーカを着ていたため、自分の子と
勘違いする。
ナツキ父が目を離した先に、ナツキを咥えて、巣に連れ帰る。
・ナツキに、他の子たちと同じく、「巣からでないように」と言い聞かせる。ナツキ(母山羊の言葉は理解できていない)からすれば、獣の子に取り囲まれ、洞窟にいれられ、なんか鳴いているけれど当然意味が分からないし、命の危機を感じる。逃げようとするが、ごみの一つである鏡を獣の子たちに向けてしまい、獣の子が自分の風貌に気づいて悲しむのを見て、自分の服を脱いでかけてあげる。
・ナツキ父が、ナツキを探して登場。
そこは野生動物の巣であるため、彼はそこが人間の住む場所とは思っていない。自然の一部だと思っている。
そのため、ナツキがただ単に迷子になったものと考え、その場でレイプしようとする。アオカン。
・だが、ナツキ父を野生動物の子が力をあわせて追い払おうとする。
(狼の仮面をつけるのは、彼らが本当は野生の獣であり、その力を発揮している、という意味。狩られる立場=山羊から、狩る立場=狼への変換、成長。仲間(=ナツキ)の危機を契機に、はじめての集団での狩りを本能で行っている。)
ナツキ父はプロの猟師ではないため、一匹目の狼(人間の猟師)のようには子供たちを仕留められない。
母(獣)が帰って来て、成獣の一撃(スタンガン)。ナツキ父を殺害する。
母(獣)はナツキを抱き寄せる。獣の言葉はナツキにはわからないが、ナツキはもふもふに癒されてしまう。
・母(獣)は、案外人間を狩るのは簡単だということで、「狼=人間に狩られる側」から、「狩る側」に転向する。(それまでは、イチゴ=野生で手に入るもの を狩っていた。虎ばさみをもっているのがその示唆)
・ナツキは洞窟で、動物たちと生きていくことにする。
一方、人食いを覚えた危険な動物がいるということで、調査のヘリが林に飛び回る。
こんな感じである。
この場合問題になるのは、
「山羊の母親、スタンガン使ってるじゃん」と、
「最後のシーンで、スマホを使ってる子供がいるじゃん」なのだが、
山羊の母親がスタンガンを使うのは、スタンガンはメジャーな自衛の道具であるから、「動物たちにとっては、自分達に襲い掛かる人間(≠猟師)に反撃するのは、自衛なのである」という表現ととれるし、最後のシーンはスマホを「持っている」だけで使ってはいない。動物がただ単に咥えているのを、あのビジュアルで表現したらそうなった、という風に納得できる。
「動物が鏡みてショックうけるかよw」というのは、なんかエッセイ漫画とかだと変な風にカットされた犬猫が不機嫌、とかショックうけてる、というのを何度か読んだことがあるし、動物だっていやだとおもう。怪我して、見た目が変なふうになったら。
ここまで一気にかいた。
10分とは思えないくらい考えられて楽しかった。
ツイッターを見てると、山羊母=毒親。ナツキは誘拐犯に育てられる…みたいなのしか見当たらなかったけれども、山羊の母親のムーブ、動物としてみれば、子供たちを巣に残して自分は狩りにいく、という、「ダーウィンがきた!」とかでよく見る、普通の動きである。
(人間なら、当然毒親である)
ということで、私は、「ナツキくん、狼少年になっちゃった」説を推したい。
そして、この話を「自然(野生)に逆襲される人間」という文脈の方で見ると、
「人間は愚か…」みたいになれるので、モルカーを! みましょう!!!
シロモ~!!!! レタス食べて~!!!!
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