【出血・穿刺部トラブルだけじゃない】VA-ECMO(PCPS)の合併症まとめ【異物反応がポイント】
VA-ECMO(PCPS)といえば,究極の循環補助であり,命を”つなぐ”.デバイスとしては,経カテーテル的に挿入できるもので最も強力です.
でも
「そんなに有用なら,どんどん入れればいいじゃない」
とは,思いませんよね?
これはなぜか.
相応の合併症があるからです.
すぐに頭に浮かぶのは穿刺部トラブル.要は出血です.
もちろん,ECMO管理下の出血は命に関わりますが,ECMOの合併所は出血だけではありません.
今回は,そんなECMOの合併症のまとめを,循環器内科医の私が解説していきます.
■複雑に絡み合う合併症
ECMOには様々な合併症があります.
カニューレションに伴う出血や感染は,(ECMOに限らず)カテーテル手技につきものですが,ECMOのカニューレは,とりわけ太いことから,出血や下肢虚血などの合併症頻度が高いことが特徴です.
また,ECMO特有の合併症の多くは,異物反応を中心に起こっていきます.
この異物反応は,人工肺と血液の接触で最も起こるので,ECMOとは切っても切り離せない大きな弱点です.
以下に,私がまとめた,ECMOの合併症同士の相関と,簡単な対応です.
1.出血
30-50%の確率で発生するとされる,ECMO最大の合併症です.
その3割以上は,手術部位やカニュレーション部位からの出血です.
ECMO回路という異物が血液に長時間接触することによる異物反応が,凝固因子や血小板を消耗することが大きな誘因です.
貧血や循環血液量の減少は,循環不全を悪化させるので,最も注意しておくべき合併症です.
2.血栓
"出血が多い"という話から一転,血栓もECMOの代表的な合併症です.
血液透析と同じように,抗凝固をしないと回路内に血栓ができます.
持続でヘパリンを投与し,ACTやAPTTで管理します.
効きすぎても出血するので,バランスを取りながらの管理が求められます.
3.感染
カテーテルのような人工物を留置する場合に共通する合併症です.
人工物感染の治療の第一選択肢は,ぞの人工物の抜去ですが,ECMO症例では,生命維持がECMOに依存している場合が多く,容易に抜去することがかなわないこともしばしばです.
起きてしまうと非常に面倒な合併症ですね.
4.溶血による急性腎障害
回路との異物反応では溶血も起こります.
溶血で生じた遊離ヘモグロビンは,腎臓で尿細管障害を起こし,急性腎障害を起こすことが,臨床的に問題となります.
ハプトグロビンを投与することで,一時的に改善することはありますが,溶血尿が持続する場合は,腎機能の推移や尿量に注意です.
5.浮腫
異物反応は炎症性サイトカインの分泌も促します.
この炎症性サイトカインが血管透過性を亢進させ,浮腫や循環血症量減少を引き起こす.
6.下肢虚血
ECMOのカニューレは非常に太いので,挿入側の大腿動脈を塞いでしまい,下肢末梢の阻血を生むことがあります.
下肢の指先の色などには毎日注意しておきましょう.
7.肺水腫
左室後負荷による合併症.
肺水腫がコントロールできないと,ECMOの離脱が困難になります.
この対策として,心負荷軽減の目的で大動脈バルーンパンピングの併用が一般的ですし,必要に応じて強心剤を併用することも多いです.
最近ではインペラという新しい循環補助デバイスを併用することもあります.
まとめ
以上,ECMOの合併症まとめでした.
ECMOが留置されているような症例,きっと厳しい状況にあるかと思います.
必死に診療にあたっている最中,合併症1つで足元をすくわれたくないと思いますので,しっかりとした合併症管理の知識を身につけていきましょう.
☟原理含め,もう少し詳しくECMO/PCPSのことを解説した記事
☟そもそもIABPとの違いがようわからん人のための記事