2024年のマンガ読み④
七夕の国
謎の超能力を持つ主人公。謎の因習を持つ村。4巻かけてミステリーが徐々に明らかになっていく。そのジリジリと謎が解けていく感じに惹きつけられた。岩明均はやはりマンガがうますぎる。
最終話、丸神の人々は相変わらず因習を離れられない。天の川をわたって、カササギ(宇宙人)が来ることを待ち続ける。
幸子も丸神に残った。でも、南丸が天の川をわたってきてくれる。「窓の外」をみてもなお、カササギに支配されずに済むぐらいには、南丸が心を救ってくれたのだろう。
よふかしのうた
『だがしかし』のコトヤマによるラブコメ。だがしかしも途中までしか読んでいないが、一話完結の繰り返しのラブコメから、ストーリー性や葛藤のあるラブコメへの挑戦だったのだろうか。
夜守コウはなんとなくの投稿拒否をしている中学生。生きるハリのなさそうな彼は、夜に屋外に繰り出す。と言っても夜遊びが上手なわけでもなく、公園のブランコに乗ってみたり、自由な時間をもてあましている。
ある夜、そんな彼が吸血鬼のナズナと出会い…という流れ。
吸血鬼と人間は、本当の意味で愛し合うことはできない。
人間→吸血鬼への恋愛感情があれば、吸血によって眷属にされてしまう。
吸血鬼→人間への恋愛感情があれば、吸血によって吸血鬼が死んでしまう。
そんな悲劇的なジレンマのなかで、徐々に想いあってしまうヤモリとナズナ。一足先に、友人のマヒルは吸血鬼との本物の恋を経験する。
中盤から後半にかけては、こういった種族間のジレンマのなかでの恋愛が描かれるシリアスな話だった。
それはそれで楽しめたが、自分は序盤が特に好きだったな。
夜という時間がもつ、開放的で、寂しくて、ちょっと危険な空気間がとても魅力的に表現されていた。
それにコトヤマが描く女性たちはみな可愛く、フェチズムに満ちていた。
夜という時間に、魅力的で異質な女性たちと出会い、ドギマギしながら交流する。この序盤のパートは少年が大人に脱皮しようとするときのドキドキとワクワクに満ちていて、特別な雰囲気があったのだった。
ヒマチの嬢王
元歌舞伎町のNo.1キャバ嬢が鳥取県の米子にあるシャッター街でキャバクラをはじめ、店を発展させていくという作品。水商売の世界の光と影を、バードレディの女性たち(特にユリ)と、醜悪なライバルたちも使いながら描く。
前半はメチャクチャ楽しかったが、後半はライバルとの戦いになる。近くに出店してきた大店舗とか、ホストとか…
で、これがキャバクラのサービスとして戦うことができなくて、相手の妨害や暴力をうまく逃げ切りながら警察を呼ぶとかの戦いになってしまう。諜報戦としても完成度が高いわけでなく、アヤネの飼い犬たちが飛び道具的な活躍をして事態を収拾してしまう。ホストとか色管理ボーイの葛藤とか、イライラする成分をじっくりと描かれることも、自分は楽しめなかった(多少の勉強にはなったが)
前半と後半で評価にかなり落差があるが、自分自身が夜の街でまったく遊んでいないこともあり、未知の世界を覗き見る楽しさは格別だった。
前半だけなら何度か読み返したいぐらい好き。
BLACK LAGOON
期間限定無料で一気に読んだ。アニメは視聴済みだった。
マンガ版(原作)を読んだ結果、かなり良質なアニメ化が行われていたことがよーくわかった。かなり忠実に内容を再現しつつ、バトルシーンをわかりやすく、快感あるものに仕上げていたんだな。
ロベルタ猟犬編まではアニメになっていたわけで、自分が新たに読んだストーリーとしてはハッカー編と黒人狩り編になる。ハッカー編はロックと境遇の重なる女性との相互作用が面白かった。
ロックがロアナプラにおいてどういう存在に育っていくのか、そのマクロなストーリーがしっかり構成されていると感じる。
黒人狩り編はちょっと仕掛けが薄っぺらかったようにも思う。
しかし1話1話にボリューム感があり、出張中の一気読みはキツかったな。
リボーンの棋士
タイトルは手塚治虫の『リボンの騎士』のもじりだろう。だが、リボンの騎士が全然関係なくてもったいなかった。「路傍のフジイ」で鍋倉夫を知り、手を伸ばしてみたが、SPライフをもりもりと消費してしまった。
奨励会で腕を磨くも、3段リーグを突破できないまま26歳になり、プロへの道を閉ざされたいわゆる「元奨」の物語。
奨励会3段リーグの重苦しさに将棋を楽しむことを忘れ、縮こまっていた安住だが、フリーター期間を経験したことで自分が将棋を大好きであることを深く自覚する。そこから将棋とのつながりをとりもどし、アマチュアの世界から細い糸を手繰ってプロを目指すという物語。
人間描写がとても優れていて、惹きこまれることが多かった。良かったのは奨励会同期の土谷である。彼も元奨なのだが、彼の原動力は嫉妬などの暗い気持ちである。これは将棋への愛を自覚し、明るくブレずに前進する安住と対になっている。この安住と土谷がともにプロを目指し、愚直に前進するからこそ本作はバランスがとれていたのだろう。
ストーリーがいい感じのまま、急に展開が駆け足になってしまい、打ち切りエンドになってしまった。惜しい作品だった。
ちなみにこの作品に手を出したのは、この作者が今連載している『路傍のフジイ』がまた特別な作品だからである。そちらも引き続き最新話を追っていきたい。