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若者が残念なキャリア選択をしてしまうのでなく日本が残念な横ばいな国なのだ
枕にかえて
どうも、えんどう @ryosuke_endo です。
キャリアや職務経歴に不安を抱えている人は多くなっているのではないか。故あって、転職相談やキャリアメンターのような表立ってすることになったこともあり、遠慮せずに書かせてもらうことにしよう。(とはいえ、これまでも決して遠慮していたわけではない)
昨年の記事ではあるものの、1年熟成されて余計にパンチの効いた内容になってきた感があるのが以下だ。
キャリアカウンセリングサービスを運営するポジウィルの金井芽依さんがWoman typeのインタビューを受けたものから2022年のキャリアに対する向き合い方を考えてみる。
▶︎ 残念なキャリア選択とは生き方の損失である
冒頭でも記載したが、キャリアや職務経歴に不安を抱えている人は増えているだろうし、今後も増加していく傾向になるのは間違いないだろう。仮に「現状のキャリア形成に満足している」と応えられる人がいるならば、非常に幸福な状態だと言えるのかもしれない。
上記の記事内で「残念なキャリア選択」と表現されているが、端的にいえば学習面や部活動などで成績や結果を出してきた優等生が「正解がわからない」とキャリア迷子になるのだとしている。
正直なところ、この点に理解はできるものの納得ができるかというとスッキリした腹落ちするところまではいけない。
わかっているのはキャリア選択とは一社だけを選択しただけではまったくわからないもので、複数社の経験がなければ自身に適しているのかどうかの判断すらできないことであるということだ。
そして、そもそもかつては大きく語られていた終身雇用も幻想であることが1990年代には明らかになっていたため、大多数の労働者は転職を前提とした労働時間を過ごさなければならない。
以前、その点に触れた内容を書いたnote『キャリアメンターとして転職相談を受けた際に「転職を考えることが怖いです」と述べた彼女に伝えたこと』にも記載しているのでお時間がある人はお付き合いを。
いま、労働者の定年退職ができる年齢が何歳なのかが予想すらできない。少なくとも60歳で労働者人生に終止符を打ち、「老後」を過ごせる人材など希少であり、むしろ、それは資産家でしかあり得ない話だ。
多数派である労働者は常にキャリア選択を迫られ続けるが、その選択が仮に間違っていた場合、それは生き方を損失することにもなりかねない大きな問題となる。
▷ 若者が不安なのは日本の横ばい力が原因
我々はどうしてキャリアに不安を感じるのか。自分の実力が通用しないから。自分の望んでいた通りに仕事が運ばないから。自分の考えている理想と現実の自分に乖離があるから。
そうやって自分のことにばかり目が行きがちだが、そんなに自分を責めていても仕方がない。僕を見てほしい。まったく持って無能ぶりを晒すばかりで恥ずかしくはないのかと妻さんから虐げられているものの、しっかりと生きている。
こちらを見てほしい。天下のNHKでもしっかりと報道されてしまった日本の世界に類を見ない『横ばい力』を示すもので、1991年から2020年に至るまでの30年間、日本の平均年間賃金に大きな変化はない。世界経済や情勢が変わる中でまったく変わらないのだ。恐ろしいほど横ばい。
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純粋にこれをみて「日本はすごいんだ!」となる人物がいたとするならば、非常にお気楽で呑気な性格なのかもしれない。「いや、落ちてないんだからすごいじゃないか!」と称賛する人も中にはいるだろうが、少し待ってほしい。
日本は世界に名だたる先進国であったはず。GDPではアメリカに次ぐ2位にまで躍り出たこともある。しかし、現状は先進国の中で最下位の労働生産性を誇る。そして、OECD加盟国の中でも労働者の平均賃金は低い方であることは明らかだ。
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https://www.oecd.org/tokyo/statistics/average-wages-japanese-version.htm
これを持ってして、若者たちに「希望を持て」などといえる大人は嘘つきか詐欺師かのどちらかだろう。これらの数値的な事実のどこに希望を見出す隙があるのか。
「世界の中には貧困に喘ぐ国があり、それから見れば恵まれている」という人もいるだろう。僕が子どもの頃にも食事を残そうとすると大人たちはこぞって「アフリカの貧しい国が..」といった話をしてきたが、その話をしたところで貧しい国が豊かになるわけではない。
そうやって訳のわからない励ましを送っている時点で、数字を見ないようにしているか、貧しい点を押し隠そうとしている卑怯な人物である。こんな凄まじいほどの横ばい力を発揮している国で希望を持ちつつ、キャリア選択に自信を持てと言う方が無理だ。
▷ 有能な若者は日本から逃げる準備を
ハッキリいってしまえば日本は泥舟のようなものだ。しっかりとした基盤のある豪華客船ではない。いや、泥舟は言い過ぎか。少人数が乗ることが許されている屋形船といったところだろう。
屋形船に乗ることが許されるのは金融資産を多く保有する金持ちだ。彼らにとって日本ほど過ごしやすい国はないのではないか。治安はよく、食事はおいしいうえに安い。徹底した効率を無視したサービス待遇は過剰だと思えるほどだ。生活に困ることのない金融資産を保有する人間であれば、これほど安心して過ごせる国はないだろう。
一方、一般労働者レベルでいうと、明らかに昭和の時代に平均賃金をもらっていた人間よりも20代や30代は生活が苦しい。消費税は10%であるため、実質的に賃金が10%なくなるし、給与税ともいえる社会保険料として15%以上、厚生年金として会社と折半ではあるものの18%もの金額が天引きされる。
この点だけをみても、昭和時代の労働者よりも現代の若者労働者たちは明らかに生活が苦しい。事実、20代の43.2%、30代も31.1%が貯蓄ゼロなのだ。家計の金融行動に関する世論調査(金融広報中央委員会)
これらのどこに余裕を持つ要素があるのだろうか。このまま年齢を重ねたとしても日本で就業する以上、平均賃金は引き上がらず、維持する状態が保たれることは歴史が物語っている通り、30年間も維持できていたことが世界的にもみても不思議なほどだ。
この均衡が崩れてしまった際には一斉に金が失われる状態になることは誰にでもわかる状態なわけだが、全体でそうであるからといって個人でもそうであるとは一概にはいえない。
英語が話せれば仕事を英語圏で請け負うことができる。それなら賃金を引き上げることは可能だ。上記したUECD加盟国の平均賃金を見ればアメリカは日本の2倍とはいわないものの、それに近しい賃金を支払える財力がある。
他にも英語圏で仕事を探すことができれば、今の賃金よりははるかに待遇がマシになるのは事実だろう。有能な若手は日本から飛び出す準備をした方がいいかもしれない。
▷ 中途半端な中年や高齢者は邪魔をしない
こんな悲惨な状態にある若者に向けて「希望を持て」と説教を垂れるような大人な嘘つきや詐欺師である旨を書いた。ハッキリいって、そのように余剰分に授かることができた人たちの言い分は、いまの若者にとって何にも響かない。
事業を成功していたり、キラキラしているようなキャリアを重ねている人たちのいうことは効いてしまうだろうが、少なくともそれを聞くことが若者にとっていいことなのかどうかは正直わからない。
経営的な視点で物事を伝えるつもりでいたとしても、ビジネスモデル自体が異なれば助言ではなく妄言となってしまうことも懸念すべきだろう。その平衡性を失って飲んだくれてしまっている中年や高齢者は若者の邪魔をしないよう強く意識すべきだろう。
僕はいま、まだ10代にもならない子どもたちと共に過ごす機会に恵まれているが、彼らが10年後に絶望していないのかが不安で仕方ない。僕みたいな瑣末な人間にどうにかできるほどのものでもないが、このような社会構造をつくってしまう一員として非常に情けなく、また申し訳なく思う。
しかし、現状は結婚をしようと考える若者たちはお金がない。お金がないから結婚に踏み切れない。結婚に踏み切れないから子どもを産むことにも躊躇が生じる。長期的に見れば子どもが増えることこそ日本にとっての有益なことである事実は変わりないはず。
それにもかかわらず、日本は若者や子どもたちよりも高齢者優遇な社会構造となっている。こうなってしまっている以上、個人でどうにかできる問題ではないのだから、おじさんやオバさん、爺さんや婆さんは若者の邪魔をしないことだ。それ以外にない。
邪魔をするような言動もすべきではないし、行動を制限すべきでもない。なぜなら、彼らの自由にできるだけの経済的な余剰を奪ったのは紛れもなく自分たちなのだから。彼らからキャリア不安などを引き出しているのは自分たちであることを自覚するのだ。
僕自身もそうならないよう、強く意識する。
ではでは。
えんどう
▶︎ おまけ
▷ 紹介したいnote
こんな風に個人でキャリア形成をしっかりできるようになれば全体の中で埋もれることもないだろう。そうなるためには青田さんのような人物に客観的な視点から助言をしてもらうようにしたらいい。若い人たちは人材紹介エージェントやキャリアメンターを積極的に使って市場価値を測るべきだ。
冒頭で紹介した金井さんのnoteである。やりたいこともなければ目標もない人のキャリア設計。そんな人だらけの国は希望があるのか。いや、むしろ余白があると捉えれば希望があるのかもしれない。ただ、だいたいは自覚できていないだけのケースが多い。壁打ちをドンドンやっていこう。
将来のキャリアという漠然とした抽象的な問題が自分の問題であると勘違いしていたという体験から書かれているnote。とくさんのエントリーは常にこういう具体を体験から引き出してくれる短さがあるため非常に読み進めやすい。オススメである。
▷ 本noteに関連する紹介したい書籍
客観的なデータから転職に関する気づきを多く埋め込んでくれている書籍だ。マッチング、というよりもラーニング。とする考え方には納得感が高いもので、これが全てだとは思わないが、参考になる点も見出せるものであるため、転職を考えている人にはオススメしたい。
▷ 著者のTwitterアカウント
僕の主な生息SNSはTwitterで、日々、意識ひくい系の投稿を繰り返している。気になる人はぜひ以下から覗いてみて欲しい。何ならフォローしてくれると毎日書いているnoteの更新情報をお届けする。
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