東北旅 三日目 その5
列車が走り出すと
私の頭の中で
この列車がテーマの
朝の連ドラの曲が流れていた。
歌詞もない
ただ陽気なだけの音楽。
あっけらかんとしてて
不思議と心が上向く。
先頭の席に座って
その景色を眺めていた。
到着した駅は、三陸。
昨日、タクシーで訪れた時は
日が沈んで物悲しかった場所。
けれど、列車で
降り立ったその場所は、
朝の光に包まれていて、
希望が溢れていた。
私にとっての理想郷かも。
少し大袈裟かな。
空の広さ、
目の前の山、
海の見え方、
人間のバランス、
私にとって全て完璧。
これが、本来の自然と人との
あり方のように感じた。
ずっと関東で育った私は、
人の方が多い環境が普通だった。
だけど、本当にそうなのかな。
人間は、自然の恩恵の中で生きる。
出来ることとといえば、
調整できることくらい。
最初に、神様が世界を作ったならば、
野坊主に生えてしまう植物たちを
ほんの少し手入れするくらいの存在として
人間を作ったんじゃないか。
これは、以前から私の中にあった考え。
そして、降り立った駅には、
その答えがあった。
そうなんじゃないかと
思っていたことが
確信に変わる瞬間。
感覚が変わる。
意識が変わる。
過疎とか、
田舎とか、
それこそ幻想。
だって、
こんなに豊か。
景色の先に
小さな小屋が見えた。
煙が上がっている。
目的地がいつの間にか
変わっていた。
そして、私の足は
自然と煙の上がる小屋に
向かっていた。