グロンギという"怪人"たちが大好きだ
仮面ライダークウガが大好きだ。
先にことわっておくが、私は仮面ライダークウガのオタクであって、仮面ライダー自体はそんなに詳しくない。
平成ライダーは全部観た。昭和は履修中。
クウガ以外だとアマゾン、龍騎、キバ、オーズ、ドライブ、ゴースト辺りが好き(話が好き、怪人が好きが混ざっている)。
怪人が大好きでライダーのデザインよりも怪人のデザインをじっと見てしまうタイプのオタク。なので最近怪人があまりフューチャーされないことを悲しく思っている。
こんな感じで、仮面ライダーというコンテンツそのものに於いては非常にライトな方のオタクだと思っている。そんなことなかったらごめん。
もしこれを読んで、「いや!お前は浅い!ライダーオタクの風上にも置けん!」と思った人、いたらすみません。クウガが異常に好きなんです。仮面ライダーが好きなのは変わらないので、オタクの皆さん優しく仲良くしてください。
クウガに於いては、非常に重たいオタクだと自覚している。そしてとにかくグロンギという存在を愛している。
クウガという作品は、全体を通してリアリティとそれに付随する仄暗さ、そしてそれを拓くかのような聖人君子な主人公という絶妙なバランスでできている。
みんなの笑顔の為に五代雄介と彼を信頼し、支える一条薫を筆頭とする仲間たちがそれぞれの手法を使ってグロンギという脅威と闘っていくというドラマとしても非常に面白い作品だと私は感じている。
グロンギという民族
では、脅威であるグロンギとは何か。
超古代に存在した、動植物の能力を使い、異形に変身できる戦闘民族であるということだけが公式ではっきりと明言されている。
民族…つまり括りとしては人類なのだ。(仮面ライダークウガ超全集 最終巻でもヒト生物学上と同じ存在という記述がある)
あくまで文化の異なる先住民族であり、その身体能力の高さや好戦的な性格から、リント(今の人類と近しい性質を持つ)を狩ることをゲームとし、一種の儀式としている。
ここからはあくまで私の拙い見解だが、グロンギはあくまで自民族の文化として殺人を行っている。例えば、台湾の先住民族であるセデック族が、成人の通過儀礼として敵の集落の壮丁たちの首を狩るという風習が昔あった。その風習と同じ形で、ゲゲルというグロンギの階級を決める儀式を行っているのだと考える。
グロンギとリントの闘いは、狩るものと狩られるものという民族間の対立に過ぎないのではないか。
グロンギは各自の名前に必ず階級の文字が含まれる。
ゲゲルの参加者であるズ、メ、ゴ
進行役であるラ
武器などの制作、手入れを行う職人的立場のヌ
ゲゲルに参加出来ない最底辺のベ
そして頂点に君臨するン
名前につくほどであるその階級は、ゲゲルの成功によって昇級していく。
グロンギにとって階級は重要なものであり、絶対。作中にも、上位の階級が下位の階級には強く出ることが多く、下位の階級は「整理」と称して頂点であるン・ダグバ・ゼバに虐殺される場面もあった。
つまり、ゲゲルの成功は彼らの出世(という表現が適切かはわからないが)、そして生存に於いて欠かせない重要な儀式であると考えられる。
アボリジニの虐殺のように、ハントゲームとしての側面も少なからずあるかもしれないが、階級が絡んでいる点を踏まえるとどちらかというと儀式的な側面が大きいように感じる。
ンになると、種族を識別する文字(虫はバ、地上に生きる哺乳類はダ、爬虫類はレ、水中で暮らす生物はギ、飛行生物はグ、植物はデなど)の頭に最高を意味するゼがつく。
頂点に立つと、その種族において最高の存在になり、究極の闇(自由に殺戮をする権利)をもたらすことができる。
殺戮を本能とするグロンギにとって、ゲゲルは階級を上げるという面だけでなく、グロンギそれぞれにとっての夢を叶えるステージでもあるのだ。
そんなグロンギたちにとって、ゲゲルを妨げるクウガは厄介な存在だ。何しろゲゲルがスムーズに進められなくなるし、時にはカウントの為のグゼパを破壊され、折角貯めてきた殺人ポイントがリセットされることもある。(EPISODE7 バヂスの回)
グロンギたちにおいてクウガの存在は、あくまでゲゲルを妨害する厄介者、またはちょっと強い標的でしかない。
私はそういうグロンギたちが特撮における怪人として大好きである。
あくまでも自文化の為に人々を殺す、ここには一切の容赦も感情もない。ただ自分たちの儀式を完遂するだけ。相互理解など到底持ち合わせてない。獲物であるリントを狙う為なら、リントの文化をも取り入れて溶け込む。仮面ライダーであるクウガはあくまで儀式の邪魔者か、点数稼ぎの獲物。
これだけリントである我々にとって脅威となる怪人がいるだろうか。
未確認生命体という呼称が、リント側である我々現代人類において、どれだけ理解し難く恐ろしいものかを顕著に表現していると思う。
グロンギのファッションと知能
デザインも魅力的だ。民族的なデザインとモチーフとなる生き物を掛け合わせ、より人間的に落とし込まれたその容姿。あくまで"怪人"としての表現。
独自の文化に沿い、戦闘に特化した怪人体と、ただグロンギという民族として生活をする人間体。ファッションセンスもグロンギ族特有の価値観や知能が表れていると思う。
例えば、ズ集団。超古代での生活を感じさせるような露出が目立つ服装が多い。
言語も拙くグロンギ語しかほぼ話せない。
ゲゲル参加集団の中では1番リントに溶け込めておらず、その見た目からか、人間体の時点でリントを怖がらせる奴もいる(バヅー)。
ゲゲルも完遂できず、好き勝手やる奴が作中でわかるだけでも4人いる(ジャモレは名前のみの出演で不明なので含めていない)。結知能もそこまで高くないだろう。
メ集団はグロンギ特有のセンスとリントの服が合わさり、なんとも言えないファッションになっている。
怪人体のデザインを彷彿とさせるような奇抜な服装をしている者も多い。
その一方で、リントの言葉を解したり、ゲゲルの緻密性が高かったりする。
「どう考えてもリントにとけ込めないだろこいつ」という奴は、水中や空中で生活できるようになっている。身を隠すのが上手く、何なら透明になれる奴はズからメへと昇級している(ガルメ)。知能は比較的高い奴が多い。
ゴ集団になると、少しおしゃれなリントレベルになってくる。
ファッションセンスも拘りのあるリントと何ら変わりなく、スーツにメガネという本当にそこら中にいそうな服装をする奴もいる(ジャーザ)。
リントの言葉を難なく話し、ゲゲルにもあいうえお順やショパンの楽譜、ギャンブル、学校制度や交通網、インターネットといった現代人類の文化や社会を理解した上でルールに盛り込んでいる。非常に知能が高い。
ンであるダグバも、全身真っ白という点を除けば非常に人間らしい服装をしている。白という色ら恐らく本人にとって重要な色だと考えられる。
ラ集団においては、このファッションセンスと知能が釣り合っていない。いわば別格の集団だ。
進行役である彼らは、儀式的な側面の強い服装をしている。
特に進行役のバルバは、ゲゲルの段階においてドレスの色を変えている。
ゲゲルが進行するにつれ、より人間らしいファッションとなっている。(クウガ超全集では、グロンギの謎や進化を表現しているとある)
集団毎の魅力
ここまで、各集団ごとの知能やファッションについて書いたが、この集団それぞれ性格があると私は感じている。特にゲゲルに参加する面々は、それぞれの個性からか特徴がある気がする。
まずズ集団。彼らはそれぞれスタート地点にいる新卒の同僚のような感じがする。
暴走するメビオを止めようするなど、少なからず仲間意識があるように見える。
ゲゲルを無視して好き勝手やったゴオマにキレたり、1集団としての自覚がしっかりあるようだ。
メ集団はプライドの高い奴が多い。その為、集団としての自覚と言うよりは個々人の力を誇示し、潰し合いも辞さないような雰囲気がある。
ガルメとガリマが言い争いをしたりするのがそれだ。ゲゲルの順番を争ったり、ガリマがゴのやり方でゲゲルをやるように、とにかく向上心が高いグロンギが多い。
ライバル心が非常に強く常に睨み合いをしている。
一方ゴになると、逆に互いを信頼している描写が増える。
ガメゴのゲゲルをジャラジとザザルが手伝ったり、ガドルがバダーを評価している場面などからお互いの強さを認めているのが伺える。また、ブウロに関してはメ集団のガリマのことを気にかけていたりと、実力のあるグロンギに対しては寛容だ。
特にゴの最強3人衆はお互いのゲゲルの内容について談笑したり、とても仲が良く見える。それでも、ジャーザが「どっちかとやり合うことになるかもね」と笑ったりする点から、あくまでゲリザギバスゲゲルのライバルとして見ていることには変わりないようだ。ただ「つるむ」という行為が最も目立つのは、紛れもなくゴ集団だ。
グロンギという一民族と言えどそれぞれ集団があることで、一筋縄ではいかないグロンギの社会がしっかり描写されている。
グロンギ同士の交流や人間関係がわかると、一応人間と同じような場面があるという点と、彼らが行っていることの非人道さとの対比になり、いっそう不気味さを感じさせると私は思う。
そのコントラストから生まれる恐怖が、グロンギの何よりの魅力だ。
私の大好きなグロンギ、ゴ・ジャラジ・ダ
ここまではグロンギ全体の魅力や性質を書いてきた。
ここでは、私がどの怪人よりも愛してやまない、ジャラジという存在について語らせてもらう。
どれくらい好きかと言うと、ジャラジの作中撃破日と誕生日が同じなので、その日は芦ノ湖に行ったりしている。
ゴ・ジャラジ・ダはダグバやガドルに次いで、有名なグロンギかもしれない。
作中でも必至の悪役非道振りとその凄惨な最期で、ライダー界隈で語り継がれているからだ。
彼は人間体だと、小麦色の健康的な肌をした17歳ほどの少年だ。外ハネした髪に黒いピアス、左手のみにバングルを2つつけ、親指に指輪。民族調のネックレスに穴の空いたタンクトップ、緩いズボンに派手なスニーカーを履いている。(初期は扇子を常備していたが、ザザルに取られてしまった。)
一見ちょっとグレた少年といった感じだ。(尚、クウガボックスに付属する初期の台本では、儚い美少年という設定だったらしい。そっちはダグバに引き継がれたのか?)
怪人体は、真っ黒い肌に青い目、X JAPAN初期のTOSHIを彷彿とさせるヤマアラシの白い針を総立てた髪型に3連の針のピアス。胸元にこそ装飾品があるが、防具のようなものは身につけていない。彼はスピード特化型だった。
身長・体重もグロンギの中では最も小柄だ。
彼のゲゲルはこうだ。
・緑川高校の2年生男子生徒をターゲットとし、
・己の装飾品であるかぎ針を極小に変化させ、脳に差し込む。
その際に4日後の死の宣告も行う。
・差し込んだ針は4日後、脳内で元のかぎ針に戻す。それにより脳出血による虚血性脳梗塞にして、
・12日間で90人殺す。
・4日間、対象の生徒は死の恐怖に悶え苦しむことになる。
どうだ。すごいだろ。
彼のゲゲルの特色は、なんと言ってもその陰湿さにある。
確実に殺すだけなら、殺傷力の強い爪を持っているので、それを用いて殺すことが出来る。
装飾品はダーツにも変化し、ドラゴンフォームのクウガを意図も容易く仕留めることができるので、そっちで殺したっていい。
どうしても脳出血にしたいというなら、針を刺してすぐに膨張させることだって出来るはずだ。
だが彼はそうしない。被害者に死の宣告をした上で、4日間。猶予を与えるのだ。
しかしレントゲンにもMRIにも映らないその針を、4日間でどうすることもできない。
4日後、どういう死に方をするのかわからないまま、彼らを悩み苦しませるのだ。
そしてジャラジ本人は、その様子を度々観察しにくる。身を隠すことなく、人間体そのままだ。
観察しに来た彼を見て、被害者はまたアイツが来たと震え上がり、狂う。
何故わざわざ見に来るのか。
恐らく被害者がちゃんと死に至る場面を確認するという意図もある。
だが大半の理由は、楽しいから。
何なら、その被害者の葬式にも出向く。そして目撃した者を恐怖で狂わせたりしている。
理由は、楽しいから。
そう、彼はリントが苦しみ、泣きじゃくるのを見るのが大好きなのだ。
どうだ。すごいだろ。(2回目)
しかしこの悪趣味によって彼はミスを犯してしまう。
ターゲットのら1人が苦しみのあまり、病院の窓から飛び降りて自殺をしてしまった。
ゲゲルのルールに反した死に方をすると、カウントに含まれなくなる。
慌てたジャラジは、最近転校してきた1人の少年に針を刺しに行こうとするが…
ここから先は、ここで書くより本編を見てもらった方が面白いし、しんどいと思うので是非見てみてほしい。
東映特撮ファンクラブ以外だと、U-NEXTとかで観れるらしい。
何ならDVD全巻持ってるので鑑賞会開きたいくらい。
ジャラジのゲゲルが見られるのはEPISODE34、35です。是非。
(初登場はEPISODE25なので、ジャラジそのものに興味を持って方はそちらも是非。)
で、何故こんな悪逆非道のグロンギ、ゴ・ジャラジ・ダが好きなのか。
グロンギという民族から見たら、彼はガドルに次いで最もザギバスゲゲルに進むことができるのでは?と思ったからだ。
まず、彼が標的とした。緑川高校2年生男子生徒、という括り。
そもそもグロンギにおいて学校制度はないだろう。そんな中、「ここにある高校の」「2学年の」「男子生徒のみ」というかなりターゲットを絞っている。
学校というものがあって、学年というものがあって、男女それぞれいて、という共学高校への理解がないと決められようのないターゲットだ。
そして、彼らに死の宣告をしている。宣告されたと被害者が取り乱している辺り、さすがにリントの言葉で伝えているだろう。実際、クウガにもリントの言葉で捨て台詞を吐いている。
さらに、このゲゲルについても王手をかける直前でしか警察が認知・行動をすることができなかった。ゲゲルの陰湿さもあるだろうが、人間体がバレずにいられていたということは、かなりリントに溶け込んでいたとも考えられる。
リントを文化を深く理解し、溶け込むことができるだけの知能があるのだ。
また、彼はクウガと戦闘する時、そのスピード(瞬間移動の説もある)と身のこなしを生かし、草原という場を選んでいる。撹乱するには十分な長さの草に身を隠しながら、視認性の低いダーツという武器でクウガを攻撃している。
自身のスピードに特化した分の防御力の低さを理解した上で、より有利な場までクウガを誘い込み、戦闘に持ち込んだのだ。
また、ゲゲルの時間を多めに取り、かつ予備まで考えている。用心深くゲゲルに取り組む彼はかなりの知能犯だといえる。
そして、「今はゲゲルの時間だ。邪魔したら、殺すよ?」や「ザギバスゲゲルに進むのは…僕だ」といったザギバスゲゲルへの執念ともとれる発言も見られる。
その殺害人数・期間・殺害方法から見えるゲゲルへの用心深さからも、絶対にザギバスゲゲルへ進むという強い意志が感じ取れる。
ギャンブルで殺害の地域・人数を決めるガメゴや、楽譜の音階で現場と人数を選ぶべミウなどがゲゲルエンジョイ勢とするならば、ジャラジはゲゲルガチ勢である。
狭いコミュニティの狭い範囲の人間を確実に仕留めることで、ゲリザギバスゲゲルを確実にクリアしようという意図が見えるのだ。
その一方で、彼は17歳という人間体の年齢から見て取れるような幼稚さも持ち合わせていた。主な敗因はこの幼稚さによるものだと考える。
自身の趣味を追求し、リントを苦しめた結果、自殺者を出してしまったのもこの幼稚さ故だ。宣告もせず放っておけば、彼らは苦しみこそしないが、自殺の危機もなくストレートにザギバスゲゲルに進むことができただろう。
また、彼には指を鳴らす癖がある。このフィンガースナップで警察を撹乱していたが、最後にはこれが仇となりクウガと対峙することになる。
その他にも爪を噛む癖があったりと、所々に幼さを滲ませている。
この幼さと高い知能の間に残る残虐性こそ、彼の怪人としての魅力だ。
その最期と併せて見ても、彼が作中に残した衝撃は計り知れない。
たまに、「ジャラジがザギバスゲゲルに行ってもすぐ死ぬだろう」と言う人を見かけるが、私はあまりそうは思わない。
ザギバスゲゲルに行くと、今まで封じられていた力を出すことができるという説がある。この説が正しければ、彼はダグバといい勝負をすると思うのだ。
というのも、ゴ集団最強3人衆がフォームを変えられたように、このジャラジはあくまでスピードフォームなのではないか、と考えているからだ。
用心深い彼はとにかくスピードを重視し、使える力をスピードにぶっ込んでいたのではないか。目が青いのも、最強3人衆がフォームを変えた時に変わったのと同じ原理なのではないか。
もし彼かザギバスゲゲルに進めたら、残る防御力・攻撃力を上げるができたのではないか。
また、ジャラジは瞬間移動に近いスピードを持っている。作中内で、瞬間移動が可能なグロンギはダグバだけだ。
ジャラジは瞬間移動ができるという点では、よりダグバに近い存在になれたのではないか?
そんなことを考え初めてしまったので、筆をここで置かせてもらおうと思う。
ジャラジだけでなく、グロンギのことは考え出すと止まらないので、またいつか記事にするかもしれない。
その時は、また。