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アローン??

「孤独」がタイトルに入る本を読み進めるにあたり、「孤独」について考えてみる。


「孤独」はスーツケースワードだ。
使われるシチュエーション、前後の文脈、話し手の意図により受け取る意味が異なってくる。

「孤独」で辞書を引いてみると、こうだ

1.仲間や身寄りがなく、ひとりぼっちであること。思うことを語ったり、心を通い合わせたりする人が一人もなく寂しいこと。また、そのさま。
「―な生活」「天涯―」

2.みなしご、年老いて子のない独り者。

なるほど、やはり
「孤独」にはシンプルに「一人でいる状態」だけでなくそもそも「さみしい」「かわいそう」みたいなニュアンスが含まれているらしい。

英語でも「孤独」「さみしさ」「ひとりぼっち」「一人でいる状態」はlonelinessやaloneでまとめられている。

高校生の時から「彼女は一人で映画を観た」の英訳「She watched a movie alone.」に(楽しくなかったんかなぁ…)(週末の思い出にそんな悲壮感漂わせんでも…)と腹落ちしない印象を持っていた。


う〜ん、何か雑じゃない??
結構センシティブで支配力のあるワードの割には画素少なくない?

ご存知の通り、一人で居ることや一人で何かをすることと、さみしいという感情はイコールではない。上述の彼女は一人で『ロッキー・ホラー・ショー』を観て爆上げしてたかもしれないし、『Mr.ビーン』を観て大口広げて笑って過ごしたかもしれない。はたまた『ラ・ラ・ランド』を観て号泣していたかもしれない。それはそれでいい。いや、いいとか悪いとかじゃない。全くもって独立した状態・現象としてただそこにある。彼女が「さみしい」かどうかは私がジャッジすることではない。

「孤独」は自分の感情や状態を自分で表すのにはよいが、少なくとも他人の状態を語るのにはあまり適していない。


と考えると、派生して「孤独死」という言葉のもつ違和感、死人に口なさすぎ問題にも納得がいく。

死んだその人自身が自分の死を「孤独死」と表現することはなく、その死を「孤独死」と表現・評価するのは多くの場合あとに残された人達だ。
んま〜、勝手ね!


閑話休題、
「孤独」は『孟子』に出てくる「鰥寡孤独」という四字熟語が基となっている。

「鰥」とは61歳以上のやもめ(妻を亡くした夫)
「寡」とは50歳以上の未亡人
「孤(惸)」とは16歳以下の父親のいない子供
「独」は61歳以上の子供がいない者 を指す。

特に未亡人でもない28才の自分はどこにも属していないっぽいし、「孤独」が「さみしい」のニュアンスを持って使われる限り、今後歳をとっても、助けを求める時以外に安易に自らをそのように形容したくないし、他人を形容したくないし、勝手に包括されないよう、しないように抗っていきたい。

孤独とは「思うことを語ったり、心を通い合わせたりする人が一人もなく寂しいこと」とあったが、私はさみしいと感じたら人に声をかけることができ、(特段感じていなくても気のままに声をかけ、)思うことを語ったり、心を通わせたりする人も数人居る(そしてそれが心地よくて好きだ)。

だから、なんか、
もっとただシンプルに「一人でいる」状態を表す言葉が欲しい。
勝手にこちらの感情まで決めつけんといてくれる?という反抗心が湧いてくる。


さて、
ここまできたら、後は代替の候補を絞るだけだ。

日本語の「ぽつねん」を調べてみたけれど、これも「ひとりだけで何もせず寂しそうにしているさま」らしい。
違うのよ、こっちはまぁまぁ楽しんじゃってるのよ。
かと言って「孤高」ほど常に気高くあるわけでもなく、「お一人様」ほどメタになって自分をカテゴライズする気もない。

そうだ、
「単独」(by itself)がいい。
なんかデッカいライブするバンドみたいだし。
「単独死」とかカッコ良い。武道館貸し切って線香あげてくれよな。

「単独」の意味を調べてみる。

「ただ一つだけであること。ただひとり、またはただ一つの機関だけであること。」

ただ一つだけであること。
至ってシンプル。

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