タイトル

otava 2 Merak -メラク- 北極星の水鏡

2

魔法

こどものわたしは 眠れずにいる夜
柔らかなベッドの上で寝返りを打つしかなかった
窓のなかも 窓の外も ただただ真っ暗で何も見えない
はやく大人になりたいと願った

「小さな泉の加護を受けて 大人になったつもりなら
 大きな間違いをしているよ
 湖へ出て導きを受けるがいい」

とても大きな湖だった
岩陰の向こうに見える岸辺は はるか彼方に思われた
夜空に北極星を見つけると 湖は鏡になってその輝きを映し出す
わたしはボートのへりをつかんで そっと水鏡を覗き込んだ

水面は空よりもずっと近くで
星さえも手の届くところに浮かんでいる
美しくゆれる北極星は わたしの心をとりこにした
星は矢尻のようにするどくなって 対岸を指し示す

そこに何があるのだろう 分からない
けれど 行かなければならない
大人になればどこまでも歩いて行ける
強い想いがわたしの心に根を下ろした

呪い

大人の魔法を欲するものは 大事なものを必ず失う
魔法と呪いは裏表 魔女が呪いをかけるのではない

少女は少しだけ大人びて 魔女を驚かせた
少女は少女の 魔女は魔女の時間を生きている

「次の魔法は? どうすればいいの」

けれどやはり少女はこどもらしく気ぜわしい
しかたないと 少女をなだめ とある湖の話をした

不思議な形をした岩場がいくつも湖に浮いている
少女はボートに乗りゆられ 魔女はブランコに腰かけた

魔法の瞬間 すべてのものが静止して 湖面は鏡そのものだった
北極星の輝きは 少女の意志の現れであり 自立の証明

少女は意志のこもった瞳で 遠方を見つめ何かを想う
強い心を得た者は 時に涙を失ってしまう

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