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サイコロキャンプ

せっかくの連休やというのに

ダラダラ過ごすだけなんはもったない

 

だから、友人3人を誘ってキャンプへ出掛けた

 

山と川と豊かな緑

兄弟船をくちずさみ、しんと澄んだ空気をいただく

 

テントとタープを張り終え、ビールで乾杯

一段落したところで友人が切り出した

 

なあ、このままでもええんやけど

ちょっとゲームしてみいひん?

 

そう言って差し出されたのは、

妙なサイコロ

ふつうのサイコロの目の代わりに、

喜・怒・哀・楽、

そしてミダレルの乱・ムダの無と書かれてある

 

感情サイコロや

ひとりずつコレを振って

キャンプが終わるまで

出た目の感情にしたがうんや

 

なぜ、そんなことをやりたがるのか分からなかったが、

結局、私たちはサイコロを振った

 

1人目、怒

2人目、無

3人目、乱

4人目すなわち私、哀

 

 

 

怒は、大声をあげてテントを蹴り破る

 

無は、三角座りであらぬ方向をながめている

 

乱は、下半身を露出させ、ヨーデルを歌いながら太極拳を舞う

 

そして哀たる私は、ただただ、おろおろした

 

 

 

しばらくおろおろしたのち、

いちばん近くにいた乱に声をかける

なあ、もうそろそろ、ええんちゃうか

 

すると彼は

保険局の職員が蕎麦屋のコスプレでやってきて「お待ち」って言うたら、にんじんさんが輪切りになったり、くっついたりを繰り返してん

訳の分からんその話は1時間以上つづいた

 

 

 

やがて、朝陽がのぼってきた

怒は、未明から車の解体にいそしんでいる

無は、石になったかのように動かない

乱は、もはや筆舌に尽くしがたい

 

 

ゆっくりと

山々の稜線に色がついていく

川をわたる風が木の葉をくるくると踊らせる

鳥たちがもやのなかを翔んでいく

 

私は、おろおろとしながら

全力で生きている、勇気をありがとう

とこころのなかで呟いた