生まれて初めて占いに行った話
厄年である。
女性は30代の前半に厄年が来たと思ったら中盤にも来るということを、つい最近までうっかり忘れていた。
確かにここ最近なんだかついてないし、体調も悪いし怪我も治らない。友人に聞いても軒並み「厄年やばい」「前回よりやばい」と返ってくるので、娘が日中幼稚園に行っている隙に厄払い……と、この際せっかくなので占いも体験してみることにした。
占いには前から興味はあったが20代の頃は金銭面や感情面で敷居が高く、30代に入ってからは多忙だったため縁遠かった。しかし、初体験をするなら今だと、私の中の何かが熱烈にGOサインを出した。
まだまだ迷える30代。なにか生きる指針というか、第三者からアドバイスを貰って今後の傾向と対策を練りたかったのだと思う。
そして夏の盛りの7月某日。
行きつけの神社で無事厄払いは終了。なんとなく身綺麗になった心地で、そこから歩いて10分ほどのところにある占いの館に向かった。
(ちなみにこの占いの館は全国チェーン・駅近・ホームページが怪しくない・値段が良心的という居酒屋を選ぶみたいな理由でセレクトしたのだが、様々な占い師さんからお気に入りの人を予約できるし、待合室も外からは見えずプライバシーもばっちり、誰に見てもらっても10分1000円という明朗会計ぶりもよかった)
時間通りに出向き、迎えてくれたのはMさんという女性占い師。
彼女を選んだ理由はご先祖代々僧侶の家系という霊験あらたかな血筋と、あと霊視や算命学などさまざまな占いに精通していたから。
怪しいベールを被ってたり変な匂いのお香を焚いていたり…することは一切なく、ちょっと数珠を多めに付けた綺麗なお姉さまだった。珍しいものといえば、机の上には小さめのクリスタルスカルが置かれていたくらいだろうか。
何を占いましょうかと問われ、私は考えた。
とりあえず気になるのは健康運と、全体的な運勢。あとは守護霊と前世。前半は切羽詰まった悩みだが、後半は完全に興味本位。私は霊能力捜査官の特番とかをワクワクしながら見ることのできるオタクである。
霊視に必要な家族の名前と生年月日を書き、目を閉じて頭を下げる。
Mさんがクリスタルスカルに手を置いて交信準備。占いスタート。
【健康運(霊視)】
とりあえず目下のネックだった健康に関しては「現在は大病をするような感じはない、体の中も左側が若干滞ってる感じだけど悪くはない」とのこと。
昨年秋の人間ドックでは若干不安な点があったので、この結果だけ聞いてじゃあ安心★とはならないが、それでも大丈夫と言ってもらえればちょっとだけ安心できる。
私と夫の霊視で見えた性格はそれぞれ「意志が強くてちょっと頑固(私)」「娘を大事にしていて真面目(夫)」。
えっすごい、あってる。(ちょろい)
【全体運など(算命学)】
もっと詳しく見てみましょうということで次は算命学。
とりあえず私と夫を詳しく見てもらうことに。
算命学が専門用語が難しくて全部は覚えていないのだが、とりあえず私に関しては
・例えるなら大樹、どっしりしっかりしていて様々な生き物が集まってくる包容力があるけど、ぽっきり折れると元に戻らないので気を付けて
・人との付き合いに重きを置くので人と関わる仕事が向いている
・こうと決めると一直線で周りが見えなくなる
旦那に関しては
・例えるなら草花、すぐ萎れるけど水やお日様を当てればすぐに元通り
・仕事は120%完璧にやらないと気が済まない研究者タイプ
・冷静で穏やか、喜怒哀楽を激しく出すことはない
さっきの霊視も含めると、こうと決めると周りも見ず突っ走る私を、淡々とした夫が理知的に止める感じ。
わーあってる。すごい。占いすごい。(ちょろい)
同じく算命学で相性も見てもらったが、私と旦那は真ん中の部分での相性はまぁまぁだが他が相反するところにいて、そんなに相性が最高なわけじゃないけど……まぁほら……付き合いの長さでカバーしてる感じかな……とのこと。ここだけちょっと自信なさげで可愛かった。
この時点で十分楽しかったが、30分経過していたのでじゃあ次は守護霊様を見てみましょうとのことで、Mさんは再びスカルタイムへ。
【守護霊】
守護霊は人によって人数が違ったり、その時々で入れ替わることがあるらしいのだが、リーダー的な存在は変わらないらしい。私にも何人かいるらしいが、今回は真ん中にいるリーダーをフォーカスしてもらった。曰く、
「守護霊様は室町辺りのお坊様で、尼さんと見紛うほど線の細い優美な男性。徳の高い袈裟を着ていて、時の政治家とか地域の有力者と一緒に何か事業をしていたような人ね」
守護霊様はお坊様。
しかも、女性と見紛う優美な男性の。
思わず太字になるくらいには萌えメーターがギュンッと上がったが、ギリギリ顔には出さない。Mさんはなおも続ける。
「お姿同様優しい語り口の方ね、穏やかで落ち着いてらっしゃる感じ」
「あなたにもいつも話しかけてるんだけど、なにかに囚われるとまったく聞いてくれなくなるって心配されてるわ」
「説法を生業にされていたからなのか、大変お話好きで私にいろんなことをお話してくださるんだけど、仏教用語が多くてわからなくて…でもあなたのことをいつも見守ってるって」
優美で女性とも見紛う、穏やかな性格お坊様が。
いつも私を心配していて、優しく見守っている。
え?なに?私の優男好きが霊視で見えちゃった??と不安になるほどのキャラ設て…守護霊様のお姿。動揺が止まらない。まさか自分の守護霊に萌える日が来るとは。
ハッもしや初恋は土井半助、小学校では瀬田宗次郎を友達に普及し、最遊記といえば猪八戒推しだった、筋金入りの優男好きはもしや守護霊様由来…?
ちなみにこの後会った友人にこの話をしたら、「大奥の堺雅人じゃん」とジャストミートの例えを出されて無事2度目の萌死。
――そう、私の後ろには優しい目をした有功様がいらっしゃるのだ。
おかげさまで生きていくのがまた楽しくなった。(ちょろい)
【前世】
続いて前世を見てもらう。
Mさんか言うには「前世は膨大な量のレコードを読み取ることになるから、目印というか、アンカーみたいなのを打ち込んだ方が見えやすいのよね」とのこと。特定の人との関わりを指示してくれれば見やすいとのことなので、今度は娘との関わりのある前世を見て欲しいとお願いすることに。
三度のスカルタイムの後、いくつかのシーンが浮かんできたという。
「特にはっきり見えたのは、中世くらいのヨーロッパで領土争いをしているところの前線。2人とも男性で、あなたが20代後半の指揮官で、娘さんが10代前半くらいの少年兵。同じ部隊の上官と部下の関係性で、娘さんはあなたのお付きみたいな仕事をしてたみたい。娘さんはあなたのことをとても慕っていたし、あなたもとても可愛がっていた」
……………。
(なんというブロマンス………)
思わず太字で無口になるオタク。Mさんは更に続ける。
「この当時の彼らに血縁関係があるかはちょっとわからないけど…現世で親子で生まれるのはすごくすごく関わりが深いってことだから、きっと絆が深かったんでしょうね」
私はすすんでBのLを嗜むタイプのオタクではない。ではない、が、それはそれで嫌いという訳ではない(どっちだ)。そして、ブロマンスの頃はさらなり。
(ここから妄想)
子犬系の少年でも可愛いが、ちょっと気難しくて同年代との友達付き合いが下手な子でもいい。もっと愛想よくすりゃいいのにとか言って小突くとむすっとした顔で「……別に、あいつらと仲良くする必要はありませんから」とか返されたりすると可愛い。まったく、仕方のない奴だなぁとか言って笑うのだろう前世の私は。
しかし日に日に激化する争いの中で、ある日私は敵の弾丸から少年兵を守って致命傷を負ってしまう。冷たい雨の降る中、泥まみれになりながらも懸命に娘は私を運んでくれるが、やがて体力の限界が訪れる。
「……もう、いい。ここで、降ろしてくれ」
「だめです!もう少し、もう少し行けば別動隊の駐屯地が……!」
「この分じゃそこももう壊滅状態だ。……いいんだ、自分のことは、自分が一番わかる。俺はもう……」
「そんなことっ……言わないでください!!俺は、あなたにまだ何の恩も返せていないのに……!!」
「もう、十分返してもらったよ。お前の結婚を世話してやれなかったことが唯一の心残りだ」
「隊長……!!」
「……生きろ、俺の分まで。今はこんなだが、きっと争いも飢えもない時代がいつかやってくる。おまえは、その時代を、どうか笑って生きてくれ」
(妄想終わり)
チクショウ!!!
おまえだったのか!!!!!
現世では絶対幸せにしてやるからな!!!!!!!!
萌えが迸って前述の友人とのラインがしばらく上官と少年兵のブロマンス小話で埋まったことをMさんは知らない。実に申し訳ない限りである。
……途中からちょっと様子がおかしかったが、なにはともあれ私の初めての占い体験はこうして幕を閉じた。
入るまではちょっと勇気がいる占いの世界だが、思ったよりもずっと親しみやすく楽しい体験だったように思う。なんとなくずっと抱えていたモヤモヤや、見えない何かを不安に思う気持ちが軽くなったような気がする。
自分の悩みを話しに行き、全然関係のない第三者に聞いてもらえるというのもよかった。話しているうちに自分でも棚卸しが出来て、ああそうか私はこういう風に考えているんだな、と新鮮に驚いたりもした。
初めての占い師さんがMさんでよかった。
安くはないので頻繁には行けないが、また機会があれば彼女を訪ねたい。
本当にありがとうございました。
今度は誰との前世を見てもらおうかな!!!!