一昨日
一昨日、いつものとおり、ぼくは酔っ払った
目をつむる直前まで酒を飲み、
やがて、泥酔状態で寝床についた
わが家に平和が取り戻され、
妻がやれやれと胸をなで下ろし、
カーテンのすきまから川の水面にきらめいた
にぶい月のあかりがしのびより、
壁紙が破れた部屋に平凡ないびきが鳴り響いたころ、
ぼくは、てとらといた
てとらを腹の上で抱き、
小太りなそのカラダをなでまわし、
てとら、
そんなとこにいたのか、
かわいいなあ、よしよし、
てとら、
てとら、
てとらは、去年の3月19日の早朝に
息をしなくなった
ぼくを置いてけぼりにして、
この世から去っていった
てとらを置いてけぼりにしたことは何度もあったけど、
置いてけぼりにされたことは、
あんまなかった
おーい、と呼べば、かならず現れてくれた
おーい、
おーい、
全身にアルコールを駆けめぐらせながら、
そう呼んでたのかもしれない
となりで横になっていた妻が、
眠っているぼくにたずねる
てとら、そこにいるの?
うん、ほら、てとら、ここにいるよ
ぼくは、とてもしあわせそうだった、と、
つぎの日、妻が教えてくれた
てとら、とっくに盆は終わっているのに、
ぼーっとして帰るのを忘れてしまったのかな
どんくさいところあるもんな
てとら、
おーい、
てとら、
てとら、