花畑お悩み相談所 プロローグ
プロローグ
寝る前にスマホを見ないのは、良い眠りのためのお約束だそうだ。
そう言われましても。若い頃からずっと夜型で、寝室へ向かう前に最後のメールチェックをしてしまう。退職した今でも、その習慣は変わらない。富原律子は老眼鏡をかけると、スマホの画面をタップする。
深夜のリビングに、かすかな金属音が届く。家の前の空き地に、マンション建設が始まっていて、今夜は突貫で電気工事をすると知らされていた。
律子の耳からその音がすっ、と消えた。
息は小さく、浅くなり、自分でも手が震えているのがわかる。
差出人は孫の悠人だ。かなりの長文だが食いつくように追う、一回、もう一回、そしてもう一回。
送信予約をしてあったのだろうか。おばあちゃんが夜更かししないようにと、朝六時に届くよう予約して長文メールを送ってきたことは、今までにもあった。
いや、でも、悠人であるはずがない。
中学生になったばかりの悠人は、ひと月ほど前に森林公園の斜面で足を滑らせた。打ちどころが悪くて。
意識不明の状態が続いている。
<続く>
第二話 律子、リンゴをすりおろす
第三話 セールスマン、お尻を向けられる
第四話 悠人からのメール(2)七匹の侍
第六話 悠人からのメール(3)三つのおうち
第七話 律子、小さなお悩みから始める
第八話 悠人からのメール(4)水車小屋の少女
第九話 律子、迷いを捨てる
第十話 セールスマン、はたかれる
第十一話 律子、家族会議を開く
第十二話 律子、お悩みを共有する
第十三話 律子、謎に迫る
第十四話 悠人からのメール(5)狼と少年 〜 律子、狼の正体を知る
第十五話 悠人からのメール(6)てんとう虫星人 〜 エピローグ
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