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STRAY 犬が見た世界

"STRAY 犬が見た世界"を観てきました。


個人的な感想ですが、私史上1番と言っても過言ではないぐらい素晴らしい映画でした。
トルコイスタンブールに暮らす野良犬に密着し、彼女達の目線で見る人間の世界。
監督はこの映画を通して人間史上主義な考え方の危険性を伝えたかったそうです。

音響にもかなりこだわっていて、犬が取りやすい周波に併せて高音が使われていたり、まさに犬になったつもりで、犬の見る世界を体験しました。

そしたら私は、

人間社会って煩いな。
馬鹿みたいな事を気にしたり、
勝手なヒエラルキーで他者を差別したり、
過去や未来に囚われて毎日を大事に生きることを忘れてしまっているのではないか。

犬達の目線になり、彼女達のフィルターを通すことで様々なことを感じました。

犬は昨日や明日を考えないし差別もしない。
馬鹿みたいに欲しないし、他者からどう思われるかなんて気にしない。
ただ、きちんと今日を生きて愛情を与える。
それだけです。
犬のように生きたい。
イスタンブールを自由に生きる犬達を見て、そう思いました。

この映画の舞台となったトルコという国は動物にとても優しい国です。
20世紀初頭に行った大規模な野犬駆除に対する反省から、殺処分や野良犬の捕獲が違法とされている希少な国の一つです。
2021年には動物に対する暴力事件を抑制する"動物権利法案"が議会に提出され、動物を"商品"として分類されなくなりました。
国民の動物愛護への意識も高く、犬や猫が自由に生きている国です。
イスタンブールでは路上の動物たちに去勢・避妊手術やワクチン接種、抗寄生虫剤を施し、デジタル ID を発行してから元いた道路へ戻すなど市をあげて積極的に動物を保護しています。
そんなイスタンブールにはコロナ前は動物好きが集まっていました。

映画を見ると、日本では考えられない犬達の姿に感動し、日本に住む人々の動物愛護に対するリテラシーも少しでも上がれば良いのに...と心から思いました。

ですが、映画を見終わった後、パンフレットを読み、また色々トルコの犬達について調べてみると、トルコの動物達にも危険が迫っているそうです。

昨年12月に4歳の女の子が2頭のピットブルに襲われ重傷を負った事でエルドアン大統領が犬達をシェルターに入れると宣言したのです。
(余談ですが、まずピットブルの時だけ大概犬種指定される=犬種差別を助長する。又、この2匹は飼い犬であって野良犬ではない。という事は飼い主に問題がある可能性が高い。)

そもそも飼い犬が起こした事故で何故野良犬達に矛先が向くのかが、とても不思議ですよね。

実はエルドアン大統領が率いる政権与党に対して野良犬猫の保護活動に積極的なイスタンブール市長は共和人民党 でトルコの最大野党。という事で、この野良犬問題が政権争いにバチバチに活用されている模様です。
実際、それによって野良犬に対する嫌がらせが増えたり、危険な事が起きているようです。
この宣言を聞いて、"STRAY"の監督も急いでトルコに戻り、悠々自適に野良生活を楽しんでいた主役のゼイティンを里親の元に渡したそうです。
この他にもトルコリラの大暴落も影響し、人間でさえ食糧が高く買えなくなっている状況で特に食事量の多い中大型犬は疎まれる対象となっているようです。

実際、昔よりは野良犬の姿を見なくなったという声もあります。

いつの時代も人間によって排除されたり増やされたりするのが動物。
常に人間中心の考え方に巻き込まれています。
でも、もし人間中心の考え方を止めてみたら....
もっと相手に優しくなれるかもしれない。
もっとストレスなく生きれるかもしれない。
起こる事を受け止めて、今日という日を大切に生きれるかもしれない。
戦争や気候変動で苦しまないかもしれない。

是非、この映画を見て人間中心の考え方の怖さに触れてほしいし、犬達が自由に共存する世界に触れ、その愛しさを感じてほしいと思います。

犬好きは絶対に見た方が良い名作でした。

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