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【二】一人の天使

日を重ねるごとに、白い華が増えていく。
悪魔に紛れた天使は倍ほど美しく見えるので、白い華はいつにも増して強く大きく育っている。
白い華の種子たちは死を待つだけだが、自分よりも大勢の仲間と居ることができて、皮肉にも羨ましい。
そしてまたうめき声が匂いとなって倦怠感と一緒に襲ってくる。

今日は休みなので天使には会えない。
今頃、どこで何をしているのかな、意味もなく人を魅了して遊んでいるんじゃないかと、ありもしない想像をして一人悩んでた。
いや、天使もたまにはもてあそんだりするんじゃないか、など思考を巡らせて遊んでいた。

そんな夜、一本も電話が入った。天使からだ。
少し嬉しくなって、数コール噛み締めてから電話に出た。
「はい、もしもし」
と少し高めなトーンで話し始め、天使は労いの言葉に続きこう言った。
「今度、新しく入ってくる人がいるから」
と不安そうな口調で話す。
「はい、それで」
と期待外れだった気持ちを隠さず、天使の不安をよそに言った。
「なんでも、人付き合いが苦手だとかで気を使ってあげてね」
「わかりました」
何気ないが、天使との会話は自分にとって至高のひと時だった。
新人がどんな人なのか気になるが、天使の声の方が印象に残って内容が入ってこなかった。

次の日の朝、夕方から仕事がありソワソワしながら過ごしていた。
まだ時間があるのに何も手につけられないタチで、何とももどかしい感覚に陥ってしまう。
あの地獄の蛇の道を自ら進まなければならないのだから、少し頭がおかしくなるくらいは当たり前なんじゃないかと思う。
そうでなければ自分が何者かわからなくなってしまうのである。

そんな時間を過ごしているうちに出発の時間が来た。






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