10億円
年末ジャンボを買った。今年こそ当たるから、そろそろ10億円の使い途を考えておかなければならない。
まずは、税金の滞納分を精算しよう。すべて500円玉にしてズタ袋に入れ、税務署のカウンターにぶちまける。哀れな署員どもが、あたふたしながら拾い集めるところを笑いながら見下ろす。もちろん、すべての500円玉には、あらかじめべちょべちょに小便をかけている。品はないが、致し方ない。税務署員となるべく生まれてきた運命を恨んでもらう他ない。
次いで、瀬戸内あたりに中古の家を求めよう。建物はボロくて構わないが、海が見えるあたたかいところが良い。陽だまりの中庭に樹を植え、猫たちをのびのびと遊ばせてやりたい。
大きな本棚をあつらえた書庫兼ラウンジもつくろう。海が見える小高い庭に面した応接室には、タンテとオーディオを置き、ちょっとしたパーティを開けるようにする。週末になれば友人らがわらわら集まり、レコードをかけたり、ギターを弾いたりして遊び、世界中から選りすぐり集めた酒を飲み、たばこを吸う。グラス片手にニールヤングやスターシップアフリカなど聴きながら黄昏れる。
そうだ。食堂もつくろう。料理人を招いてちょっとした食事会を催し、瀬戸内の海の幸に舌鼓を打つ。木調の室内には小窓があり、天気の良い日に覗き込めば鳥たちが空高く踊る。
さて、問題は仕事をどうするかだ。10億円もいつか尽きる。そのときに備え、何かしら手を打っておかねばならないだろう。そんなに沢山でなくてよいので、日頃の飯代の足しになるくらいは稼いでおきたい。週2日でよいかな。地域情報誌の外部ライターとか丁度いいかもしれん。
あとは、このクソ臭くてタマらない世の中を少しでもマシにする手助けをしよう。志はあるが経済的に余裕のない表現者たちの支援をしたり、活躍できる場をつくる。
とまあ、10億円あれば、こんなことができるんじゃないかと思う。そういえば、大阪の埋立て万博には数千億円もの公金が費やされるという。それだけの大金をかけるのに対し、やろうとしてる中身と、その発想はとてもみすぼらしい。カジノをつくりたいらしいが、カネかけてカネかけるとこつくってカネ儲けようとは、カネの他に考えることないんカネと程度の低いダジャレも浮かぶほど情けない。
酒でもなんでもそうだが、手段と目的を履き違えてはいけない。何かを叶えるためにカネを稼ぐのであり、カネを稼ぐことそのものが目的化するのはみっともない。自民党裏金派といい、セイザイ界とやらには、末期のカネ中毒者が多いようだ。専門医による治療が待たれる。