発注者のみなさん、過度な「やり直し請求」は下請法違反ですのでご注意を。
どうも、ゑんどう(@ryosuke_endo)です。
もうね、こういう事例を目の当たりにしてきたし、発注者側が自身の優位性を誇示するような態度を繰り返すために過度なやり直しを要求するって状況を請けてきた経験からも、憤りを覚えるばかりなのです。
何かというと、大阪シーリング印刷が下請事業者に対し、24,600回にも及ぶ無償でのやり直しを要求していた問題で、公正取引委員会から下請法違反として勧告を受けたって報道がありました。
この事件は、大企業と下請事業者の関係性や、公正な取引ってなんだってことを特に発注者側の視点で考えなければならないことを実感せざるを得ない内容になっていますので、これを扱ってみます。
大阪シーリングがやってしまったこと(概要)
まず、今回の報道でなされている概要について触れていきます。
今回、公正取引委員会から勧告を受けた大阪シーリング印刷は食品を中心としたラベルシールの国内トップシェアの企業で、同社は36人の下請事業者(主にフリーランス)に作成を依頼したラベルなどのデザインを一旦受け入れた後、顧客からの細部のデザイン変更要求を受けて、再び下請事業者に無償でデザインのやり直しを依頼しており、結果的に、計24,600回ものデザインのやり直しを無償で行わせていました。
やり直しの数は、多くの場合1~3回。最も多いケースでは、15回もあり、15回もやり直しをするだなんてことは異常というか正気の沙汰ではありません。
発注者側の論理で「プロなんだから要望に応えられない以上は応えられるようになるまでやるのが当然だろう」と思考するかもしれませんが、15回もやり直しを要求するってことは依頼内容がブレブレだったのではないかと推察されますし、丁寧に伝えることができていない、つまりはコミュニケーションに問題があったと勘繰るしかありません。
そういったことを繰り返していた結果、公正取引委員会は下請法の「不当なやり直しの禁止」規定に違反しているとして、大阪シーリング印刷に勧告します。
ちなみに、これは平成15年の規定制定以降、全国初の勧告事例だそうで、これ以降、類似する事案が頻繁に勧告事例として出てくる可能性があります。
今回の勧告を受け、大阪シーリングは再発防止を徹底する方針を示すとともに、やり直しに関する費用について、下請事業者36人に対し、デザインのやり直しにかかる費用に相当する984万円を支払い済みということです。
大阪シーリングの何が問題だったのか
今回の件、何が問題だったのかを明らかにしておくと、いわゆる大企業と下請事業者の関係性に潜む様々な問題点。これに尽きます。
特に、下請事業者の生活や事業への影響を無視することはできません。今回の大阪シーリング印刷が下請事業者に対して行なった、合計24,600回にも及ぶ無償でのやり直しを要求は、下請けとして仕事を請ける側からすると震える数字です。
言ってしまえば発注側の立場を利用した無償労働なわけで、下請事業者の収入に直結する深刻な問題ですよ。特にフリーランスなど、個人事業主にとっては、いくら稼働しても収入に繋がらないどころか、むしろかどうしている分だけ収入が減少することになるわけですから、生活に向けた大打撃です。
下請け側というか、受注側もそうやって何度も修正等を請けることは業務効率や生産性の点で避けるべく、事前に見積書等に「修正回数は納品から○回までとさせていただきます」と言った具合に記載しているはずですが、受発注の関係において、しかも大手企業ともなればなし崩し的に請け負わざるを得なかったのだろうと想像します。
そうやって過度な修正要求などは、下請け側が他の仕事を受注する機会を奪うことになりますから、長期的な収入の減少へとつながっていきます。
さらに、制作する側からすると、何度も何度も修正等をやらされるってことは、単純に下請事業者のモチベーションを下げることになりますし、自分の意見や提案を表現しにくくさせますから、なんというか創造性を損なう要因として機能していくことも考えられます。
結局、この件は相応な規模を有する企業が下請事業者を不当に扱うことが常態化していたって事実を浮き彫りにしましたが、日本中で起こっていることでしょう。つまりは氷山の一角にもならないほど、数多の下請け事業者が涙を飲んでいる状況な訳です。
IT系の開発においては何重にもわたる下請けや孫請け構造によってデスマーチなどと呼ばれる事象がネット上で大いに話題となるほど。
今回の件から、数多の事例が浮き彫りになっていくのであろうことを想像すると、発注側はこれまでのように強権的な態度を改めない限り、下請け側から総スカンを食らってしまう可能性もあるかもしれません。
公正な取引ってなんだ
ただ、そうは言っても、今回の件だって「勧告」までで終わっています。つまり「罰則」があるわけではないんですよ。
公正な取引ができる環境を構築するためには、ぼくが思うに罰則の強化と行政指導の徹底が必要でしょう。
今回の件だって、件数だけ見てみると合計24,600回って膨大な数の違反行為を行なっていたのにもかかわらず、勧告、つまり注意をしただけで終わっています。
下請法違反に対する罰則を強化することで違反行為のコストを高めることで、抑止力を高めなければ何度でもやっていいことになります。
今回の件でいうと、大阪シーリングはこうやって企業名が大々的に報道されることとなりましたから、結果的に社会的制裁をうけることとなってはいますから、今後の発注動向には変化があるかもしれません。
再度、同じような事例があれば告発をされてしまいますから、反省をしていない企業だとする認識が広がってしまえば、そもそも大阪シーリング自体が取引をしてもらえなくなる状況になる可能性だってあります。
そう言った抑止的な意味で、大々的に企業名を挙げたり罰則を設けることは必要になってくるのではないでしょうか。
公正な取引環境の構築は、一朝一夕にはなしえません。というか、これまでに多分に見てみぬふりをされてきた風習ですから、多くの発注元となる企業は教訓とすべきでしょう。
おわりに
いつだって発注者が偉いって構造はどの業界でも同様でしょう。
ただ、健全な経済活動の上でこそ、健康な生活が成り立つわけですし、生産性や効率性を高めることにつながっていくはずだと思いますから、是非とも、みんなで健康になっていきましょう。
ではでは。
ゑんどう(@ryosuke_endo)
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