クリスマスになると聴きたくなる曲
さてさて、今月の課題は『クリスマスになると聴きたくなる曲』ということなので、今回は、この時期になるとぼくが必ず聴きたくなる曲、カナダ人シンガー・ソング・ライター、Joni Mitchell の"River"を取り上げてみたいと思う。
この"River"は、1971年に発表されて以来、数多くのアーティストにカバーされている楽曲。正確な数はわからないけれど、カバーバージョンの数は、100や200では利かないのではないだろうか。ところが、悲しい内容が歌われているせいなのか、日本のクリスマスシーンで耳にすることは全くないといっていい。
ぼくがこの曲と出会ったのは、1997年に放送開始されたアメリカのドラマ、Ally Mcbeal(邦題:アリー my Love)。クリスマスの時期を舞台としたエピソードにおいて、主人公アリー(演:キャリスタ・フロックハート)の恋人ラリー(演:ロバート・ダウニー・Jr.)がピアノで弾き語りをする場面で、この曲はぼくの耳にはじめて届けられた。
ここで、歌詞の一部を簡単な和訳つきで紹介してみよう
この通り、歌詞の内容は暗くて悲しい。その暗さたるや、カウントダウンTVやミュージックステーションにおいて、なにわ男子やNiziU、あるいはTwiceの皆さんにカバーされることは到底期待できないほどである。
ぼくがこの曲を大いに気に入っている点は2つ。この歌と、この歌が演奏されるドラマのシチュエーションが最高に似合っていること、そして、ロバート・ダウニー・Jr.が、ぼくの最高に大好きな俳優であることである。
周囲の浮かれたクリスマスムードとは裏腹に、恋愛関係において深刻な局面を迎えたアリーとラリー。これについては、ドラマを見ていないと理解できないシチュエーションなのだけれど、この歌が演奏される場面では、ラリーの心情がひしひしと視聴者に伝わってくる、このドラマ屈指の名シーン。
今でこそ、アイアンマンのトニー・スターク役で日本でも圧倒的な知名度を誇るロバート・ダウニー・Jr.ではあるが、彼は1990年代後半に薬物依存が原因で表舞台からその姿を消してしまった。その後、数年間の苦難の時期を過ごした彼は、刑務所からの仮出所後に出演したこの作品でゴールデン・グローブ賞を獲得するほどの評価を得たのだが、本ドラマ出演中に再度、コカイン所持により逮捕。作品からの強引な退場を迫られることになった。しかしながら、そのようなことで彼の俳優としての魅力は薄れるはずもなく、その後のマーベル・ユニバースでの獅子奮迅の活躍は日本でも広く知られるところである。
彼に対するぼくの愛を語るのはここらで自重することとして、ちょうど、YouTubeでこの場面が公開されていたので、そちらをご紹介しよう。
あぁ、かっこいい、まぁ、かっこいい
ちなみにこのドラマ、カメオ出演するアーティストが豪華なことでも有名。グロリア・ゲイナーやバリー・ホワイト、スティングからマライア・キャリーまでもが劇中で圧倒的なパフォーマンスを披露する。
さて、ぼくの好き語りはここらでおしまいにして、そろそろ本題のまとめを。
宗教観が極めて希薄なこの日本で、クリスマスをクリスマスたらしめている最大の要素のひとつはクリスマス・ミュージックであることは間違いない。広瀬香美で間に合うようにするもよし、竹内まりやで今夜ケンタッキーにするもよし、back numberで胸を痛めるもよしである。聞くところによれば、イスラム圏でも最近ではクリスマスを祝う文化が許容され、サウジアラビアの首都リヤドの中心には巨大なクリスマス・ツリーが飾られるようになったとか。
キリスト教会的にはクリスマス(降誕祭)の4つ前の日曜日からは降誕節。すなわち、クリスマスに向けた準備期間である。ただただ商業的な高揚感に煽られることなく、クリスマス・ソングを通じて異国の価値観、あるいは異国の人にとってのクリスマスに想いを馳せることができれば、少し大人なクリスマスを味わうことができるのではないでしょうか。
おしまい
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