justice
かわいいは性戯だ、と先生が言う。
私は、頷きながら大学ノートにメモる。
しかし、性戯の対象はどこに在るというのか!
先生は興奮した様子で黒板に手旗を打ち付けた。
いつもは指示棒を手にしている先生だが、
この日は誤って赤白手旗を持っていた。
誰にでも過ちはある。
みつめている私の目と、
先生の目とが、まりあーじゅした。
きみはどう思うのかね?
先生は詰問口調で問う。
はい、私ごときが大変恐縮ですが……
あ!
緊張しつつ意見を述べようとすると、
先生はもうよろしいとばかりにかぶりを振り、
右手の赤い手旗を上に掲げ、
左手の白い手旗を水平に伸ばしたかと思うと、
やっ!
という掛け声とともに勢いよく左右を逆転させ、
長い睫毛に隠れた瞳をきらきらと輝かせ、
かわいいは性戯だ、と叫んで天を仰いだ。