災害時における被災支援に関する協定
令和5年4月13日に八幡浜市役所、八幡浜市社会福祉協議会、八幡浜青年会議所(八幡浜JC)の三者による「災害時における被災支援に関する協定」が締結されました。
今回は、三者協定の締結までの経緯を含め協定の内容を知ることで、それぞれの団体や個人がどんな点で協力でき、どんなアプローチをしたら八幡浜市全体の防災力が上がるかを考え、話し合う機会となりました。
◆初めに八幡浜市役所から、三者協定締結の目的と支援内容について説明がありました。
八幡浜市役所
この協定の目的は、大規模な自然災害発生時に三者が相互に協力し、災害ボランティア活動等による被災地の支援活動を効率的かつ円滑に行うことです。
被害の状況、情報は市や社協(災害ボランティアセンター)に集まるので、そこから青年会議所へ支援・協力を求めていく形になります。
支援の内容としては、災害ボランティアセンターに対する人的支援、災害ボランティア活動のための資機材の調達、仕分け及び輸送、専門的な人を活用した支援活動です。
費用は三者が協議して負担することとしており、支援を受けた地域や住民が費用を負担するものではありません。
平時から顔の見える関係を作り、いざというときには円滑に活動できるようにすることが大切です。
三者協定の動きとは異なりますが、市では地域の方の協力を得ながら避難時に支援が必要な方の名簿を作成しており、名簿の提供に関する協定により社会福祉協議会等へ提供しています。
今回の協定は、とりあえず復旧の場面を想定して仕組みを作った段階。
そのためにお互いで必要な情報を共有し合い、普段から情報交換しながら顔の見える関係を作っていく必要があります。
八幡浜市ではこのような想定を使った活動(災害)は今のところ起きていません。
しかし今後、大規模な土砂災害(水害)や南海トラフ巨大地震等が想定されるため、そのときのために備えたものです。
宇和島市でもすでに協定締結されています。
どのような経緯で協定締結に至ったのでしょうか?
宇和島市社協
平成30年の西日本豪雨災害の際、宇和島市社会福祉協議会で災害ボランティアセンターを立ち上げました。
その後、被災状況と災害ボランティアセンターの運営面に関して継承会議を開催し、活動報告書で中身を検証しました。
その中で課題・改善事項として、各団体と連携と役割分担が必要ではなかったか、初動期における十分な資材確保がボランティアの活動に影響があるという話が出てきました。
令和2年度から課題解決に向けて動き始め、JCなど11の団体に集まっていただいき、平時から災害ボランティア連絡会を開催。
翌年の令和3年度から、連絡会の協定書の必要性を問題提起し、11月に協定締結に至りました。
協定後の活動は何かありますか?
宇和島市社協
令和2年の8月に新潟県で豪雨災害が発生しました。
西日本豪雨災害のときに新潟県から支援物資をいただきお世話になったので、何かお役に立てることができないか?とJCから連絡がありました。
土嚢袋が不足していると聞いたので、社協がもっていたものとJCが会員から集めたものを合わせて2千枚を送りました。
災害が起こった時の役割について、それぞれどのように考えていますか?
八幡浜市社協
災害ボランティアセンターの立ち上げです。
まずはニーズをキャッチしていくことから。お困りごとに手当をするためにボランティアを募集、調整を行います。
平成30年の災害のときはかなりの被災がありましたが、行政と協議し、当時はまだ災害救助法の適応が不透明だったので、通常のボランティアセンターとしての活動は行いました。活動の規模としては周辺の被災地域と比較して小さかったです。
八幡浜青年会議所
市役所や社協は総合的に管理する場所。
災害ボランティアセンターに集まる依頼や要望をまとめていただいたものを、青年会議所では現場で解決に向かっていくように、人的支援をしながら管理していきます。
西日本豪雨のときには大洲市と野村町にボランティアスタッフとして行きました。
通信機器や印刷機器がすべて使用不能になってしまっていたので最初にそれらを搬入し、その後ショベル50台を持って行きました。
現地に身一つで来ていたボランティアの人たちに、水やタオルなどの物資も支援しました。
八幡浜市役所
被害状況や情報はまず市の方に報告があります。
それを正確に管理し、広い意味で全体を把握しておくこと。そういった被害に基づいて市の方から社協に災害ボランティアセンターの立ち上げの依頼をしていきます。
今回の協定とは別に、市と社協との間で災害ボランティアセンター設立・運営に関する協定を結んだので、その協定に基づいて設立を依頼します。
八幡浜青年会議所
八幡浜市だけでなく世界規模で会員がいるので、横のつながり、ネットワームも生かせるし、メンバーのかなりの方が経営者なので(決定権のある人が多い)従業員や他の業者さんとのつながりも生かせます。
八幡浜市社協
平成30年の災害時にもJCのメンバーに災害ボランティアとして被災地に入っていただきました。
そのときは個人のつながりから始まりましたが、組織の中で連携を取って被災地に入っていただいたという経緯があります。
個人のつながりから協定という形で組織同士のつながりが見える形になったというのが大きいと思います。
社協も全国にあるので、災害が起こった際にはお互いに支え合い、実際に現地に派遣されることもあります。
平成30年の災害時、八幡浜市の支援が終結した後に他市の支援に行ったとき、ニーズ調査に加わりましたが、現地のことがわかりませんでした。
他所から来たものには普段の暮らしが見えないので、そこに住む人が一緒に関わってくださると心強い。
町の普段のことがわかっているからこそ、被災時にどう支え合っていくのかということにすばやくつながっていくので、市とJCとつながったことは大きいと思います。
◆続いて参加者に、今後この協定をどのように活用したいか、意見や感想を話していただきました。
八幡浜市消防団団長
災害時に警察、消防署、消防団が災害現場の最前線で活動していたなかで、ボランティアさんが動いてくれるが素人なので危ない場面も多かったです。
どんな人が何人来ているのかという情報も全く入ってきませんでした。
災害対策本部の方にも情報を入れていただくようにしてほしいです。
災害ボランティアセンターとボランティアの協力は大事なので、ネットワーク、情報共有が一番大事だと思います。
八幡浜市役所
市と社協との間に災害ボランティアセンター設立・運営に関する協定を結びました。
今後は、市の災害対策本部と災害ボランティアセンターとの間で情報共有を密に行って、どういう人が支援に行くかという情報を現場の方まで落とし込んでいけるようにしたい。
八幡浜市社協
平成30年の災害のときは、大きな災害でボランティアを募集して派遣する経験は初めてでした。
いろんな方と連携しながらやってきましたが、終わってみれば不十分なこともたくさんありました。
実際に現地へ行ってみると、いろんな方がボランティアに入っているなかで、どのように動くのかということが、正直その場で知るという形になってしまっていたので、協定に基づきながら随時連絡・連携をしていくことが大事だと思います。
八幡浜市自主防災組織
西日本豪雨災害の際には、消防署員と消防団には避難所に高齢者など避難する人を連れてきていただいたり大変お世話になりました。
JCさんには人のつながりや活動の場をライオンズクラブなど、さらに広げていただきたい。
八幡浜市の会社
私自身がボランティア経験がないので、そういった場面になったときどのように動けばいいのか知識が不足しています。
物資の支援をはじめ、できることはしっかり支援したいので、何かあったときには連絡してほしい。普段からの連携が大切と考えています。
八幡浜市女性消防団
平成30年の災害時、野村と大洲の作業に関わりましたが、野村のボランティアセンターの方々の活動内容が濃かったです。
体の疲労の軽減対策を図っていたり、説明と作業の振り分けをし、どの家のどんな作業をするか細かいところまで指示していました。
ボランティア保険の加入や、終わってからはスイカとかき氷の接待もありました。
送迎についてもどのバスに乗るかなど、すべて細かいところまで段取り良くされていて、作業がとてもスムーズに進みました。
人材のリストや、どういう機材があるのか、どういうことができるのかということまで細かく出していただけたら作業を頼むときも頼みやすいと思います。
ボランティアが身一つで行けば、自分の動き方がその場でわかる環境づくりが大事ですね。
(※ただし、ボランティア自身も事前に現地の災害ボランティアセンターの募集状況や持参物等の情報収集や、ボランティア活動保険の地元加入が必要です)
八幡浜市社協
ボランティアに来ていただいた方と困っている住民をつなぐことを丁寧にしなければいけないし、7月豪雨のときは暑い時期だったので、暑さ対策も含めてしっかり取り組まなければいけないなと感じました。
野村や大洲等も、運営する中で随時改善を図っていったのだと思います。
そういった心遣いもしながら災害ボランティアセンターを実施することでみんなが安心して復旧に向かえることが大切です。
災害ボランティアに入るときのマナーやルールをどう身に付けていくかが課題です。
宇和島市社協
平時から一般住民、団体と一緒に災害ボランティア養成講座を開催しています。
災害ボランティアといえば、泥出しや力仕事のイメージがありますが、それだけではなくていろんなお手伝いができるということを知ってもらうために、今年度はみんなで炊き出しを作って、仮設で作った避難所へ持って行ってそこでお困りごとを聞く体験をしました。
社協の職員が災害ボランティアをすべてやるというのは無理なので、JCさんなど各団体の方々にご協力いただきながらセンターを運営して、なおかつ社協職員は地域に寄り添いながら被災された方々のお困りごとを聞くことをしていかなければいけないと思います。
八幡浜市女性消防団
災害ボランティアに参加するとき、一生懸命やろうと思って参加するが活動が空回りしないようにしたいです。
活動したいという思いと助けてほしいという支援される方との行き違いがないように。
一般の方、被害が少なかった方は、何かしたいという気持ちがあるので、支援物資の募集に参加したいと思う方がたくさんいます。
一般市民から支援物資を募るときには日にちを設けるとか、品物を限定するなどの情報共有、支援を呼びかける方も参加する方もわかるようなことができればいいと思います。
何を助けたらいいのかが明確にわからないと難しい。
大災害の場合は社協でも把握するのは難しい。そこは地域のネットワークの中で把握していくことが多い。
宇和島市の場合は、エリア別に派遣してそのエリアの方に差配してもらうようなボランティアの派遣の仕方をしたし、野村の場合はエリアが狭かったので、そのあたりが明確にわかっていて、この場所にはこの人、ということができていました。
被災者が支援者に加わるというケースも見られました。
地域のなかで情報共有をしていく。自主防災の方や公民館の活動など地域のコミュニティの中ではっきりさせることができたらいいですね。
宇和島市役所市民課
宇和島市では、NPOや行政・社協等の支援団体同士が連携し情報を共有する場として牛鬼会議が誕生しました。
会議の中で支援制度が行き届いていなかったことを教えていただき、社協に委託して立ち上がった地域支え合いセンターの方に支援に動いていただきました。
支援ニーズの共有については、例えば「○△さんの家の中に土砂が入っており、○○地区では土砂撤去のニーズがある」といった、ある程度正確な情報でないと支援にはつながりにくい、ということも会議参加者の議論の中で確認できたことの一つです。
個人情報の問題もありますが、できるだけ正確な情報をあげ、支援者間で情報を共有していくことが大切だと思います。
宇和島市のように情報を共有できる組織・場ができると、復旧だけではなく今度は復興にむけて、例えば「罹災証明の申請をしましたか?」など、次につながる支援の情報が共有できていき、より効果的な復興につながっていくことができます。
最後に、今後の抱負をお願いします。
八幡浜市役所
まずは自分の命を守ることが重要です。
行政、社協、JCだけでは被災者の支援はできないと思っているので、いろいろな方、市民の方に協力していただきたいと考えています。
大規模な災害が起きたときには、この協定を足掛かりに市全体で取り組んでいきたいです。
八幡浜青年会議所
協定を皮切りにJCが矢面に立って動いていくことが大事。
他団体や団体に所属していない若い人たちが、ボランティアをしやすい環境づくりができれば。
課題としてはJCは40歳までなので、「何ができるのか」といった情報をリストアップしたり、具体的にどこまでできるのかを平時から具体化していくことが大事だと思っています。
八幡浜市社協
災害ボランティアセンターだけではできかねるので、いろんな方に助けていただきながらの運営になるかと思います。
情報をどう届けるか、キャッチするかが大事。
しっかりした支援につなげていくためには、三者での情報の共有が大切。
三者協定というものを社協の中でどうとらえていくかを内部でもしっかり議論・共有していきたいです。
今回は、協定の存在を含めてみんなで共有することができました。
協定締結が目的ではなくて手段として今後どう生していくかが大切。
災害対策本部、災害ボランティアセンターなど関係団体を含めた多様な人たちとの情報共有、どう実現していくのか、仕組み作りを考えていかなければいけないと思います。
トロール会議がめざしているのは、市と社協、NPO、企業の四者連携で活動を進めること。
今回の協定を軸にこの活動がよりスムーズに進んでいくと思います。