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異星

 睡眠時間が必要十分に達したとき、さあさあ、という静かな雨音が、自然と目覚めのきっかけという形をとった。平熱の身体に端っこの方の冷えたシーツを手繰り寄せる。昨晩の雨はまだ降り続けているようだ。

 昔、目覚めはもっと緊迫したものだったような気がする……大きい音が耳元で鳴って、まだ起きたくないのにパジャマを脱いでいたような気が、する。
 
 この星には「時計」がない。それどころか、「時間」という概念はきっぱり存在していないらしい。さっきから曖昧な言い方をしているのは、私が数年前この星に不時着をした時点で、記憶を一部失っているからだった。

ここの星のやつら

 私のような不時着者は1万人以上存在し、それはこの星の人口2割にものぼる。私たちは全員記憶障害を負っていて、こいつらから世話を受け、ここでずっと暮らしている。

歩くたびに ピプ ピプ ピプ と鳴る


 こいつらの社会形成は完全な成功をおさめていた。

 完璧な食料供給システムを作り出した時点で、遺伝子から闘争の二文字が消えたそうだ。
 そんなだから、どこの生まれとも知れない私たちを甲斐甲斐しく世話してくれるらしい。

 一日に三回、外からピプピプという効果音が聞こえたと思えば、めっちゃ美味しくて温かいご飯を届けてくれる。

 そしてこんな雨の日にもまた、外から足音が近付いてきていた……。

本日の朝食
マッシュドエッグパン マヨネーズ&胡椒和え×2
根菜がごろごろしているスープ
オレンジジュース

 完食の後、気絶。多すぎる。

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