FEEL EARTH MEMORY #6
恩知らずな言い方になるが、親から丈夫なカラダを授かってしまったのだと思う。気持ちではもう限界だと思っていても、目に見えるカタチで急に倒れたり、ノイローゼで頭パッカーンとなったりはなかなかしない。
ぼくにとっては「目に見えるカタチ」というのが重要で、そうなってしまえばこっちのもので、周囲からちやほやと心配され、辞職を申し出ても引き止められることはないだろうと思ってた。しかし、ぼくのカラダはなかなか頑丈で、困ったことになかなか凹たれなかった。自分のカラダがいちばん身近な敵だった。
そのうち、カラダとの意地の張り合いみたいになり、ここまで追い込んだら悲鳴をあげるだろうと、ちょっと言えないようなムチャを強いたりもした。でも、寝てしまえば、けろりと通常運転に戻ってしまう。若かったというのもあるのだろうけど、ムダにタフなカラダにムカついた。ムダタフカラダムカ。
カラダとの勝負は負けてばかりだったが、一度だけ「しめしめ」と快哉をあげたことがある。寒い雨の夜、傘をささずに濡れっぱなしで家に帰り、そのまま布団に転がりこんだら、翌朝、喉がイガイガと痛み、声はガラガラになっていたのだ。
熱は出ていなかったので、とりあえず出勤することにしたが、時間が経つほど声はますます出なくなり、やがて年老いた鶏(ヒネ)の鳴き声みたいな音しか出なくなった。ナイス。ついにやってやった。
ここまでくれば、さすがに誰もが心配し、いわんや、一刻も早く病院へ行けと勧められるかと思いきや、なんともはや、社内の人間たちは大爆笑。「顔は人間、声は鶏(ヒネ)って!! やばいって!! 腹よじれる!!」。身を案じて代役を立ててくれるかもしらん、と期待していたぼくは阿呆だった。予定していた取材も漏れなく行かねばならんハメとなり、日頃から小競り合いをしていた、鬱陶しいなんばのデリヘル店長にも思いっきし嘲笑された。
「DOGEZAさん、よう聞こえへんねんけど、もっかい言うてくれる?」。
彼奴は控室で待機していた風俗嬢らを呼び招き、鶏声で「ぁのーぉっぜゎんってxxxx」と懸命に取材趣旨を説明する姿を披露させては、何度も腹を抱えた。初めはムカついたが、そのうちこっちまでオモロなってきて、この鶏声で卑猥な言葉を発したらどうなるだろうとかやってみたりした。案の定、オモロかった。笑い声も鶏だった。
そういえば、当時はパーティに遊びに行く際、よく「死ぬ気でいこう。朝にはこの世におらんつもりで遊ぼう」と言っていた。高校野球の奴らがピッチャーマウンドでやるみたいな感じで。そう、混じりけなしの本気の言葉だった。
生き延びたところでしょうもない日々をずっと耐えなあかんねんし、やってられるか。ジャーラスタファーライサイケデリックアッセンショーン。御堂筋の雨に打たれながら、いま浴びているこれは、ぜんぶ○○ッ○であると信じようとしていた。カラダだけではなく、理性もぼくの敵だった。
・・・(つづく)
・・・・・(おまけ)
ポエやん
『キラキラと眩ゆい光を放っていたのは、なんてことのないただの蛍光灯やった。そんなものを星だと思い込んでいたとは、よほど効いてんねやろう。うん、このシートは「当たり」や。思わずほくそ笑んだが、しかし待てよ、「かなり効く○○ッ○」を果たして「当たり」と捉えちゃってる自分ってどうなんや。胸の奥にどんよりとした雲が立ちこめてくる。誰かが耳元で囁く。ような気がする。おいおい、このまんまやったらいつかXXられるで。
ドロリとした汗が首元を走り、息苦しさを覚え始める。アカンわこりゃ。完全にバッドトリップや。気づいたところで、もう逃げ出せない。底なしに深い暗闇へと落ちていく。その快感に身を委ねようとしていると、Gが話しかけてきた。「おい、そろそろ○○○の出番やで。フロア行こうや」』