娘とプリキュア
2021年3月末。
私はひとつ心に決めていたことがあった。
それは、「娘とプリキュアの邂逅」である。
早いお友達は2歳の段階から視聴していたが、我が家は見せていなかった。
理由はいくつかあるが、最たるものは「あえてプリキュアを見せなくても好きなものがたくさんあったから」。シルバニアしかり、オクトノーツしかり、あえてプリキュアを通らずとも娘は己の好きなものをきっちり追及していたので、親的にはさらにコンテンツを増やすことはないかなと考えていたのだ。(その他の理由については後述)
しかし、幼稚園に通うことになればプリキュアは避けて通れない道だ。
当時今通っている幼稚園のプレに通っていた時、なんとなしに在園児の七夕の短冊を眺めていたら、女子のおよそ4割が「プリキュアになりたい」、3割が「プリンセスになりたい」だった。なんとも恐ろしい比率である。
これは、確実に幼稚園でプリキュアごっこが行われる。
その時に観ていない娘は仲間に入れないかもしれない。
ただでさえお友達作りに慣れていないのだから、共通の話題となりそうなものは履修しておくべきではないか…??
そんな感じで、私は2021の年明けに「娘にプリキュアを見せねばならない」という天啓を受けたのだ。
ディズニー映画は観てはいた。しかしさすがに2時間集中出来ないので娘の知識は「ラプンツェルとかベルが歌を歌って大冒険するやつ」程度である。ディズニーランド自体も親に素養がないので1度行ったきりで、プリンセスになりたいと言い出したことはなかった。
ではプリキュアはどうだろう?
3歳を超えてからピンクとかキラキラとかそこそこ女児っぽいものが好きになったが、大きい音が出たり怖い怪獣が出てきたりすると嫌がって隠れるビビりさんでもある。プリキュアはキラキラしているが紛うことなきバトルもの。はたして娘にハマるだろうか。
そうこうしている内に、2021年放送開始の新プリキュアのイメージカットが発表された。
タイトルは『トロピカル~ジュ!プリキュア』。
南国とメイクがテーマのプリキュアだった。
キャラクター名・性格・あらすじなどをしばらく読み込んだあと、「これは観るな」と思った。
面白そうとか、キラキラしてて可愛いとか、元気がもらえそうだなとか、人魚のキャラ立ってんなとか、赤い子が嫁だなとか、そういうのをまるっとひとまとめにして、(オタクが)そう直感した。
一応娘にも尋ねた。
「娘、これを一緒に観てみるかい」
すると、娘は即答した。
「みるみるーーーーー!!!!」
そして迎えた初回放映日。
時間ぴったりに待機していた私たちは、2人で手を繋ぎ記念すべき第1歩を踏み出したのだった。
~続~
――そして4ヶ月が経った現在、娘は立派なプリキュアオタクに成長を遂げた。
毎週日曜の8時半にはきっちりテレビの前に陣取り、きらきらした目で待機している。歌う、踊る、名乗り口上のモノマネはもちろん、最近ではトロピカル〜ジュのみんなと一緒に変身したくて自分の持ってる変身グッズとアニメの音が揃わないと泣きだす迷惑オタと化している。
更には観てないくせに前作『ヒーリングっど♡プリキュア』の映画にも行きたいと言い、そこで出てきた『Yes!プリキュア5』に興味を持ち、CSとアマプラで視聴可能なオールスターの映画を何本も観て今では歴代プリキュアの名前が全部言えるようになり、OP曲とED曲もほぼ網羅した。
その愛の勢いにおののくばかりだが、好きなものへ情熱を燃やす幼児の姿は愛しい。私もそれに追随してせっせと開拓を続けている。パズルが苦手だった娘はプリキュアの45ピースのパズルを1人で完成させられるくらいになったし、シャンプーをプリキュアにしたら喜んで自分で洗うようになった。プリキュア様々である。
ということで親子そろってすっかり沼ハマなのだが、元気に足を踏み入れてからここが想像以上に恐ろしい場所だと言うことに気づいた。
だってとにかく
歴史が長い(映画含め膨大な話数がある)。
オンエア中でバンバン玩具のCMを流される(購買意欲を激烈に煽られる)。
スーパーにもドラストにもプリキュアがいる(衣食住揃えることが可能)。
シルバニアも結構な沼だったが、あれはあくまで玩具がメインだし買える場所が限られていた。
オクトノーツに関してはほとんどグッズは流通しておらず、輸入物はさすがに手が出しづらかった。
こんなに巨大なマーケットを持つコンテンツにハマったのは初めてで、娘の物欲も底なしになりつつあるし私の財布の紐も緩みっぱなしになってしまったわけだ。
そんなこんなで、気が付けば我が家にはプリキュアが溢れている。
歯ブラシもヘアゴムもお弁当グッズもパンツもパジャマもサンダルもプリキュア。一応せめてもの抵抗でTシャツやなりきり衣装は買っていないが、なんぼのもんじゃいである。
……これが、冒頭で述べた今までプリキュアを見せなかった理由のもうひとつ。こうなることがなんとなく予想出来たからだ。
セーラームーン世代ど真ん中の私が、プリキュアを好きにならないわけがない。
そして案の定まんまと好きになってしまった辺り、私の危機管理能力も大したものだ。
戦う女の子のかっこよさとか、信念とか、仲間との絆とか、夢を見ることの大切さとか、諦めない気持ちとか、これからを生きていく上で大事な指針となるアレコレ。
私はそれをセーラームーンから学んだし、きっと娘はそれをプリキュアから学ぶだろう。
娘がどんな女の子になっていくかプリキュアのおかげで更に楽しみになった。
もしかしたら、元女の子現母親の楽しみ方の神髄はそこにあるのかもしれない。
……余談だが、年少さんの今年の七夕の短冊を見てみたら、「プリキュアになりたい」は1割程度だった。
そして肝心要の娘の願い事はといえば。
「オクトノーツになりたい」
アアアアア~~~~~~そっかそっちか~~~~~~~~~~~~