映画レビュー「LAMB/ラム」
静かに進むアイスランドの不気味で悲しい妖怪物語
★4
アイスランドが舞台のスリラー作品。
予告で基本的にどういう事が起きるかはわかっていたので
アダの誕生に対しての驚きはありませんでしたが、
逆にそのアダに対して自分の中でどんどん
愛着が湧いてきてしまう事に驚きました。
娘を亡くして悲しみにくれる夫婦には
それはそれは愛しい存在だった事でしょう。
本作で一番怖いと感じたのが、
実の母親が後ろからついて来る時に
ノオミラパス演じるマリアが「来るなーーっ!!」と絶叫するシーンでした。
強烈な人間のエゴ。
本来は自分たちのものではないのに
勝手にそういう事にして
勝手に幸せを噛み締めて・・・。
だからラストに「彼」にしっぺ返しを喰らったんですよね。
本当に静かでセリフも登場人物も少ない作品ですが、
肝になる部分は全て映像内で理解できる作りになっています。
冒頭の馬たちが何かを恐れているのは「彼」に対してでしょうし
羊たちが恐怖から逃げ惑うのは
「彼」が入って来て襲われたからに他なりません。
物語の間も実は「彼」は何度も家にやって来ていますしね。
本当のアダのお墓も出て来ますし、
ラストシーンはマリアのお腹には・・・
という事でしょう。
「彼」とともに去っていったアダはその後
どう生きていくのでしょうか。
その辺りの余韻も絶妙だと感じました。
「因果応報」
仏教用語なのでこの作品にはそぐわないかもしれませんが
そんな言葉が頭に浮かびましたね。
絶景の中で静かに静かに進んで行く
アイスランドの不気味で悲しい妖怪物語・・・
といった作品でした。
ジトッと心に染み込んで来ます。
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